久しぶりに毎週ワクワクして観れた作品。『コードギアス 奪還のロゼ』の良かった所【2024夏アニメ】
20代後半のおっちゃんともなるとね、なかなか毎週アニメを観るってのが出来ないわけですよ。
アニメ観れないほど時間無いとかじゃなくて、新しい作品に興味を持ちにくい。更に、週に1回アニメを20分観るって事へのモチベーションが持続しにくい。同年代ならわかるんじゃないかな、このキモチ。
しかし、『奪還のロゼ』は久しぶりに1クール完走が出来た作品になった。2年振りくらいの完走かな。それも、毎週展開にワクワクしながら観れた。アニメにこういう感想を抱ける事はもうなかなか無い。
なので、他の夏アニメより一足先に完結したし、作品を観始めたキッカケと、全話観て良かった所について感想を書いていきたいと思います。
初見で視聴して驚いたほうが良い部分もいっぱいあるんだけど、全編ネタバレあり。
1.まず、出合い 2020〜2024年
原典となる『コードギアス 反逆のルルーシュ』は全話観てたので、今作との出合いは早かった。
2019年初頭の『復活のルルーシュ』でまたギアス熱があったまった後、2020年末の「コードギアス新プロジェクト発表会」で、『コードギアス 奪還のゼット』として一番最初に今作が発表されたのを見てました。
まあこの時は、ギアスの外伝アニメといえば『亡国のアキト』がたいしておもんなかった印象がすべてだったんで、別に何も期待してなかったんですけど。なんかガンダムのパクリみたいなマスク仮面もいるし。
で、そのあと同時発表だったギアスのソシャゲ『ギアジェネ』が2021年にサービス開始し、翌2022年にはギアスのソシャゲ第2弾の『ロススト』もスタート。
まあギアジェネは、ロスストにバトンを渡す形でとっととサービス終了したんですけど。でもロスストのほうはまあまあ評判が良く、盛り上がってる感じがあったんで、自分もそれなりにギアスの新しい動きは意識してました。
と思ってたら、いつの間にか今作のタイトルが『奪還のロゼ』に変更されてたんですけど。ゼロを反対にしてロゼ……ってコト!?(結局ロゼってどういう意味だったの?)
そして『奪還のロゼ』の映画公開時期が2024年5〜8月の4ヶ月間と決まり、その宣伝として『反逆のルルーシュ』の毎日1話ずつの無料配信がYouTubeでスタート。
自分はこれを割としっかり観てました。ギアスって本当面白いからまた観ても面白いんですよ。2回以上観て面白い作品ってなかなか無いっすよ。
で、その動画配信の中で『奪還のロゼ』のCMを嫌っちゅうほど挟んでくるから、どうしても印象には残る。まあそれ自体は良い印象じゃなかったけど、新作との出合いを拒否してたら観れるモン無いし観てみるか、ってな気持ちで今作の視聴を考え始めました。
とはいえ、その時点ではまだ「男キャラ2人でW主人公とか、ガッツリ女性向けなんじゃないの? 男が観て面白いんかこれ?」とか思ってましたが。
ともかく、そんなこんなで、『奪還のロゼ』1話視聴まで漕ぎ着けたわけです。
2.第1話のギアス感!
「皇サクヤが命じる! あなたがこれまで殺めてきた、その100倍の日本人を救うと誓うのならば、生き延びる。でも断れば、死ぬ!」
第1話終盤のシーン。絶対遵守のギアスじゃねーーーか!!?
いや、これだよ、これこれ! これだよ『ギアス』に求めてたモノは!!
このシーンまで第1話は漠然と観てたんですけど、ここでグッと引き込まれましたね。他者に一度だけ強制的な命令を下せる能力。そうだよ、こういうのをギアスに求めてたんだよ!
今までのギアスの外伝作品って、どうしても「ギアスらしさ」が足りなかった。じゃあ「ギアスらしさ」って一体何なの? やっぱルルーシュがいないとギアス成立しないんじゃないの?
それに対する、今回のアンサーが「ルルーシュと同じ絶対遵守のギアスを使える主人公」ってワケですね。
でも命令の内容がちょっとヌルくて長い所は、女主人公らしさというか、明確にルルーシュほどの外道ではない。そこは差別点というか、最後まで観ても意識している点と感じました。
そして、W主人公の片割れ・金髪赤メッシュの男「ロゼ」は、実はこの皇サクヤちゃんが男装した姿でした。まさかの女キャラと男キャラのバディもの。これは予想を良い意味で裏切ってくれた。
それに第1話の前半のガソリンスタンドのシーンをよく観てみると、ロゼが絶対遵守のギアスを使っていると思わしき伏線もある。なかなか細かい。ともかく、この第1話の展開がなかなか良くて、『奪還のロゼ』という作品にグッと引き込まれましたね。まずここが良かった。
3.ナイトメアフレームの陸戦がカッコいい
コードギアスの世界ではガンダムみたいな戦闘用人型ロボの事を「ナイトメアフレーム」といいます。「KMF」とよく略される。"Knight Mare Frame"だからKMF。
で、自分はそういうのが出るロボアニメが特別好きなワケではないんですけど、そんな素人目線から見ても、『奪還のロゼ』のKMF同士のバトル描写は結構カッコ良かった。
複数のKMF同士が地に足つけて力強くドンパチやったり、跳んだり跳ねたりする緩急のついたバトル。自分としてはこういう陸戦のロボット描写が好きです。これが空飛び出したり宇宙行ったりするとイマイチ。
『反逆のルルーシュ』の手描きのロボットとは違って、『奪還のロゼ』は3DCGによるロボット作画なんですけど、こういうのも全体的にリッチな質感で結構良い。
特にこの、今作のストーリー中盤から出てくる味方陣営のエース機「蛍雪」。これがお気に入りの機体ですね。
黒を基調としてアクセントに金色を入れているカラーリングや、主武装である身の丈以上もある長槍をビュンビュン振り回すのもカッコ良いし、脚部分が長めのデザインなのも色っぽい。
第5話で活躍する蛍雪の姿は必見ですよ。これは是非動いてる所を見てほしいですね。まー12話全体通したらあんま出番無いんですけど。
『反逆のルルーシュ』1期や、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』もなんですけど、陸戦のロボットバトルが良いんですよね。特にナリタ攻防戦のランスロットVS紅蓮とか。
4.毎週1話ずつしっかり楽しませてくれるストーリー構成
そして肝心要の、今作のストーリーの良かった所についてですよ。ストーリーの面白さの分析は難しいので、構成と設定の二つに分けて考えてみたいと思います。まずは構成から。
なぜ今回のストーリーを毎週飽きずに観れたのか? それは、序盤の1話ずつの起承転結がしっかりしてる事と、毎回次の展開への引きを怠っていない、という構成が要因だと思います。
例えば第1話は、最初の敵であるカークウェイン兄弟との戦いを始まりから決着まで描き切り、その後ロゼの正体を明かしてから、次の目的を示して期待感を持たせつつ締め。
第2話はアバシリ強制収容所への侵入から作戦終了までを描き、主人公であるロゼとアッシュの本当の関係を明かして、関係の波乱を予感させつつ締め。
第3話は箸休め回なんですけど、それも含めて世界観を十分に伝え切って、続く第4〜6話は「天空要塞ダモクレス」と「フレイヤ」を巡る攻防を3話でピシッと描き切り、第7〜9話はアッシュの過去やロゼとの関係の破綻を巡る話。で、第10~12話が最終章。
つまり、序盤は1話完結の短い話で楽しませつつ、強く興味を惹く引きで次回に誘導。それを繰り返して場が暖まってきた所で、長めの中編に突入……。
という、段階を踏んで作品世界に感情移入していける丁寧なストーリー構成が、今作を毎週飽きずに楽しめた理由の一つと感じました。
これは自分の感じ方なんですけど、毎週しっかり楽しませてくれる、引きがしっかりしてる、ってのが毎週アニメを1話ずつ観続ける上ではめちゃくちゃ重要で。
第1話がピンと来ないとか、次の展開が気にならないとか、2~3話連続で期待外れな回が続いたりすると、なかなか視聴継続は難しいんですよね。
その点『奪還のロゼ』は、上述のストーリー構成の工夫が成功していて、そのおかげで毎週ワクワクして観れた作品になっていたと思いました。
5.新作として『ギアス』の設定に頼り過ぎず、かつ『ギアスの続編』でもあるバランス
そして、ストーリーの設定について。実は今作って、『コードギアスの続編』なのに過去作キャラの出番があんまり無いんですよね。
もちろん『ギアスの続編』らしく、「絶対遵守のギアス」や「天空要塞ダモクレス」といった過去作要素はそれなりに出てくる。
でも今作のメインストーリーは、過去作キャラたちは大きく関わらず、本作から登場する新キャラクターたちが話を進めていきます。
さっきも書いた通り、正直観始める前は「結局『亡国のアキト』みたいにまたがっつりルルーシュ出してくるんじゃないの?」「逆にそれやらないなら面白く出来ないんじゃない?」とか思ってました。正直ね。
でも実際の内容はそうじゃなくて、「絶対遵守のギアスを持つ主人公」という要素だけ拾って話を広げたり、かつてとは別のシチュエーションで「天空要塞ダモクレス」と戦ったり、といったストーリー設定の工夫がなされていました。
それにより、「『ギアス』でないが『ギアス』である」という描き方がなされていたように思います。
今作のそういった工夫は他の箇所にも見られます。例えば、再び日本人がブリタニアに虐げられている世界観。そこからの下剋上展開。
はぁ~またイレヴン迫害されてんのかい! 伝統芸能か? とかまあ思わなくもないんだけど。でも、「何も無い所からの挑戦」が『反逆のルルーシュ』の面白さでもあったので、そこはまさに「『ギアス』らしいストーリー」の外せない要素として、本作にも持ってきたんじゃないかと。
また、W主人公であるロゼとアッシュの関係。ロゼは「男である」とアッシュに偽っているのに、日常で「女のサクヤ」として行動している時にアッシュと出会ってしまって、正体を隠し通さないといけなくなる、という日常パートのストーリーがあったりする。
これあれだよね、『反逆のルルーシュ』前半のルルーシュとスザクの関係。ルルーシュは親友であるスザクに隠し事がある、というオマージュ。しかも今回は男女主人公でそれをやるから、独特なドキマギもあったりして。
とはいえ、『コードギアス』なんだからルルーシュやスザクやカレンに活躍してほしい! ってのもわかる。だって『ギアス』だし。
でも、今作は新キャラ中心でも、しっかり『ギアス』として面白かった。それでも色んな所に『ギアス』を感じた。それを自分は、今作の良かった所として数えています。
まあ後半になると過去作キャラも結構出てくるんですけどね。主要な所でいうと、コーネリアに神楽耶にジノ。更には、『亡国のアキト』や『双貌のオズ』の面々、比較的最近の『黒のアルビオン』のキャラまで。
これは知ってる作品が多ければ多いほど嬉しいですね。まあそれでも、あくまでもファンサービスで本筋には絡んでこない、って感じです。
6.好きなキャラクター!
最後は素直にコレ行っときましょう。好きなキャラクターについて。
結局ね、主人公を好きになれれば作品を観続けるのに苦労なんて無いんスよ。まさに『反逆のルルーシュ』なんてルルーシュが面白い事するのが魅力のアニメじゃん。そしてサブキャラクターも好きになれればなお良し。
①ロゼ/皇サクヤ
そういう意味では、『奪還のロゼ』では主人公の皇サクヤが好きになれたのは良かった。格好いい女主人公は好きですとも。
男装して敵に立ち向かう凛々しい所あり、日常では女の子らしい所もあり、主人公なので容赦なく心身ともにボコボコに打ちのめされる所もあり。あと主人公なのに露骨にお色気要員。
とはいえ、主人公らしく感情の起伏がしっかり描かれている所が一番良かった。『奪還のロゼ』は、しっかり「主人公サクヤの物語」といえる内容だった。
②アッシュ・フェニックス
もう一人の主人公であるアッシュも回を追うごとに好きになっていって良かった。すましたイケメンかと思いきや、猫や犬好きだったり、ラズベリーさんに一目惚れとかする、可愛いヤツ……。
あと過去が明かされてみると、ビックリするほどの100%被害者で何も悪い事してなくてこの境遇なのは不憫でならない。
そんなサクヤとアッシュ、主人公二人の正体を隠した上での日常ラブコメパートは、割と今作の隠れた見どころ。シリアスな主題歌をバックに繰り出されるこのラブコメ編PV面白い。
③クリストフ・シザーマン
敵方では、悪の側近ポジションのクリストフも良かった。飄々とした態度で、明らかに悪人って感じの言動ながら、ストーリー後半にはアッシュの越えるべき壁となってナイトメアにも乗って大活躍。
とはいえ、悪役なので最終的には主人公勢力にやられてしまう。しかし、その自分の負けが決定的になる瞬間に取った行動が、とても印象に残った。終始悪人ではあるが、彼なりの譲れないプライドを貫き通した生き様は、今作でも屈指の良いキャラ描写だったと思う。
④カリス・アル・ブリタニア
あんまり出番は無いんだけど、少年皇帝の第100代皇帝カリス・アル・ブリタニアくんも可愛くて好き。女性声優(重要)。
『反逆のルルーシュ』の時に首都ペンドラゴンにフレイヤ落とされてブリタニア皇族はほぼ全滅してたはずだけど、血縁の田舎貴族でも引っ張ってきたのかな?
でも、出てきた回でいきなり殺されるんだよね……。また何も悪い事してない人が酷い目に遭ってるよ。この作品、全体的にビックリするほど男キャラに厳しいけど、子供にも容赦ないのはさすがに引くて。
⑤坂井ミナト
あと、現在の黒の騎士団から支援要員として中盤に合流してくる、女軍人の坂井ミナトも好き。
いや境港って、どやねんそのネーミングは……。でもどんな場面でも表情変えずに軍人然としてキリッとしてる所がカッコいい。私服も良い。
けど、ストーリー上での見せ場は特に無い上に、黒の騎士団の上官には「あいつは真面目すぎるからロゼの正体教えると挙動不審になりそうだし、あえて教えないほうが賢明(意訳)」とか判断されてるのが、なんとも不憫萌え。
⑥ロキ
あとこれは人間キャラじゃなくて、どっちかというとナイトメアフレームなんだけど、終盤にたくさん出てくる人間お掃除ロボ「ロキ」。
人間お掃除ロボってどういう事なのかと言われればまあそういう事なんだけど、既存のナイトメアと比べると明らかにデザインが異質で、丸っこいフォルムがちょっと可愛い気もする。劇中での活躍は全然可愛くないけど。
7.終わりに
というのが本作『奪還のロゼ』を全12話観て、良かったと思った所でした。
いやー、久しぶりに1クール楽しめたアニメに出合えて良かった。多少頑張ってでも色々観てみるもんですわ。
それと他には、劇中の要所要所で流れてた勇壮なBGMもお気に入り。第4話のダモクレス発進のシーンとかのやつ。テンションの上がる曲調で印象に残った。
まあ今回は、『奪還のロゼ』のこと褒めちぎったけど、じゃあ全然不満が無い作品なのかと言われれば別にそんな事はなく、ロゼの声優は全部女性で通してほしかったとか、敵がバンバン死ぬ代わりに味方も自爆特攻やりすぎだろとか、第10~12話の若干失速感、エピローグが気持ち程度すぎるとか、北海道舞台の割に北海道要素ほとんど無くない? とか、まあ文句も結構あるんだけど。
とはいえ、楽しめた作品の事あんまり悪く言いたくないので、このあたりで。
あとこの映画版の最終幕公開記念イラスト好き。たぶん第3幕終了(第9話)時点でまだ生きてるキャラが集まってる。まあ約1名なんか頭にワッカ浮いてる気がしますケド。
もしこの記事を読んで、ポジティブな感想があったらコメントよろしくお願いします。全然サラっと書けたわけじゃなくて、結構内容吟味しながら書いたのでね。こんなキチっと作品分析した文章書く事なかなか無いので。
え? そもそも映画公開&独占配信の間口狭すぎコンボ決めてるから観てる奴が少なすぎる? そーゆーのナシ! 売り方の問題だよ売り方の。
ではでは!