「童夢」
第26回ヤングリーグ選手権大会広島支部予選。
野球文化大学の野球部教授でもある岡上和典氏が監督をつとめる「ユナイテッドグロウ広島」が勝ち上がった準決勝が千代田運動公園野球場であった。
カープ時代に名ショートでならした岡上さんが指導するチーム。守備は徹底的に鍛えられていて、練習では選手たちの基本に忠実なフィールデイングぶりは目にしてた。しかし実戦ではどんな動きをするのか、今まで見たことはなかったので楽しみにしていた。
やっと念願叶っての観戦。
1回裏にいきなり、そのUGの内野陣が魅せてくれた。
1アウトからピッチャーが不用意に四球を出して嫌な流れになったが、ここで3番バッターがセカンドにはじき返したゴロを、流れるようなリズムで4-6-3と転送してダブルプレイ。
さらに2回にはレフトに抜けようかという痛烈なライナーをショートが横っとびでキャッチするファインプレイだ。
UGは試合の主導権を守備で引っ張りこんだ。
4回にセーフティスクイズで2点先制した裏。1アウトから三遊間を抜くヒットで出たランナーを再び4-6-3のゲッツー網にかけてのダブルプレイ。
そして極めつけは、次の5回。いきなり先頭バッターにライト前に運ばれてノーアウト一塁の場面で、次打者のセンターに抜けたかと見えた強烈なゴロを二塁手が回り込んで好捕。そのまま封殺するという、菊池涼介ばりのスーパープレイをしでかしてくれた。
その二塁手、背番号を見ればなんとその菊池と同じく「33」。なんだか出来すぎた舞台設定に、つい吹きそうになってしまった。
その菊池の背番号「33」はといえば、同郷の先輩である江藤智選手のもの。その「33」はといえば衣笠さんの永久欠番「3」をぞろめで受け継いだものだ。
思わぬところでまた、衣笠さんのサインが目に飛び込んでくることになった。
結局、UGは最終回に勝ちを急いでミスを連発して初めて失点したものの、3対1で勝利。これで今週の土曜日に行われる決勝に駒を進めた。
その決勝の会場はズムスタだ。
もしその試合を観戦できれば、衣笠さんの追悼試合以来のことになる。
折に触れて「童夢」とサインされた衣笠さん。将来ある子どもたちの成長を何よりも喜んでいた彼の御霊とともに、またUGの活躍ぶりを見てみたいものだ。