ビバラバ感想〜サンリオが世界を変える〜
オンライン演劇ZA とサンリオピューロランドによるコラボ演劇“VIVA LA VALENTINE"を観劇した。
あまりにも良かったので是非ともバレンタイン当日に感想を綴っておきたくてnoteを始めた次第だ。ネタバレはもちろん含みながら、語っていきたいと思う。
•サンリオキャラクターズボートライド映像から始まる
ピューロランド参戦経験のある方なら見たことがあると思われるサンリオキャラクターズボートライドに乗っている視点の映像が、会場後開演までの30分間流れる。まだ本編が始まってすらいないのに、否が応でもピューロランドへの思慕がつのる。本編を見たらいますぐ東京行きの新幹線に乗ってしまうかもしれない。余談だが、ハーモニーランドのボートライドは山の急斜面を下った先にあり、パークのメインエリアからは外れておりとても遠い。具体的にいうとハーモニートレインという列車で片道15分かかるくらい遠い。そこを計算に入れていなかったくせにボートライドに何がなんでも乗りたがった結果、私は閉園前のパレードパラレルの指定席券の入場時間にちょっと遅刻した。(事前に係のお兄さんに、ボートライド行きたいんですけど行けますか?と聞いたら、「少し遅刻になりますが大丈夫です!行ってきてください!」とハーモニートレインの駅まで走って送ってくれた。これでこそキティさんの国、素晴らしいホスピタリティー!) ボートライドがあれだけパーク内を巡っても視界に入らなかった時点で気づけばよかったんや。ハーモニーランドの広さなめてた。
•ダニエルさんの演技力が凄い。
このショーはキティの愛すべきボーイフレンド、ダニエルさんの出番が多い。ダニエルさんは口もないし基本無表情なのだが、体や手の動きで微妙な感情の変化、ナイーブ男子の葛藤を見事に表現している。ダニエル役者(ダニエルの中の人)にMVPとして拍手を贈りたい。ちなみに今回のダニエルさんに対して私が1番思ったことは、「ダニエルって、自販機で飲み物とか買うんや、どっから飲むんやろ……」である。あと、ハローキティのポップコーン、今度見かけたら是非作りたい。
•バイアス製菓
最初、あまりにもナチュラルにロゴが出てくるのでそういう名前の製菓会社が本当に協賛してるのかと勘違いした。そうではなくて、偏見の意味のバイアスだった。この物語では、バイアス製菓がピューロランドとコラボしてバレンタインのショーを企画するのだが、その際にバイアス製菓がピューロ側のサンリオキャラクター達に「バレンタインは、男の子が女の子にチョコを渡すものだ」などの偏見をいっぱい押し付けるのだ。そのせいでダニエルは、本当は自分からキティちゃんにチョコをあげたいのにあげられなくて葛藤する。
バイアス製菓で偏見を押し付ける吉池(女の子はかわいいものやスイーツが好きだろう!)に対し、キティさんはこう問いかける。
「大人の事情って、なあに?
クロミちゃんは、黒いから悪役なの?
シナモンは、小さいから可愛くなくちゃいけないの?」
キティさんはこの後、吉池に反撃の余地を与えず自分の言いたいことだけ言って颯爽と去って行く。まさに圧倒的正義。世界のキティである。吉池の前に登場した時、暗いピューロランドの中でスポットライトが当たったように白く光り輝いていて、さながら女神のようだった。純白の汚れなき純真な猫。まっすぐな心と曇りなき眼差し。
•ポムポムプリンも、鈴木も、一緒だよ
奇跡も、魔法も、あるんだよを思い出した。
そんなのはさておき、舞台スタッフの鈴木くんが知恵の木ステージに腰掛け、ええ声でピューロマーチの出だしを歌っていると、「何やってるの?」とポムポムプリンが現れる。バイアス製菓の意向でクロミちゃんが白くてふわふわした衣装を着るのを許されなかったり、シナモンもいつも通りの衣装を強制されたりしている中で、ひとり演出の変更もなくヒマしてるポムポムプリン。ポムさんがこんなマイペースメンタル安定自由人って、私は知らなかった。鈴木くんはポムさん相手に心情を吐露する。本当はミュージカル俳優に憧れていたこと、今の仕事は舞台を支える仕事で、本当にやりたかったことではないし大人の事情にまみれてこれでよかったのかなと思ってしまうこと。ポムポムプリンさんは好きな仕事ができていいですね、だってそれって一握りですもんね、と。
すると、ポムさんは言うのだ。
「僕だって、ただのポムポムプリンだよ」
鈴木くんは返す。
「ポムポムプリンは、ただものじゃないんですよ」
「ううん、ちがうよ。ポムポムプリンも、鈴木も、一緒だよ」
この台詞はかなり刺さる。ポムさんがその短い両手で天秤のようにポムポムと鈴木を比べる動作をするのがまたよい。
キティさんに小室ちゃんが悩み相談するシーンもある。本公演ではサンリオキャラクターと人間の俳優が対等に(人間の俳優はビジネスパートナーとしてちゃんとサンリオキャラクターに敬語を使いさん付けで呼ぶのだ)喋っているのが可愛くて、シュールで、それでいて考えさせられる。まるでサンリオキャラクターが一個の人格としてこの世に存在しているかのようだ。いや、確実に存在しているのだ。それも、圧倒的なカリスマで。ある意味、次元の融合だ。2.5次元とも違うし、これをなんと名付ければ良いのだろう。サンリオ世界と人間世界の強烈なまでのマリアージュ。
•みんなが素直な気持ちを表現して、個性が爆発したショー本番。
小室ちゃんがキティさんに背中を押されて、吉池ちゃんのバイアス圧力に負けずにみんなのやりたいようにショーをやろう!とGOを出し、最高のビバラバが開幕する!!
クロミちゃんもシナモンも着たい衣装を着て、ダニエルはキティちゃんにチョコを渡す(そしてサンリオキャラクターのみんなから、かわいー!と囃し立てられる。そんなダニエルがかわいい!)ダニエルがジェンダーバイアスを超越した瞬間である。
歌詞がいちいち深い。クロミちゃんが「ハートの音符を集めて」と歌うところは、おねがいマイメロディのアニメでサンリオ沼に落ちた私としては、クロミちゃん、15年たっても未だに黒音符集めてるんだと嬉しくなった。(絶対アニメ意識してるよね??)「世界を待たなくていいよ」の歌詞は、世の中にはまだまだ色んなバイアスがはびこっていて、価値観がアップデートされていないところもいっぱいある。それでも、世界が変わるのを待たずに、自分らしく生きようというメッセージに聞こえた。あらゆる人を、サンリオキャラクターズがエンパワーする!
•最後の吉池ちゃん
吉池ちゃんは、ショーの終演後にピューロのショップでサンリオキャラクターズの描かれた超絶可愛いお菓子を購入する。
レジの人「どなたかに差し上げるんですか?」
吉池ちゃん「妻に……お菓子なんて、あげたことなかったきら」
レジの人「すてきですね!」
みたいなやりとりがある。レジの人のフランクさに、ここは大阪か!とツッコミたくなったが、吉池ちゃんの改心に驚きを隠せない。
ダニエルがキティちゃんにチョコを渡したその勇気が、世界を変えていくのだ。
•まとめ
みんな、バイアスに負けずに自分の気持ちに素直に生きよう!というのが”VIVA LA VALENTINE”のテーマだった。ダニエルと小室ちゃんと鈴木くんの本当の気持ちを、キティさんとポムさんが後押しした。そして素晴らしいショーが完成し、頭の固い吉池ちゃんの心をも動かした。
「本当の想いは、イメージをあっと言う間に超えていくわ!」
先入観や勝手なイメージにとらわれた吉池ちゃんにキティさんは言う。
「自分のハートに聞いてみて」
ポムさんは言う。
言いたいことをなかなか素直には出せなくて、本音が押し殺されることの多い世の中で、自分が本当にやりたいことってなんだったのか、思い出せなくなってしまうことって本当に多い。
ポムさんはラップの中で、夢も生き甲斐もなくてもいい、何者でもなくてもそれでOK 素でいてOKって言っていた。このショーは、観るタイプの自己啓発だ。自己肯定感のカタマリみたいにみえる、サンリオキャラクターでさえ悩む時があるのだから、我々人間が悩まない筈もないのだ。最終、自分の気持ちに聞いて、自分に嘘をつかずに行動することで世界は少しずつ変わっていくのだろう。
ポムさんは、鈴木くんに言った。
「思っちゃって……どうするの?」
悩むことより、悩んだ上でどう行動するのか。答えを見つけられるのは、自分自身しかいない。大丈夫、サンリオキャラクター達がいつもそこにいて、応援してくれている。サンリオを知れば、世界が照らされる、そう確信したショーだった。2021年のバレンタインは人類史に確実に刻まれるであろう。
•気になったところ
◎「キティちゃんは、クロミちゃんをやっつけたりしない」
小室ちゃんのこの台詞には違和感を覚えた。ハーモニーランドの「お•も•て•な•しのキティカフェ」というショーではクロミちゃんは若干悪役にされているからだ。また、アニメシリーズでもクロミちゃんは悪役で、マイメロにやっつけられている。
まぁ、元々悪役として登場したキャラなので仕方ないのだがクロミファンとしては「お•も•て•な•しのキティカフェ」での扱いは少しだけ悲しかったりはした。本当は口調が強いだけで根はいい子なんだよ!あとキティカフェのショー自体は大好き。泣いた。
•マイメロが出てない
これはわかる。なんかこのショーにマイメロが出たら、天然さもあいまって話がややこしくなりそう。むしろクロミちゃんが、マイメロのいないショーに単独で出られるくらいの存在感を獲得していることに私は感動した。アニメ放映当時はマイメロのサブキャラ的な扱いが強い印象だったから、これだけ単独で地位を確立できたのは本当に凄いと思う。
•キキララは果たして喋るのか
他のショーを観て確認したいなとふと思った。
なんにせよ、ビバラバレンタイン最高でした!