「朝っぽくキレイ」はゲーテの造語|「わらべはみたり」を現代語訳してみた
言語ビッグバン講座のフォーラムへ投稿した「野ばら」のAI翻訳の話題。
・・・の続き。
痛みと悲しみを感じたのは若者ではなく小さなバラ。
といういちばん大きいと思える誤訳箇所を修正しました。
他に気になる誤訳箇所も見ていきたいと思います。
第1スタンザの2行目 War so jung und morgenscön
直訳は、とても若くて朝(のように)美しかった
Papago訳、とても幼かったし、明日も美しかった
DeepL訳、若くて朝がきれいだった
名詞の Morgen には「朝」と「明日」の2つの意味がありますが、morgenschön はゲーテの造語で英訳すれば morning-beautiful または morning-pretty で、「朝っぽくキレイ」
AI翻訳は、こういう造語には太刀打ちできないみたいです。
近藤朔風は、「清らに咲ける その色愛(め)でつ」としています。
「小さなバラ」のみずみずしい若さと朝の光りの明るさやこれからしだいに温かくなる期待感に満ちた美しさを表現したゲーテの造語の意味をしっかり読み取っていることがわかります。
「おっ 野ばら! めっちゃカワイイし朝っぽくキレイだぜ〜」
AI翻訳は造語の意図がわからず、「明日も美しい」だの「朝がきれい」だのと誤訳してしまう。でも、人間は「清らに咲ける」と意訳できる。
文語で書かれた近藤朔風の歌詞を1番から3番まですべて引用し、私の現代語訳を付ける。意味がわかりやすいよう意訳をしたが、内容理解のための現代語訳なのでメロディーには合わせていない。このままで歌える歌詞ではない。
*ゲーテの詩の翻訳ではなく、近藤朔風の文語の現代語訳である。
1
童はみたり 野なかの薔薇
その子は見ていた 野原の中のバラを
清らに咲ける その色 愛でつ
清らかに咲いている その色を 素敵だなあと思いながら
飽かず眺む
飽きずにじっと眺めている
紅におう 野なかの薔薇
その紅い色さえ匂い立つように美しい 野原の中のバラ
2
手折りて往かん 野なかの薔薇
ポキリと折って摘んでいきたいと思う 野原の中のバラよ
手折らば手折れ 思い出ぐさに
わたしを摘むというなら摘みなさい この出来事を思い出にするために
君を刺さん
あなたを刺しましょう
紅におう 野なかの薔薇
その紅い色さえ匂い立つように美しい 野原の中のバラ
3
童は折りぬ 野なかの薔薇
その子は折った 野原の中のバラを
折られてあわれ 清らな色香
折られてかわいそう 清らかな色と香り
永久に褪せぬ
いつまでもあせないだろう ふたりの思い出の中では
紅におう 野なかの薔薇
その紅い色さえ匂い立つように美しい 野原の中のバラ
初夏の光にきらきらと朝露をしたたらせて咲く一輪のみずみずしい野ばらを見つけた。可愛いなあ、きれいだなあ、とじっと眺めていると欲しくてたまらなくなった。
「君を摘んでいきたい。ポキリと折って、僕のモノにしたい」
「私が欲しいのね。欲しいならあげるわ。でも、トゲで刺すわよ」
ポキッ
あっ
・・・ 紅 におう 野なかの 薔薇
*記事中に引用した DeepL の翻訳は 2021年8月当時のものです。DeepL は日々進化中のため、現在は引用とは異なる訳が表示される場合もあります。
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