旅の同伴者

アタッチメントから突然話が飛んでしまうけれど、ゲド戦記は1巻が好きだ。というか、まだ1巻しか読んでいない(汗)。比較もせずに言うのは変だけれど、そのくらい私にとってはインパクトがある作品だ。1巻は「影との戦い」。若き日のゲドが自分の影と対峙するストーリーだ。以下はネタバレになるので、まだ読んでいない人は飛ばしてください。




1巻で重要な役割を果たすのがゲドの友人、カラスノエンドウだ。彼について少し書いておきたい。
ゲド戦記の世界では、魔法使いが「真(まこと)の名」を知ることで対象を支配し操ることができるとされている。だからみんな真の名を知られてはいけないのだ。カラスノエンドウも当然通り名。ゲドの通り名はハイタカだ。
ゲドは自分の力を見誤った結果、重大な事件を起こしてしまい、本人も大きな傷を背負うことになる。すべてを喪失しているゲドに、カラスノエンドウは自分の「真の名」を教える。ゲドがそれを求めたわけではない。カラスノエンドウがおもむろに真の名をゲドに伝える。そしてゲドもまた、カラスノエンドウに自分の真の名を伝える。
クライマックスで、影との対決の場所までゲドを送り届けるもカラスノエンドウだ。もしゲドが影に飲み込まれてしまったら、そのときは自分が影もろともゲドを殺すと覚悟している。

カラスノエンドウは、いつも苦難のゲドのそばであたたかい光を発している。絶えずゲドと関わり続け、彼に自分を捧げている。自己犠牲ではなく、カラスノエンドウ自身の意志でそれを選んでいる。影との戦いはゲドが一人で行うしかない。しかし、ゲドはカラスノエンドウの存在なしには影と対峙することはできなかったと思う。

アタッチメントの問題を考える時、認知のくせがある以上、ひとりでは限界があるだろうなと感じていた。なので、カウンセリングの力をかりることを最初からイメージしていた。カウンセリングを受けなくても、日常生活の変化などで克服できる方もたくさんいらっしゃると思う。これはあくまで私の考え方、私の体験であることを先にお伝えしておきたい。

これまでも自分を知るためのカウンセリングを5年ほど受けていて、それによる大きな効果、深まりを感じていたから、カウンセリングを受けることにはまったく抵抗がなかった。カウンセリングの時間は、私にとって心のメンテナンスのような大切な時間だった。しかし一方で、アタッチメントの課題感についてはなぜかうまく言い出せない感じがあった。先生が男性だったことや、日常のありとあらゆる話を聞いてもらっていたので、関係が深くなりすぎてしまって言い出しにくくなってしまったのかもしれない。
そこで先生にアタッチメントに取り組むために、別なアプローチで別な先生のカウンセリングを受けたいことを申し出た。先生は快く了承してくれて「またいつでも連絡してくださいね」と言ってくださった。先生は私の選択を尊重して、あたたかく送り出してくれた。先生との関係性が確かなものだったと実感できて嬉しかった。私は先生からやさしさを受け取った。


アタッチメントに特化したカウンセリングを探していく過程で知ったのが「AEDP(加速化体験力動療法)」というアプローチだ。

AEDP心理療法は、患者の心理的な苦しみを軽減するアプローチで、トラウマに関連する圧倒的な感情を処理する方法を患者に助けることで、脳の変化を促す修正的な感情的・関係的な体験を促進します。

危機や苦しみは、それ以外の状況では眠っていたかもしれない、非凡な能力を目覚めさせる機会にもなり得ます。AEDPモデルは、これらの機会を最大限に活用し、トラウマのプロセスと癒しの変容を体験的に行うことを目指しています。AEDPの治療行動の鍵は、孤独感の解消であり、その結果、治療的な関係が安全な避難所と安定基地として体験され、変容的な癒しが起こることが可能となります。孤独感の解消と困難な感情的・関係的な体験の深いプロセシングを通じて、AEDPの臨床家はクライエントに新しい癒し体験を引き出し、それとともにリソース、回復力、新たな人生へのパッションを呼び覚まします。

AEDP™for JAPAN

AEDPをおもしろいなと感じたのには理由がある。トラウマ治療は「過去と向き合わなくてはいけない」と聞く。そこにはいつも苦しみ、痛みだけが漂っているような気がする。たしかに、自分を守っている壁を超えて本当の気持に触れていくのには勇気がいると思う。
でも本当にそれだけだろうか?少なくとも私は、この取り組みにもっとポジティブでパワフルなものを感じていた。まだ出会っていない自分に出会う感じ。人生からなにかメッセージが送られてきているような気がしていた。それを受け取って、私なりに応えていかないとつまらないじゃないか、という気持ちが強かった。

「カウンセラーも自分を賭けていかなければ、治療にならない」というような一文を河合隼雄さんの本で読んだことがあるけれど、AEDPのアプローチにはそういった要素を重要視しているような印象があった。カウンセラーの積極的な自己開示を大切にする。おそらくだけど、ほかのアプローチよりも親密なのだと思う。馴れ合いではなく、それがアタッチメントの課題を抱えたクライアントの治療のために必要なことだという考えなのだろうと思う(主観なので違っていたらごめんなさい)。

このアプローチの効果を私は初回から体験することになるのだが、
それはまた後日記したいと思う。

AEDPは、ニューヨーク初の比較的新しいアプローチとのことで、日本でもトレーニング中の方がいることを知った。
HPのリストを見てさっそくカウンセリングを依頼した。私のカウンセリングを引き受けてくれたのは、ゆかりさん(仮名)。さまざまなアプローチを複合的に学んでカウンセリングに活かされているとのことだった。

ゆかりさんは、私のアタッチメントの旅の同伴者であり、私にとってのカラスノエンドウだ。
自分がゲドになった気分で、影との戦いにいどむ(おおげさだなー)!


※カウンセラーのことをセラピストとも言うようですが、カウンセラーで統一しました。

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