2月26日のにっき
バナナもぎりのバイトを紹介されたので行ってみた。
バナナもぎりと聞いて、普通はバナナの木からガシガシとバナナの房をもぎる肉体労働を想像するだろうけど、実際は全く違った。
大宮駅に8:00集合、朝辛い。マイクロバスが乗車してバイト先に向かう。
私以外に70代ぐらいのおばあちゃんが二人いた。
1人は身長が175cmぐらいあって信じられないくらい高身長おばあちゃん、もう1人は145cmぐらいの低身長おばあちゃんで漫才師かと思った。この時点では肉体労働だと思っていたので、おばあちゃんでも出来ると知れて安心した。二人は知り合いらしく、隣同士で座っていた。
一時間弱、バスに揺られて、田舎の方まで来た。
私の地元も結構田舎だけど盆地で360度見渡す限り山に囲まれてる地域だ。360度どこを見ても山がない平野の田舎にテンションが上がる。
空が本当に広い。
目的地に到着したらしい。
看板は年季が入っていて斜めに建っている。
「さいたま 猿の森の里」
森なのか里なのか気になる。語感で命名したんだろうなって、その緩さが田舎っぽくていい。猿が住む森に散歩道を作り、生活圏を探索できるという、埼玉県民でも知る人ぞ知る観光地らしい。
猿の森の里で目玉スポットの「ふれあいコーナー」では猿に直接バナナをあげることができるらしい。
ただし、猿の森の里は知名度の低さから分かる通り予算がなく、バナナはお客さんが持参したものをあげるセルフサービススタイル。
欲望に忠実な猿たちは、お気に召さないバナナを渡されるとかなり不機嫌になるらしい。あげた人のTシャツを破ったり、職員の車の下に居続けたりしちゃうらしい。
猿が不機嫌にならないように、お客さんの持参したバナナが渡してもいいバナナか見分けるというのが今回のアルバイト、バナナもぎりの内容だった。
10時の開園からふれあいコーナーの入場口で待機し、お客さんが来るのを待つ。おばあちゃん二人は全然フレンドリーじゃなくて私に話しかけてくれない。「静かだな…」とちょっと大きめの独り言を言ってみたけれど、無視された。身長差おばあちゃんは熟年の漫才師が舞台袖で出番を待つように黙って立っていた。
11時頃お客さんがやってきた。
赤ちゃん連れの若い夫婦だ。お母さんが赤ちゃんを抱っこして、お父さんがバナナを抱っこしていた。
正直私はあんまりバナナが好きじゃない。年に1回食べるか食べないか。
そんな私がいいバナナかどうか判断できるか不安に思ってると、低身長おばあちゃんが
「食べてみりゃええの。まあ見とき」
と、ゆっくり家族の方へ近づいてお父さんが抱っこしていたバナナを奪い、房から一本もぎ取り、皮をむいて食べた。
若い夫婦は「あれ、この人が猿?」と言いたげな表情でおばあちゃんを見ていた。私も大体そんな感じだった。
赤ちゃんは真顔で低身長おばあちゃんを見ている。低身長おばあちゃんも赤ちゃんをガン見しながら真顔でもぐもぐ食べて、野性味が溢れてた。
おばあちゃんは一本減ったバナナの房をお客さんに返し、くいっと首を後ろに振る。高身長おばあちゃんがふれあいコーナーへのゲートを開けた。入場が許可された合図のようだ。
お客さんはふれあいコーナーへ入っていった。
遠くでかすかに猿の鳴き声が聞こえた。
低身長おばあちゃんは口の中のバナナをもぐもぐしながら、高身長おばあちゃんに「朝ごはん抜いてきたのよ」と言っていた。
結局その日は閉園まで誰も来なかったので、私はバナナもぎりを一本もできなかった。出来高制のバイトだったので給料が出なかった。
バスの乗車料に200円取られた。
ぜひ!!⬇️
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