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映画「M:I:III 」2006年アメリカ 


トム・クルーズ主演の人気スパイアクション映画シリーズの3作目です。

本作で監督に指名されたのは、J・J・エイブラムス。
この人は、後に「スタートレック」や「スター・ウォーズ」シリーズの8作目9作目の監督を務めてビックネームになっていく人です。
しかし、このときはまだ、監督作品はありません。本作が彼にとって映画監督デビュー作です

この人が監督したテレビシリーズのスパイ・ドラマを、トム・クルーズが気にいって、本作の監督に抜擢したとのこと。
ですから彼は、プロデューサーとして、監督の力量を見極める目は持っていたということでしょう。

前作から6年経っていますので、トム・クルーズはこの時44歳です。
しかし、彼の体を張ったアクションは、パワーダウンすることなく、さらにエスカレート。
ビルジャンプあり、全力疾走あり、一作目で見せた着地ギリギリ水平ストップありと、とても40代とは思えないアクションを披露しています。

個人的には、1作目と2作目で感じていた消化不良のモヤモヤを、今回は完全に払拭してくれたと言う点で、かなり好きな作品となりました。
オリジナルドラマをベースにした、トム・クルーズによる新しい「ミッション・インポッシブル」が、いよいよ完成したなと言う感想です。

前作で残ったフラストレーションは、スパイの恋愛問題でしたが、本作ではなるほど、この手があったかと言う上手な設定になっていました。
諜報活動の現場を退いた、イーサン・ハントは、教官として後輩たちの指導に当たっています。
そして、その身分を隠して、看護師のジュリア・ミード(ミシェル・モナハン)と付き合い、婚約し、幸せな生活を送っています。
その彼女がブラックマーケットの商人オーウェン・ディビアンに拉致され、イーサンさんがそれを仲間と共に救いに行くと言うのが本作ストーリーの骨子。
それだけではスパイ映画として成立しませんので、映画的マクガフィンとして、ラビットフットと言う極秘データが登場しますが、その中身は最後まで明かされません。
愛する人が彼の身分を知らない一般人と言うことであれば、スパイが恋愛をしても不自然ではないわけです。
古今東西、一度スパイになれば、自分の素性は家族にも明かさないと言う誓約書を書かされるものです。
自分の素性のせいで事件に巻き込まれてしまった妻を、命がけで救いに行くと言う展開には説得力があります。

脚本も上手でした。
まず、アバンタイトルでは、いきなりストーリー上のクライマックスシーンを見せてしまいます。
ディビアンに拳銃を突きつけられたジュリアの前に、椅子に縛りつけられたイーサンが座っています。
そして、始まるテンカウント。それでバンです。
必死に、カウントを止めようとするイーサンですが、ついに・・・というところでお馴染みのラロ・シフリンのテーマ曲。

こういう展開になることを、予め観客に知らせた上で、映画はスタートします。
まず、最初のミッションは、教官だったイーサンの教え子救出作戦。
集められたチームは、前ニ作でもお馴染みの天才ハッカーのルーサー。
そして、デクラン・ゴームリーと、紅一点は、武器のスペシャリストのゼーン・リー。
ゼーンを演じるのはエキゾチックなアジア系美女のマギー・Q。
前作のヒロインは黒人系でしたが、今回はアジア系。
プロデューサーとしてのトム・クルーズは、世界マーケット意識したキャスティングに抜かりはないと言うところでしょう。
本作において彼女には色恋エピソードはなく、組織のエージェントに徹していてなかなかクールでした。


イーサンの愛弟子リーガンを演じたのはケリー・ラッセル。
彼女はスパイ活動が敵に知るところとなり、拘束監禁され、頭の中に時限爆弾を埋め込まれてしまいます。
イーサン・チームは、リーガンの救出には成功しましたが、時限爆弾は作動。
イーサンは、AEDによる電気ショックで、時限爆弾をショートさせようとしますが、充電が間一髪間に合わず、爆弾は炸裂してしまいます。
脳内爆発を伝える映像イフェクトはドッカーンではなくリーガンの左目。これは妙にリアルでドキリとさせられました。

そんなわけで、今回はストーリー展開とアクションシーンが見事に噛み合っていて、最後まで感情移入させられました。

というわけでアクション・シーンです。



まず今回ぶっ飛んだのは、バチカンで捉えたディビアンを護送中の橋の上で、彼を救出に来た敵の武装集団に急襲されるシーン。
銃撃戦になるのですが、背後の爆発の爆風で吹き飛ばされたイーサンが、そのまま真横の車に叩きつけられます。
その直後、上空の至近距離を爆撃機がかすめ飛んでいくというシーン。
これには思わず声が出てしまいましたね。
これをいったいどうやって撮影するんだと思って、メイキング映像を探してみました。
イーサンがジャンプした瞬間、真横からスタッフがくくりつけたロープ(ゴム?)をいっせいのせいで引っ張っていましたね。
もちろんこのロープは、後にCG処理で消しています。
爆発のタイミングと、爆撃機を飛ばすタイミング、そしてロープを引っ張るタイミング。
どれかがゼロコンマ何秒狂っただけであのシーンは成立していないと考えるとシビれるシーンでした。

この場面では、破壊された橋の崩れた部分をジャンプして、下の川に落ちそうになるシーンもありますが、これもトムが自分で演じてますね。
ジャンプといえば、上海での夜のビル・ジャンプがありました。
これも、とび降りる瞬間は編集なしのワンカットで撮影しているので、彼が実際にジャンプしてますね。
敵のアジトに潜入するのに、どうしてわざわざ危険なビル・ジャンプなのかは疑問も残りますが、ストーリーよりも先にまずこのアクションシーンの企画があるのがこのシリーズの常。
そこはあまり突っ込まないことにいたします。
ジャンプするビルが見える窓ガラスに、何やらイーサンが数式を書き込んで計算しているのもとてもリアルでした。
お宝をゲットした後は、パラシュート降下になるわけですが、道路に着地したイーサンの上を、横滑りしてきた大型ローリー車が通過していくなんていうシーンもありました。
これをスタントマンが演じるのであれば、表情まで作る必要はありません。
スタントに集中すればいいわけで、主役の表情は別撮影にすればいいわけです。
でもこれをトム・クルーズは役者として、イーサン・ハントを演じながらこなすわけですから考えてみれば凄い話です。
このシーンは、ラストでのディビアンとのタイマン・ファイトの伏線にもなっていました。



ジャンプだけではありません。
上海では、イーサン・ハントはとにかく走りますね。
それも全力疾走です。
44歳の彼が、愛する妻を救うために、大きく腕を振り、高く腿をあげて走る姿は感動的ですらあります。
この上海タウン疾走を、ナビでサポートしているのが、以降の作品でレギュラーとなるベンジーです。演じているのはサイモン・ペグ。


アクション・シーンではありませんが、興味深いシーンがありました。
チームがバチカンに乗り込んで、ディビアンを拉致し、ラビットフットをゲットするシークエンスに登場します。
ここで、イーサンは、ディビアンになりすますわけですが、その変装用のマスクを作るまでの過程が本作では綿密に描かれます。
ゼーンがオークション会場で盗撮したディビアンの画像をルーサーに転送し、彼がその画像データをPCに取り込み、3D加工していくんですね。
そして、捉えたディビアンに用意した文書を読ませ、ボイスデータも獲得します。
この稀代の悪党が、用意したテキストを素直に読むかよとも思いましたが、シリーズに度々登場する変装用マスクの生成過程をリアルに描いてくれたのは個人的にはポイントアップです。

前作では、出番こそ少なかったものの、名優アンソニー・ホプキンスがIMFの上司を演じていましたが、今回局長を演じたのはローレンス・フィッシュバーン。
さて、彼の正体は・・・

映画のレビューを書くときは、これを読んで、映画が観たくなればしてやったりというつもりで書いています。
ネタバレにはそれなりに気を使ってはいますが、アクション映画の魅力は、とうてい文章で伝えきれるものではありません。
結局言いたいことはひとつだけ。

是非ご覧あれ。

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