System:合格実績を信用するな。いくらでも化粧できるから。
某大手学習塾が合格実績の水増しでニュースになったことは記憶に新しい。
あの一連のニュースを追っていくと、要は
正規の受講生以外を「ウチが育てた」とカウントしてしまったのが問題である。
自分の塾で最低でも1年間は受講した生徒なら、
「ウチが育てた生徒です」と言って合格実績に加える資格はあるだろう。
だが、例えば先述の講習「だけ」を受けた生徒(いわゆる講習生)や
欠席がちな生徒・退会してしまった生徒は本来カウントに入れてはいけない。
「1ヶ月私が教えたので合格しました」と言えるほど受験は甘くないからだ。
(一回教えるだけで人生を変えるような全国トップ講師レベルなら別として)
挙句の果てには一流どころに合格確実の生徒に
「名前だけでもいいから」「お金はとらない」と声をかけて、
「特待生」という便利な枠で合格者数としてカウントしては断じていけない。
それはもはや一切教えていない。
もちろん、本当のことは現場に携わっていた人でなければ絶対に分からないが
あくまでも外から冷静に分析するとこのようなことが起きていたであろう。
どうして私がここまで言えるかというと、
某塾に限らず多かれ少なかれどの塾も同じことをやっているからだ。
あの一件で意見を提出した側も、
ではこれまでその類のことを一度も誓ってやっていないかと問われればそれは怪しい。
つまりこれは一つの塾の問題ではなく、業界全体の問題なのだ。
私が直接知っている例をザッと挙げると、
- 今年度の塾案内のパンフレットに、振るわなかった昨年度の実績ではなくそれ以前の実績を載せる
- その塾のブランド全体としての合格実績は分かるが、一教室ごとの合格実績はどこにも載せない
- 過去数年、長いと過去10年以上の合格実績をまとめて「一つの合格実績」として掲載する
念の為断っておくが、これらは別に機密情報ではない。
顧客側からいつでも自由にアクセスできる情報である。
これをより一般のビジネスとして言い換えると、
- 商品を売り込む際の「実績」が最新版ではない、昨年度は振るわなかったことも隠す
- 人気ブランドランキングは分かるが、そのブランド内での人気商品ランキングが不明
- 「最新のデータ」「直近のデータ」がなぜかどこを探しても出てこない
塾業界の外から見れば、
これらが中々異常であることはご理解いただけるだろう。
より厳密に言えば、振るわなかったことは一番の問題ではない。
顧客側とすれば
「昨年度はこういう事情があって売上が下がりました」
と前もって素直に申告してもらえればそれで終わる。
それをセコく隠そうとして、かつそれがバレないと思っているのが問題なのだ。
共通のルールがないのをいいことに、
(厳密に言えば存在はするのだが遵守は義務ではないから、
それぞれの塾がバラバラな基準を設定しているのが現状である)
自分たちの都合の良いように自由に化粧することが可能になってしまっているのが
現状のあの「合格実績」という数字なのだ。
だからこそ、声を大にしてあなたにお伝えしたいのは
合格実績を全く信じるなとは言わないが、あくまでも話半分程度に留めよう。
流石に東大排出歴代ゼロの塾が「東大毎年合格!」とホラを吹くことはない。
「東大合格!」と宣伝する塾は、実績はともかくとして
「たしかにこれなら東大に合格するな」という強み・アピールポイントがある。
だから合格実績は一見の価値こそあるが、過信してはいけないということだ。
それともう一つ、これは必須ではなく「できれば気にした方が良い」という程度だが
この塾は名門に強いのか、中堅どころに強いのか、堅実校に強いのかはよく見ておくべきだ。
率直に申し上げると、
現時点で出来の悪い子を名門向けの塾に入れてはいけないし
現時点で出来の相当良い子を堅実校向けの塾に入れてはいけない。
それぞれ役割が全く違うからだ。
それを見分ける指標としては、合格実績も悪くない。
…筆者、透佳(スミカ)