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祖母の目

八十歳をすぎてから、祖母の目は不思議な色で光るようになった。黒目が青みがかった灰色に変わり、やけに光を反射した。白内障の手術をして良くなったと聞いていたけれど、もしかしたらほとんど見えていなかったのかもしれない。その目は、目の前の私を通り越してその先へと向かっていた。

最後に会ったのは、祖母が金沢市内の病院に入院しているときだった。容態に不安があったわけではなかったけれど、なんとなく会いたくなって羽田から飛行機に乗った。

病院の談話室で少しだけ話をして、帰りに普通のお菓子をたくさんもらった。ポッキー、コメッコ、ハイチュウ、コアラのマーチ、ルックチョコレート。

あれから十年経って、私は立派な大人のような顔で暮らしているけれど、本当は心細くて、よく足がすくむ。そういうとき、私は祖母を思い出して自分の後ろを振り返る。

祖母が何を見ていたのかはわからない。でも、その目はとても美しくて、ひたすら優しかった。

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すみぐる
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました! そこにある光と、そこにある影が、ただそのままに書けていますように。