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読書感想文 柚月裕子 臨床真理

 デビュー作がこれだったのか

 最近はまっている柚月裕子作品。孤狼の血のような悪徳警察小説でない作品では、事件の設定が理不尽かつ重厚で読み出しはヘビーに感じる。今回は知的障害者が関与するので、意思疎通ができるかという点がポイントになる。ここに発言の真偽が色に見えるという特殊能力を持ってきたのは、超能力という非現実のように見える行動も障害者と組み合わせることで常識を超えた存在という共通点を見いだすことが出来、読者に無意識のうちに無理なく受け入れられるように環境を整えている。本作の面白みのベースがこの設定にあるのではないかと考える。最後に少しひっくり返る展開があったり、ミステリーとしての面白さはデビュー作からすでに確立されていたらしい。
 ひとつ気になったのは、主人公の女性が二度の性被害にあってもめげずにケロッとしていること。恐怖を引きづって多少なりともトラウマにはならないのだろうか。自らの身に起こったら、と思うとゾッとしてしまう。事件後の描写にもうひとつ現実味が欲しかったかなぁ、と思う。
 柚月作品のヘビーな展開を二作読んだので、次に選ぶ時は内容をチラ見して吟味しようと思う。けど、まだ私の中の柚月ブームは続くと思う。

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