東京の小さな劇団が結局やらないことにしたことたち の こと #4
テキスト:石原夏実(すこやかクラブ)
このマガジンは、東京の小さな劇団「すこやかクラブ」が、2020年2月以降、刻々と変化する状況のなかで「あーだこーだ」と考え悩んで、結局やらないことにしたことたちと「あーだこーだ」の記録です。
(もしよかったら初めての方は初回記事をご参照ください)
第1回 青い鳥プロジェクト座談会 その3
(写真:左から うえもとしほ 、向原徹、石原夏実)
2020年3月5日。すこやかクラブメンバーの鵜沼ユカがご主人とともに経営しているバル「マホラ食堂」。
「すこやかクラブ”青い鳥”プロジェクト」広報のため、すこやかクラブの主宰・うえもとしほ、メンバーの石原夏実、向原徹、そして写真家のbozzoさんが集って座談会を開催しました。
ここでは、前回記事に引き続き、その座談会の内容をお届けします。
当初予定していたプロジェクトのうち上半期に開催予定だったものたちを、人を集めてプレゼンテーションするのではなく、別の形態に置き換えて行うということでメンバーの意見がまとまり、じゃあどうやるのか?という具体案の構想に入ってゆきます。
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うえもとしほ (以下、う):やっぱ、今さ、上演してる人たちはさ、「ぜひ来てください!」じゃなくて、「万全の体制で臨んでます」とか「稽古はがんばってます」とか、そういう言い方になっちゃうのが…
石原夏実(以下、な):まあね、それが、取り締まるために人員割いてまで花見を自粛させようとしてる、とか、何かこう、ウイルスから離れて、異常な自粛ムードというものが起こり始めていることに対してのアンチテーゼとして、どうしても続行するんだ、っていう意志は尊重するべきだし。
う:あ、全然いいと思うんだけど、
な:うん、で、私たちもさ、別にそういう気持ちはないわけではなくて、それに怯んでいるわけではなくて、
う:うん。
な:飽くまで今回は、ウイルスについてはまだハッキリしないことが多くて…もう…モヤッとするんだ。というところが。
む:すこやかじゃないんだよね。
な:そう、すこやかクラブの、健やかさではない。
う:うん、もう「来て!」って言えないのがとにかくもう、
な:そうだよね。自分がやってることを、気持ちよく全面的に肯定できないっていうことはね。
向原徹(以下、む):その上で、その、新しい表現っていうのを探るっていうのは(いいと思う)…今後もいろんなことあるだろうし…
な:うん。で、昨日の話し合い(※座談会前日に開かれたメンバーミーティング)のなかでは、じゃあ、まずは4月に予定していたイラスト展を、ウェブ上でできるようにしようかっていう話で、「うん」ってなって、解散になったんですけど。一晩明けてどうですか。
む:あー、やっぱり、絵だけを並べてイラストページにするっていうより、「絵のある風景」を撮った写真、に、僕らが居たりして。そういう残し方。で、イラスト自体は、今後の本公演とかで見れる場所を作ったりするっていう…それは面白いなあって…
な:でもそれ、昨日、むっくんが帰ったあとに話をしてたけど。うえちゃんが描いた絵を、屋外なり屋内なり、どこかギャラリーとか劇場ではない場所に置いて、それがある風景っていうのを写真に撮って、それをウェブ上で公開するっていうアイディア自体は、面白いけれども、それをどこで撮るのか?とか、なぜ絵自体じゃなくて風景を提示するのかっていうことが、いまひとつ弱くて…これ私が最初提案したんだけどね(笑)
う:あ、そうだった。
な:でもそれって、そもそも、うえちゃんが今、すっごい大きな絵を描いてて。それが、もう、スキャンしきれない大きさだってところからの発想なんだよね。
む:あーそうでした。だからそこまで必然性が伴わないっていうか、
な:そうそうそう。コンセプトがもうちょっと、「青い鳥」の何かと結びついてれば面白いけどね。そもそも、えっと、うえちゃんは今、小さめの絵を30枚くらい?と、いちばん大きい絵が1枚と、その次に大きい絵を2枚描いてるんだよね。
う:うん。
な:2番目に大きい絵でどのくらいなの?
う:まあ、(両手で空に四角を描きながら)このくらい…
む:あはは(笑)
な:(3人が囲んでいるテーブルを指して)これより大きい?
む:このぐらいじゃないかなあ。
な:このぐらいなんだ。
む:それじゃ文面で伝わらない(笑)
な:あはは(笑)
う:横が1090何ミリで…
む:ああ、それそれ。
う:縦が800ミリとか。
む:へえ。
な:それが2枚と。超でっかいのが?
う:横がね、4メートルくらいで、
む:!!!!!
な:すごくない!?
む:すご!!!!!!
な:4メーターだよ?!
む:ぎょ、や、すごいねえ。
な:4メーターを、何使って描いてんの?
う:色鉛筆。
む:ええええええええ!!!!!!
な:クレイジーだよね(笑)
む:すげえ。
う:すげえ大変なんだー。一筆描いても、線一本分しか埋まらないからさ。
む:いやあ、大変でしょう。
な:それ、ちゃんと保管してね? え、どうやって描いてんの?
う:模造紙を…つなぎ合わせて、10mで一本売ってるから、それを、切って繋げて、で、描いてる。
な:いまどうやって保管してんの?
う:いまは…創造舎(※「たちかわ創造舎」。立川市にある旧多摩川小学校の校舎や体育館を活用した文化創造施設。すこやかクラブは、シェア・オフィス・メンバーとして在籍している)で描いてるんだけど、敷いて、乗って描いてる(笑)誰かが来るときは、クルクルして、端っこに置いて保管して、で、また広げて、
む:それさあ、
な:いや、思ったよ。その様子を映像に撮らなきゃね。記録しなきゃ。
う:え?それを?
む:うん、写真でもいいからさ。
う:あー。…分かった。そっか。
む:いやあ、うちの主宰すごいな。
う:何にせよ、ちょっと、スキャンするの、無理なんだよね。
な:無理なんだよ。ははは(笑)
う:くそ金かければできるかもしれないけど。
(絵:「あおいとり展」で発表予定だったうえもとのイラストの一部。DM用に一部分を切り出した)
な:だから昨日、一応、落ち着いたアイディアとしては、他のスキャンできるやつは、まあ、ウェブ上に公開するんだったらね、そのままギャラリーページみたいにアップして。大きいやつだけ、映像にしたらどうかなって。…「日曜美術館」って番組見たことある?NHKの。
む:あ、あると思うけど。
な:あれでさ、大きな絵画を撮る時って、こう、カメラが、ゆっくりパンしてって…
む:あっはっはっはっは(笑)
う:なんか、アナウンサーがさ…「モネは、蓮の花を描きました」みたいなナレーション入れたりするんだけど、
な:フハハハハ(笑)
む:わかったよ、そのアナウンサー、石原さんがやるんでしょ?(笑)いや、もう、大体想像つくし、石原さんの芝居もなんとなく分かるし(笑)いいよもう、最後、俺写せばいいじゃん。
な:あ、「こんなデカイんだ!?」って?(笑)
う:(絵を覗き込むようなポーズで)こうやってね。
む:そうそう(笑)
な:まあ、そうやって、ね、やったらどうかなって。ウェブでやるなら。
む:まあ、今これだけ笑ってるし(笑)面白いんじゃないかな。
う:それでね、ほかの2人のことを考えると…当初、(この企画の)何が面白かったかっていうと、「青い鳥」を、この3人が別々に、自分が思ったなりに作品にして…それが提示されるのが面白いねってうのがあったから。やっぱり、なっちゃんはなっちゃんで、向原さんは向原さんで発表できたらって思って。ウェブ上で映像配信するとか。
な:うん。
う:あ、でも、向原さんは、俺はテキストかなって、なんか、ボソって言ってたじゃん。だから、これは向原さん帰ったあとに話したことだけど。向原さんは動画じゃなくて、テキストで発表するってことでもいいのかなって。
む:あーそうね。はい。そうですね。僕が作ろうと思ってたのは、僕と、もう1人、中学2年生の女の子と一緒に(2人芝居を)やろうと思ってたんですけど。学校が見事に休校になっちゃってリハができないってことになって、
な:休校でさ、学校もなくてさ、外にも出れないんでしょ?
う:うん、なんかさあ、公園で遊んじゃダメみたいなさあ、
な:どうしたらいいの?みんなモヤシになればいいの?可哀想すぎるよ。
む:僕が作ろうとしてたのは、台詞とか、演劇的なものだったから…台詞も、考えたり、印象に残ってるのを抽出したりとかね、しようかなーって思ってたから。まあテキストにしようかなって思ったのをボソッと言ったのを拾ってもらえたのはありがたい。
う:うん。そうそう。そうなんだよ。
な:私は、もう、ダンサーも、音楽家も集めて、稽古場もおさえて、稽古日程もおさえてもらってて、ていう状況だし。これはもう絶対につくりたいっていう気持ちはあるし。
う:うん。
な:ただ…それをじゃあ、映像に撮って配信しましょうっていうだけでは…あの、映像に撮ったら、それは映像作品だから…私は映像作家ではないから…そこの、誠実さをどうしようかなって思ったときにさ、
う:うん。
な:あの、一晩置いて考えたときにさ。なんかその…その…きっと今ね、こういうときに、ネット配信で、おうちにいる人に何かを届けようっていう人はいっぱいいると思うんだけど。
う:うん。
な:なんか、すこやかクラブ的なものって、もうちょっとハンドメイドなんじゃないかってこととか、
う:うん。
な:人を集めてプレゼンテーションするときと同じ暖かさ、みたいなことをちゃんと届けるには、とか。そしてそれに対する対価をちゃんと払ってもいいかなって思ってもらうような何かを…
む:そうだね。それ大事だね。はい。
な:どうしたらいいんだろうって思ったときに…あの。
な:お客さんの目の前にプレゼンスできない、プレゼンテーションできないんだったら…プレゼントすればいいんじゃないか!と思って。
う・む:…(目を見合わせる)
む:う、う、い、今なんか、うまいこと言ったのかな。
う:うん、なんかうまいこと言った。
な:あれ、私、今朝、コーヒー淹れながら「あ!これ!」って思ったんだけど…違ったかな?
う・む:い、い、いや!
む:ちょちょちょちょちょっと、
う:もうちょっとほしい、言葉がほしい、言葉が(笑)
む:何かのサービスをする…ってこと?
な:モノを、あの、作ったらどうだろうと。
う:うんうん。
な:あの…お客さんのおうちに小箱が届くの。で、そのなかに、むっくんのテキストだったらテキストが入ってたり、うえちゃんだったらイラスト…ポストカードみたいなのが入ってたり。
む:あーなるほど。
な:紙じゃなくてもいいんだ。その、モノと、箱の中の空間が、自分ちに届く…っていう…
う・む:いいじゃん。
な:いい?
う:いいじゃん。
む:なるほど。
う:うん、ギフトボックスね。
な:そうそうそう。
む:ほー。
う:いいじゃん。すごく。
な:いえーい!
う:でも、なっちゃんのやつはどうやんの?
な:そう。だからなっちゃんのやつは、どうやってやろうかなって思ったときに、まあ、ウェブは完全に無くさなくてもいいし、むしろそれが入り口になった方がいいから。
う:ね、そうだね。
な:うえちゃんも、さっき言ったみたいな、ウェブ上でのアップもするし。私も、何かしら映像の形にしたダンス作品は、ウェブ上では誰でも見られるようにして、
う:あー、それとは別にってことか。
な:そうそう。その質感とか、感覚とか、が、何かモノになって自分ちに届くっていうこと。だから、映像を見て、そのモノに触れることで作品が完成する、みたいなことがあったら素敵かもしれない。
う:へー、うんうん。確かにね。みんなは、何入れるといいかね。
な:どうする? どうする? あのー、すっごい点数じゃん。絵は。うえちゃんの絵は。
う:まあねえ。
な:で、それをカタログにして入れる、とかではないのかなって。それ届いたらすっごい嬉しいけどさ。
う:送る用に描いてもいいけどね。
な:まじ???
む:はあ〜!
な:(文庫本を指して)これくらいの大きさだったら嬉しいよね?
む:いや、うれしいよ。
な:これだったらどのくらいで描けるの?
う:これだったらすぐ描けるよ。
む:すげえな。
う:どんなの描くのかは時間が許す限りって感じだけど。
な:じゃあ…30は描ける?
う:30、頑張ればいけるんじゃないかなあ。
な:じゃあ限定30。
う:そうしとこう。
な:いくらにしますか。
う:うーん…
な:1万円。
う・む:えええええ!?
bozzoさん(以下、b):(挙手して)はい。
全員:わ!(笑)
な:やった!bozzoさん参加!お願いします!
b:ははは。そもそも、そのー、ギフトボックスをやるっていうエクスキューズは、するんですか?この紆余曲折は説明するのね?
う:あ、えっと、なぜギフトボックスに落ち着いたかの、紆余曲折?
b:うんうんうんうん。はじめからギフトボックス作りますっていう純粋な気持ちじゃないっていうか(苦笑)
う:ないですね。あー、そういうことね。
b:うん。そこの、エクスキューズ次第で、決まってくると思うんだけど。価格も。それをなんか、クラウドファンディング的なノリもあるような気がするんだけど。
う:あー、そういう形にするっていうことでね。
b:まあ、こういう世の中になっちゃってて、私たち発表したいっていう強い思いがあるんだけど、
な:こういうことを選びましたっていう、
b:そうそうそう。
な:そのことに対して、
b:そう、応援っていうか…そういうノリも、買う側はあるんじゃないかな。
な:だから1万円って言ったのよ…
む:や、全然わかんなかったよ?
な:あははは(笑)
次回へ続く
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