あの洗濯をしたから

汚い話だし、あまりこんなところに書くべき話ではないとは思うが、母はトイレットペーパーや尿漏れパットを洗濯してしまうことが多くなっていた。

私はほぼ毎日、洗濯物をバサバサとはたいたり、コロコロをかけたりしながら、「ああもう、なんで毎回毎回・・・」とイライラした。

母はトイレも近くなり、家の中でも間に合わなくなってきた。
デイサービスの職員からも、日中に失敗してしまうことがあると聞いた。

いよいよか。

オムツというと、母は抵抗するだろう。
抵抗されることをわかっていて、薦めくちゃならないのも気が引けるものだ。

試しに色がついたリハパンを買ってきた。

「これは、パンツと一緒。」と言うと、思っていたよりすんなり履いてくれた。

実は元々、祖母がくれたオムツが家にあったのだが、「暑い!」と言って履いてなかった。「これは薄いよ。おばあちゃんがくれたのとは違うよ。」と説明したこともあり、納得したようだった。

正直、もっと嫌がると思っていたので案外あっけなくてびっくりした。

こんなにすぐに履いてくれるのなら、と思い、市のオムツ支給制度に申し込むことにした。

はじめて市役所の高齢福祉課に行った。
母は元々障害があるので、障害福祉課にはよく行っていたが、54歳で高齢福祉課のお世話になるとは思っていなかった。

リハパンを履いている母を見ると、なんだか不思議な気分になった。
赤ちゃんや、もっと高齢の方が履いているのは別に普通なのに。
様々な事情で若くてもオムツを履いている人はいるのだろうけれど、自分の母親が昨日まで下着を履いていたのに今日からリハパンとなると、見慣れていないせいか、なんとも言えない気持ちになった。

おかげで、トイレットペーパーや尿漏れパットを洗濯する頻度は少し減った気がする。

あの洗濯・・・もとい、リハパン(オムツ)を履いてもらうという選択をしたことで、なんとなくこれから親も老いていくのだなという覚悟みたいなものが生まれた。

誰しも、老いには逆らえない。
母もつらいだろうし、一緒に暮らす私だってつらい。でもいつかは自分も老いる。

その都度、その都度、より良い選択をしながら受け入れていくしかないのだろう。

#あの選択をしたから

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