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作品の色を出すこと
脚本家・壽倉雅(すくら・みやび)でございます。
自分自身の作品を書くとき、当然創作なので物語や設定はオリジナルになることでしょう。その中で、「ああ、この人の作品ぽいよな」「この人だから描ける作風だよな」と思われたら、独自の世界観や色を出すことに成功してる証です。
今回は、作品の色について書いていきたいと思います。
特徴的なセリフ
『渡る世間は鬼ばかり』でおなじみの脚本家・橋田壽賀子氏を具体例としてあげてみましょう。
橋田氏のドラマは、「主婦が家事をしながらでも、ドラマの内容が分かるように」という趣旨で、大変な長ゼリフが多いことで有名です。一人のセリフが台本7ページ近くになることも。
また、ただセリフが長いだけではなく、使われる言葉が独特でもあります。「作る」を「拵える」、「味噌汁」を「御御御付」、「~する道理がない」「ただいま帰りました」と言った言葉や、長幼の序を意識してセリフがとても丁寧であることが印象的です。
キャスティングのことは脚本家の一存では決められませんが、それでも上記のセリフが頻繁に出てくると、「あれ、これ橋田ドラマか?」と思うことでしょう。セリフだけで、手掛けた脚本家を当てられたら、なかなかの力量だと思います。
場面転換とコメディ要素を取り入れる
クスッと笑えるセリフや、イメージや回想シーンによるふんだんな場面転換、社会風刺を入れつつ個性的なキャラクターばかりを登場させる……そう、これは宮藤官九郎氏の作品で見られる特徴です。
3月まで放送されていたドラマ『不適切にもほどがある!』では、昭和と令和の違いをブラックユーモアに描きました。コンプライアンスや多様性、受動喫煙、不倫といった現代的要素を入れつつも、金妻や板東英二、チョメチョメといった昭和的要素を織り交ぜていることが印象的でした。
ギャグ的なセリフを言うのではなく、普通の何気ない日常会話でコメディにしながらも、時にシリアスな要素を入れて、人間の悲喜交々を描くことを得意としているのが宮藤氏。コメディとしてのテンポや作風で、「あ、これクドカンドラマ?」と思えたら、考察力が優れていることでしょう。
自分なりの作風とは?
7年続けていたとはいえ、かく言う私もまだまだ駆け出しの脚本家。知名度もなければ、これといった大きな代表作もありません。
でもその中で、私が自らの作風として意識しているのは、常に家族要素を取り入れていることです。もちろん、それだけでは浅いので、セリフやテンポといった、ドラマとしての根本的な描き方をさらに磨かなければいけないと思っています。
ドラマの企画を考えて企画書に落とし込む時も、「この人だから描けるもの」という要素を入れなければと考えています。また作風と同時に、得意ジャンルを持っておくことも重要かと思っています。
例えばジェームス三木氏は、大河ドラマを始め数多くの時代劇を描かれています。大河ドラマ『八代将軍吉宗』では、戦国のような合戦シーンがほとんどなく政治ドラマになりえるところを、周囲の人物との関係性を描くホームドラマ要素を取り入れました。また、江守徹氏演じる近松門左衛門が、語り兼ストーリーテラーとして、物語の解説を行うことも話題に。5年後に同じ脚本を担当した大河ドラマ『葵徳川三代』でも、中村梅雀氏演じる水戸光圀が語り兼ストーリーテラーを務めました。言わばこれも、ジェームス氏の作風と言えるでしょう。
作風やテンポ、特徴的な要素を入れることで、その脚本家ならではの作品が生まれることでしょう。私もこんなことを書きながらも、自分の作風を創り上げていかなければと思います。
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