愛されていると実感することの効果。教員最後の年。
「先生〜それ何?」
「あぁ、これか。」
「これは、先生がみんなをほめたとき右から左に付け替えるねん。」
ある時の私は
指にいろんな色の輪ゴムを巻きつけていた。
子どもを褒めるとその中の一つを左に付け替えることができる。
褒めることを意識するためのツールで
自分が忘れないように
目立つ位置に
目立つ色をつけていた。
子どもにも聞かれるとさらに意識化できると思った。
それだけやらないと
褒めることは意識してできるものじゃなかった。
そして
それだけやっても忘れてしまうほどに
日々、やらなくてはならないことに流されてしまっていた。
だけどある時を境に
何にもなくても
子どもたちに毎日のように
あたたかい言葉をかけることができるようになった。
それが
私は自分自身が愛されていると実感することの効果だった。
私のクラスには
授業中じっと座っていられない。
掃除ができない。
当番はサボる。
上靴は履かない。
とにかく自分の話を聞いて欲しい。
ADHD傾向だと病院では言われていた子がいました。
休み時間には、毎回誰かとトラブルを起こして帰ってきます。
自分のクラスの子ならまだしも
他学年となると話し合いをさせるのに
相手のクラスの先生と調整しなくてはならないので大変でした。
彼が落ち着いて学校生活を送れるように
色々考えました。
出来事を客観視できるように
起こったことは全部聞いて
ホワイトボードに書き起こし
トラブル解決をしました。
課題がたくさんあったので
彼専用の目標達成ビンゴカードを作って
毎日帰る前に振り合えりをしました。
お母さんとはよく連絡をとって
良好な関係を保つようにしました。
困った時には、外部の先生に相談したり
毎日振り返りを書いて
自分の実践をよりよくするようにしていました。
だけど
頑張っても頑張っても
彼はまた問題を起こしました。
もう気力が尽きそうだった。
でも
ある時から
彼が変わり始めたのです。
それは
私、愛されてるよねと実感できるようになった頃から。
私は毎日のように彼に素敵な言葉をかけられるようになりました。
「おはよう!今日もかっこいいやん〜!」
「え?そんなことも知ってるん?すごいやん〜!」
「さすが天才児は違うなぁ〜!」
心がホカホカしていると
自然と言葉が出てくるのです。
褒める言葉や温かい言葉をかけるコツは
指をぐるぐるまきにすることじゃなかった!!
と後から気づきました。笑
それからどんどん私の仕事は楽になっていきました。
トラブルがグーーーんと減ったからです。
他の子どもたちも安定してきて
毎日トラブル対応に追われていた休み時間は
子どもたちと鬼ごっこをする日々に変わりました。
そうすると退勤時間も日に日に早くなり
保育園に延長保育を頼む日も減っていきました。
不登校の子の対応で
私には空き時間があまりありませんでしたが
それでも不登校の彼と過ごす時間は
とても幸せだと感じていました。
これから先
もしかしたら
大変だと思う年はもう来ないかもしれないな
そんなことさえ思えました。
だけど
その年を
私は
教員最後の年にしたのです。