System:直截簡明に言おう。現場の講師は使い捨てである。
以前、スタディサプリ英語講師の関正生先生が
YouTubeのとある動画でこう話していた。
『産業革命の如く365日働かさせられて、月給21万5千円』
新米塾講師だった頃の苦労話として笑い飛ばしていたが、
塾業界というものはこうも変わらないのだなあということを改めて知ったものだ。
他ならぬ私自身も同じだったからだ。
いかに求人募集に「完全週休2日制」だの
「年間休日○日以上」だの書いていても、
それらは全て建前であり実際にはウソである。
なぜなら休日に持ち帰らなければ終わらないほどの質量の仕事を任せられ、
休日なんてものはそれらに追われて全て潰れるからである。
私自身も
「受験シーズンになったら休日はないと思ってね」
と面と向かって言われた経験がある。
そしてこれは現役の講師・講師経験者であれば全員首肯すると思うが、
出勤している時に自分の作業をしている暇はあまりない。
授業はあるし、雑用はあるし、電話は鳴るし、生徒や親御さん・新規の対応もあるし…と
あれよあれよと時間が吸い取られて気が付いたら深夜だ。
さらに、これは私自身がひしひしと感じてきていて
かつ業界外からすれば異常ともいえる考えだと思うのだが、
「出勤時間内で仕事を終わらせられない人は無能」という風潮がある。
「無能」の自己責任になってしまうのだ。
「残業はどうしても必要ならやってもらって。でもそんなにないでしょ?」
とまで言ってしまう経営者もいるぐらいだ。
よほどコンプライアンスをしっかりやっている大手は別として、
残業代も雀の涙程度のみなし残業で済まされてしまっている。
それでいて安月給な業界なのは求人サイトを一瞥すれば一瞬で分かる。
以上述べてきたことを総合して率直に申し上げると、
より大量かつ責任のある労働を、コンビニのバイトに毛が生えた程度の給料で任されるのが塾講師だ。
これで定着率が高くなる訳がない。
現に、年度替わりなどのタイミングで
塾内の講師がガラッと入れ替わることも珍しくない。
ただ、いわゆる「ブラック企業」と塾業界が少し違うのは
そんな業界でも毎年コンスタントに新しく入ってくる人間がいることだ。
これはなぜか。
極端な話、義務教育の小学校・中学校と同じである。
なくならない仕事の一つなのだ。
もし明日に突然この世から学習塾がゼロになったら、大変なことになる。
都内の名門私立中高一貫校レベルならともかく、
普通の公立の小学校・中学校において
「塾なんかなくても自分でしっかり勉強できて自己管理ができる子」
という子などほとんどいない。
そういう子の管理者として必要なのが学習塾なのだ。
もちろん他業界同様潰れてしまう塾も毎年あるが、
明日突然全ての塾がなくなるようなことは絶対にない。
日本人は就職先に
「勤務先がなくならないこと」「安定していること」
を求める割合が高いから、
そういう意味なら学習塾は一つの選択肢に入るのだ。
こうして
新しい人は次々に入ってくるから、どんどん使い倒して回せばいい(辞められても次がいるし)
というシステムが出来上がるのだ。
これを使い捨てと呼ばずに何と呼ぶのだろうか。
「いいえ!ウチの塾は違います」
という塾も個別であれば存在しているかもしれないが、
割合で見ればこんな塾の方が圧倒的に多い。
某大手学習塾の教室長が私にこっそりささやいてくれた言葉を
私は一生忘れることはないだろう。
『講師なんてどうせ入れ替わるし。来る者拒まず、去る者追わずだから。あっはっは…』
もしあなたが学習塾を利用する側なら覚えていただきたいのは、
以上の事情により学習塾は
来週になったら突然違う講師が担当になることが割とよくある。
それが絶対に嫌だ、というのなら専属の家庭教師を年契約で雇うしかない。
…筆者、透佳(スミカ)