東京の小さな劇団が結局やらないことにしたことたち の こと #5
テキスト:石原夏実(すこやかクラブ)
このマガジンは、東京の小さな劇団「すこやかクラブ」が、2020年2月以降、刻々と変化する状況のなかで「あーだこーだ」と考え悩んで、結局やらないことにしたことたちと「あーだこーだ」の記録です。
(もしよかったら初めての方は初回記事をご参照ください)
第1回 青い鳥プロジェクト座談会 その4
(写真:左から うえもとしほ、向原徹、石原夏実)
2020年3月5日。すこやかクラブメンバーの鵜沼ユカが夫とともに経営しているバル「マホラ食堂」。
「すこやかクラブ”青い鳥”プロジェクト」広報のため、すこやかクラブの主宰・うえもとしほ、メンバーの石原夏実、向原徹、そして写真家のbozzoさんが集って座談会を開催しました。
ここでは引き続き、その座談会の内容をお届けします。
「人を集める」以外の方法でクリエイションを発表しようと企画を再考しはじめた面々。まずは、4月に予定していたイラスト展(パフォーマンス上演付き)「あおいとり展」を、ウェブで展開+関連グッズを詰め込んだ"ギフトボックス"を販売するという形態にすることにしました。
この連載のタイトルをお読みいただければ分かるとおり、その後の更なる紆余曲折を経て、この企画自体も「やらないことに」なります。いま読み返すと、この座談会時点では、6月以降に予定していた上演やワークショップなどの企画はそのままの形で続行するつもりでいたし、もはや4月になれば、世の中の空気も、ウイルスの脅威も快方に向かっているだろうという思いでいたことがうかがえて、思わず遠い目をしてしまいます。
まずは、この日の座談会のおしまいに、思わずファインダーから目を外して話し合いに参加してくださった写真家のbozzoさんとのやり取りを中心に、このプロジェクトが一旦、方向性を明確にしてゆく様子を記しておきます。
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bozzo(以下、b):そもそも、そのー、ギフトボックスをやるっていうエクスキューズは、するんですか?この紆余曲折は説明するのね?
うえもとしほ(以下、う):あ、えっと、なぜギフトボックスに落ち着いたかの、紆余曲折?
b:うんうんうんうん。はじめからギフトボックス作りますっていう純粋な気持ちじゃないっていうか(苦笑)
う:ないですね。あー、そういうことね。
b:うん。そこの、エクスキューズ次第で、決まってくると思うんだけど。価格も。それをなんか、クラウドファンディング的なノリもあるような気がするんだけど。
う:あー、そういう形にするっていうことでね。
b:まあ、こういう世の中になっちゃってて、でも、私たち発表したいっていう強い思いがあるんだけど、
石原夏実(以下、な):こういうことを選びましたっていう、
b:そうそうそう。
な:そのことに対して、
b:そう、応援っていうか…そういうノリも、買う側はあるんじゃないかな。
な:だから1万円って言ったのよ…
む:や、全然わかんなかったよ?
な:あははは(笑)
b:まあ、でも、なんていうの?すごく、悪ノリっちゃ悪ノリなんだけど…この状況に乗っかっちゃってる感じもしないでもないけど。
な:おっしゃる通り、この状況に乗っかって、うちら新しいことやっちゃってます!みたいな感じになるのは…心外です。ははは(笑)
b:心外だよねえ。
う:言われてみればそうだよねえ。
b:素直に(公演を)やりたいんだったら、やりゃいいじゃん。ってところも、なくはないな。
な:そうね、そういうツッコミ絶対あると思う。本当に。うん。
b:うん。
な:自分たちが、それでも公演やりたいんだったら、そのまま公演やりゃいいじゃんっていう。
b:だって、もともとモヤモヤしてるからやらないのに、そのモヤモヤに乗っかっちゃうんだもんね。
う:あー…
な:乗っかるっていうか、やっても、やらなくても、モヤッとするっていうところの…アナザー…アンサー…
向原徹(以下、む):そのモヤモヤがあるからやらないっていうのはさ、すごく簡単に言うと、いまやっても楽しくないからやらないってことじゃん。
う:うんうんうん。
む:だから、僕らが楽しいやり方を模索してるっていうことに対して、そんなに何か…
b:あー、はいはい。まあ、そういう風に言えばいいんだよね。僕らが楽しい方法を考えて、ギフトボックスにしましたって。変に理屈こねないでね。
う:あー。
な:私たちが何か理屈をこねはじめてね、いいこと1個もないもんね。
b:ふふふふふふ(笑)で、本公演が、最終着地点なんだよね?
な:そう。
b:そのプロセスも全部見せようっていうことのスタートに、ギフトボックスが出てくるんだよね。
う:そうですね、いま、ギフトボックスがスタートに出てこようとしてますね。
b:うん、で、その、最終地点まで含めてみんなで一緒に楽しみましょうってことの、はじめの一歩がギフトボックスですっていう。
う:うん。
b:そうすれば、期待が高まって、ギフトボックス持ってる方が、着地点をより楽しめるよっていうことに。
う・む:あーー。
b・な:(苦笑)
む:…待って待って。「あー」って思ってんの俺とうえもとさんだけだぜ。
b・な:ははははははは(笑)
む:まあいいや、反省は。
う:うん。
な:bozzoさんだったら…いくらで買いますか?ギフトボックス。
b:まあ、2千円でいいと思うけど。
な:お、2千円説アリだった。
う:bozzoジャッジ出ました。
な:bozzoさんジャッジ出た。
b:あ、でも、それを色々、クラウド的に。1万円出すところまで連れてくる、ってやっちゃうのも、ありだと思うけど。
む:ほぉーーーー。
な:ねー。本公演も、見れちゃうとかね。
b:あー。
う:めちゃいいじゃん!
b:それいいよ、それー。それアリだよ。
う:すごいなんか、1年間のプロジェクトっぽくなってきたあ。
な:ははははは(笑)
b:「1年間お付き合いください」っていう感じになればいいよね。
む:ああ〜それいい〜
b:楽しいよね。
む:お付き合いくださいか、それすげえいいなあ。
b:あのー、プロジェクトとして、いいね。
う:うん、いいですよね。
な:オッケー。
う:はい。
な:これでいこう!
う・む:はーい。
b:いつ発表ですか?
全員:ふへへへへ(笑)
う:いつだと思います?(笑)
な:まあ、でも、当初は、今週末(3月第1週)すぐに発表するつもりだったんですけど、
b:ああ。
な:プロジェクト全体のことを。まあ、イラスト展はウェブで展開することになったから、もっと遅くてもいいのか。情報解禁。4月頭で、2週間前とか。
b:まあ、気持ちも4月の方がいいかもしれない。
む:あー、多少のフレッシュ感で。
b:ね、多少のね。
な:4月頭に発表して、中旬にウェブ+ギフトボックス版「あおいとり展」。で、6月に外部の人たちとのクリエイション。
う:6月かあ。6月どうなってんだろうね。
な:ねえ。
う:オリンピック…
な:オリンピックは、
う:中止になってる。
b:(笑)
う:延期にするとしても、12月が期限だ、みたいなさ。
b:えー、あ、そうなの?
う:大臣?が発表してたのが、
b:あ、ほんと。年内にやることは決定なんだ。
う:あ、決定じゃなくて、もしも会期をずらすとしても、デッドラインは12月だ。みたいな。
な:冬のオリンピックになっちゃうもんね(笑)
う:あーそうだね。
b:すごいね、この一年がモヤモヤしちゃうね。
な:ほんとですよー。
b:はははは(笑)
「じゃあ外で撮りましょう」
写真撮影をしながら話し合いにも参加してくれたbozzoさんには、マホラ食堂の看板をバックに、メンバーの集合写真も撮ってほしいとお伝えしていたので、座談会が終わるとすぐに全員で表へ出ました。
記録的な暖冬から春へと向かう昼さがり。外はまだ少し肌寒くて、「いいねいいね」というbozzoさんの声かけに、めちゃくちゃなポーズで応えると、みんな口々に「寒い寒い」と言いながら、店内へ引き返しました。
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次回は、3月いっぱいを通して、私たちがこのプロジェクトをどのように展開してゆこうとしたのか、どのように状況の変化に惑っていったのかを記録してみたいと思います。
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