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ただそこにいるだけで、癒し
続きものを書いている途中だったんですけど、あまりにも好きな映画を観てしまったので書かせてほしい…!!
以前何かの映画を観た流れで自動再生されて、そのまま冒頭の何分かだけ観たことがあったのですが、その冒頭の印象から
え、なんか不穏。犯罪系…?
と私が勘違いしたために、今そんな気分じゃねぇんだ…!!と再生を停止したままになっていたのですが、どうやらそんな映画じゃないらしいということがわかったので、大分時間が経ったけどちゃんと観てみることにしたのです。
そしたらもうね、すごかったよ…!!!
たくさん感じるものがありました。初見で怪しい植物育ててるんじゃないかなんて勘ぐってごめんね!!!
『 PERFECT DAYS 』(監督:ヴィム・ヴェンダース)
という2023年の終わりに公開された作品です。
役所広司さんが主演をなさっています。
この映画は、トイレの清掃員の仕事をしている男性の日常をただただ映していく、というものです。
内容としては、ほんとこれだけ。
映画ならではの大きな事件や魔法のような出来事は何も起こりません。
早朝に目覚め、身支度をし、仕事に出かけて、仕事終わりに自分の心地いいことをしてから就寝する、という一日のルーティーンが繰り返されるのですが、そのルーティーンが重なるごとに、人ひとりの人生の尊さ、美しさみたいなものが浮かび上がってきます。
映像の中の光と影、自然、街の景色、そして運転中に流れる音楽が、彼の見ているであろう美しい世界に花を添えます。
毎日同じルーティーンを繰り返しているのだとしても、雨の日もあればお天気のいい日もあり、いつも通る道には昨日とは違う人々が行き交い、いつも職場で会う同僚は新しい話題を提供してくれ、時には初めましての人と出会わせてくれたりもする。
その交流はほんの一瞬行き交うだけの縁だったとしても、もう二度と訪れることがない「今」という尊い時間を彩ってくれます。
主人公の男性が、「今」という瞬間をとても大切に味わっていることが、なんだかとても伝わってくる気がするのです。
アラームかけるんじゃなくて、ご近所さんが外を掃く音で目覚めるっていうのがもうめちゃくちゃいい。
そして、毎朝出勤でアパートのドアを出る瞬間に、彼は決まって空を見上げて微笑みます。
それもルーティーンに組み込まれている感じなのですが、その顔がいつもすごく満足そうで、今日という自分の二度と訪れない尊い一日がまた始まったな、という喜びがあるように感じました。
毎日あんなに幸せな気持ちで一日を始められるのってすごくいいな。
そして、めちゃくちゃ人に与える人だなって感じた。
自分の大事なものは絶対に譲らないけど、それ以外のもの(もちろんそれも大事なものではあるんだけど)は、見返りを求めずに結構惜しみなく差し出す(ちょっと後悔してたこともあったけど。笑)
でも、「ここまではできるけど、これ以上はできないよ」というバウンダリーが基本的に自分の中にしっかりとあるから、理不尽な頼み事にはちゃんと文句をいったり断ったりする。
多分、一度だけこの男性が声を荒げて抗議する場面が出てきたんだけど、自分のためにちゃんとこれができるから、自分が心地よいと感じる生活を維持することができるんだろうなと思う。
自分にも他人にも世界にもいつも優しく思いやりを持っているためには、ちゃんと自分に必要な余白を確保しておく必要があるということを彼はよくわかっているんだろうな。
それと、彼の日常の中で、いろんな人たちとの些細なやり取りがあるんだけど、それがなんかいちいち美しいなぁと感じました。
私の感覚では、「あ、次のシーンでなんかイヤな顔しそう」と思ってみていると、「まさかの笑顔…!!」とか。
こんな修羅場になりそうなシーンで修羅場にならない…!!!とか。
絶対この後殺伐とするだろうなってところで、面白いほど殺伐としないのです。映画なのに。
ひと悶着ありそうなシーンにも、ずっと何か温かいものがある感じがする。
どんな時でも、誰に対しても、彼は(無口で愛想はそんなにないけど)いつも心を寄せて愛のある態度で接しているように見えました。
自分の中に複雑な感情を抱えながら、同時に相手から発せられる少し棘を含んだ言葉のそのもっと奥にも複雑な感情があるのを感じながら、それを全て自分の中にホールドして、愛を持って相手を抱きしめます。
なんかうっかり泣いてしまった。
彼の行動の動機が愛からきているものだから、彼の世界も彼に愛を見せてくれるのかもしれません。
日常の中で、誰かの中に愛をみつけると、彼はとても嬉しそうに笑って、結構長めにその喜びをかみしめているように感じた。
語彙がないから美しいしか言えない。申し訳ない。
彼の世界は仕事と、自分の趣味と、いくつかのお気に入りの場所、という決して広くない世界で構成されているように見える。
でも、彼はその彼の世界にいつも自分自身を開いている感じがする。
だから、偶然出会った人々が、ぽろっと彼に本音を漏らしていったりする。
そんな時でも、彼は静かにそこに存在し、余計なことは言わない。
でも、時々彼の本心から湧き上がってくるような、感情のこもった言葉が出てきた時には、それがとても心に浸透してくる感じがした。
彼にしては珍しい強い意志をもった言葉が、私にも沁みた。
私の痛いところを力強く、柔らかく包んでくれるようだ。
毎日同じルーティーンを祈るように繰り返してきた彼から出てきた言葉だから、こんなに響いてくるのかもしれないなと思った。
つい先日、同じヒーリングスクールの卒業生である先輩が、
「ヒーラーは、ただそこに居るだけで癒し」
というようなニュアンスのことをおっしゃっていて、それがすごく心に残っていたんだけど、この映画の主人公の彼がまさにそれだなと思った。
この人がただそばに居るだけで、みんながのびのび自由になっていくような、希望がないと感じていた場所にわずかな希望を見出せるような。
一緒に居るだけで楽になっていくような、そんな感じがする。
彼は、特別なことはしないんだけど。
ヒーラーが必ずしもヒーリングを職業にしているとは限りません。
どんな肩書や立場であっても、ただそこに居るだけでそばにいる人に癒しをもたらす人ってたくさんいるんだろうなと感じます。
そんな無自覚ヒーラーの日々の暮らしをがっつり見せてもらったような感じ。
役所広司さんの表情が本当に美しくて、あと声がすごく柔らかく優しくて、2か所でうっかり泣きました。
そういえば、映画観て泣くようになったのもヒーリングスクールに通い始めてから起こった変化のひとつです。
以前は年に1回泣いたら、「今年は泣いたなー」って感じるくらいの鉄のハートだったのに、ずいぶん柔らかくなったものです。
まためちゃくちゃ長くなっちゃったけど、書きたいことかけてすごく満足。
感動とパッションだけで書くとこうなるんだなぁ。
すごく心が揺さぶられて、今自分の中に発生している何かを外に出したい!!という勢いで書いてた気がします。
新しい映画をあまり開拓せずに好きなものばかり繰り返し観ちゃうんだけど、この映画もまた何度も繰り返しみちゃうんだろうな。
そして、今度は別のシーンで泣くかもしれない。
楽しみ。
最後まで読んでくださった方、ほんとにありがとうございます!!