見出し画像

演じながら、書く

脚本家・壽倉雅(すくら・みやび)でございます。

脚本というのは、書いた先に演者が演じることで、本当の完成となります。
様々な脚本家の方々が、ご自身の作品を書くにあたって、いろんなやり方があると思います。

例えば、脚本家・山田太一氏は、「あ」「ええ」などの感嘆詞も、全て台本に書かれるそうですが、それはセリフを発しながら原稿を書かれているからだとか。そのため、殴り書きのような達筆な肉筆原稿であったと言われています。

今日は、そんな私の書き方についてご紹介したいと思います。


それぞれの役になりきること

私の場合、原稿を書いているときに同時進行でしているのが、その役になりきって書いているということです。
演劇をやっていたというのも、理由の一つかもしれませんが、ここ数年でこのスタイルが確立されていきました。

少し余談ではありますが、演劇などでは、稽古での「本読み」があったり、演じる役者が不在のために、スタッフが代役になって稽古に参加することもあります。演劇をしていた当時、私も自分の出番がない場面での代役として稽古に参加したことがありました。
不思議なことに、演者が代役になると、本来の演者とのテンポが変わり、自身の演技も変わるという特徴があります。演技の掛け合いは、綱引きと一緒で、どちらかの演技が強く引っ張ると、相手側もそれに吊られていきます。片方がベテランで、片方が新人だった場合、ベテランの演技に引っ張られて、新人の演技もグッと伸びることもあるそうです。
そのため、例え代役でも、ただセリフを読むだけではなく、それなりのキャラを演じないと、相手も自分の演技に集中ができません。

おそらく、その時の経験があったからかもしれませんが、自分の脚本の中で、人物同士の掛け合いがあった場合、それぞれの役を演じながら書くことで、話し方の癖や、セリフの繋ぎに違和感がなくなります。やがてそれは、各登場人物のキャラクター性にも影響してきます。
一人で演じているとはいえ、セリフのテンポや、そのシーンでの空気感や感情が、脚本の中で表現できるようになったと思っています。

イメージは、おままごと

脚本家・橋田壽賀子氏は、「いろんな人物になりきれるのが良い」「今日、私は〇〇さん。おままごとみたい」とおっしゃっています。
演じながら書くことは、ある意味おままごとと同じなのかもしれません。

よく小さい頃に、特に女の子は人形遊びでおままごとをしたり、友達やお母さんと遊ぶときも「家族ごっこ」や「お医者さんごっこ」などをした方も多いと思います。
子どもの想像力というのは不思議なもので、台本がないのに、ちゃんとセリフの掛け合いをしたり、友達と遊ぶときはちゃんと「お父さん役」「お母さん役」「子ども役」「おばあちゃん役」などのキャスティングをしています。

脚本執筆の間は、パソコンの画面や原稿用紙に向き合う個人作業です。演じながら、キーボードを打ったり、ペンを動かすのは正直テンポとしては上手く噛み合わないこともあります。
そういう時は、一旦全部書き終わってから、全部を一通り演じていきます。本読みの過程で、言い回しやセリフを多少変えたり、言いにくいと思ったセリフを微修正します。

このように、演じながら脚本を完成させていくということは、やはり演劇をやっていたからこその、私なりの経験値だと思っています。

===

カクヨムで、エッセイを平日に更新しています!
https://kakuyomu.jp/works/16818093080262831838

Film Buyerで、毎週火曜日作品アップしています!
https://film-buyer.jp/scenarios/?keyword=%E5%A3%BD%E5%80%89%E9%9B%85

脚本のお仕事、絶賛募集中です! お問い合わせは、こちら!sukuramiyabi.office@gmail.com

過去実績(本名時代からの実績含む)のサイトは、こちら!https://sites.google.com/view/sukuramiyabi-office/

次回もお楽しみに!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?