いびつ育ちのポジティブ正当化術②
「好きなようにやればいいのよね、本人の自由だから」
と母が言うので、
「そうだね、その子の人生だからね」
とだけ答えた。
知人の娘が、突然大学を卒業したら東京に住むと言い出したらしい。どうやら勝手に東京の企業を受けて、受かっていたそうだ。
もうこちらもいい年をした大人なのできちんと答えるけれど、25歳ぐらいのときに母にこう言われて受け止めきれただろうかとも思う。
以前、私は年に数回の旅行でさえも許してもらえず、友達の家に泊まりにいくと嘘をついていた。
この前も旅行に行っていたのに、何故また行くのか?としつこく問われるからだ。ちなみに旅行の代金をもらおうとしているわけではなく、すべて自分で働いたお金である。
こればっかりは何がいけないのか、いまだによくわからない。
娘が楽しんでいるのが面白くないのか、そのときの気分で言っているのか。
その数ヵ月前に近場とはいえ海外に行っていたのが気にくわなかったというのもあるだろう。
いやいやいや、騙されてはいけない。
そもそも、なぜ、海外に行った数ヵ月後に東京に行ってはダメなのかという話である。
時を戻して、数年前のちょうど今頃。7月の暑い時期だった。
仕事終わりに空港の近くのホテルに泊まって、早朝の飛行機で東京に行き、友人と待ち合わせをして見たい展示だけを凝縮して猛ダッシュで見た。
電車に乗り遅れたら、飛行機が飛ばなかったら、帰ってきてからもバスが遅れたら、などとおびえながらもどうにかこうにか無事にやり過ごし、何食わぬ顔で帰った。
そのとき六本木ヒルズの上で見た、青空のことを異常に鮮明に覚えているのだ。
私は長年謎の実家ルールに縛られまくって生きている一方で、ここから先は良いことしかないといつも思うようにしている。
この青空を見たときも、良いことしかないと確信していた。その数ヵ月後には運命の人だと思った人と付き合い始めた。
そして数年経った今、その人とは別れた。
これもすべて良い方向に向かっているのだと思う(ようにしている)
実家で苦労した人を数人見てきたが、みんな本当にとにかく優しいなと思う。嘘をつくことに罪悪感を感じる人も多い。
(私はぶっちゃけ何とも思っていないし、自分の息抜きのためなら何とでも理由をつける)
優しいからこそ、母親を裏切ってはいけないと思うのだろう。娘を自由に外出させないタイプの母親は意外と多い先に家族の予定をいれてしまい断れないようにするとか、出掛けられてもあとから文句をめちゃくちゃ言うとか。舞台を見に行くと言うと「そんなお金のかかるものを見るのはやめなさい」と言われて見に行けなかったという話も聞いたことがある(自分のお金をどう使おうと自由だ)
結論、私は嘘はついても良いと思う。
自分1人の時間を確保するため、友達に会うため旅行に行くため。
心のバランスを保つためにつく嘘は問題ない。
私の場合、バレたら終わりなので、電車の乗り換えの計画性がついたり、本当に見たいもの・行きたいものはなにか自分のなかではっきり分かったりとメリットもある。
それから、あまり声を大にしては言いにくいのだが、正直今の新しい生活様式で世の中が混乱していたときも、まったくといって良いほど精神的なダメージを負わなかった(普段からあまり頻繁に外出できないから)
何よりもお金がたまる。いつか自分の自由な時間を持てるようになったときに使えばよい。
不思議なことに恋人に会う、というのは嫌な顔をされない。同じく婚活も。
結婚に繋がるからという理由なのだろうか。
しかし母に確認することはできないので、いつまでも真相は謎のままだ。