FF16クリア後の感想(アート編)
皆さんクリスタルぶっ壊してますか?
今回はこの夏最もホット(PS5かつ国内かつRPGカテゴリにおいて)なゲーム、ファイナルファンタジー16について書いていきます。
支度ができたら出発しましょう。
はじめに
まずこのゲームの結論ですが、クリア段階で神ゲーとまではいかないまでも、充分に遊べる且つ「FFらしさ」を感じる良ゲーです。
少なくとも個人的には、ナンバリングタイトルとして恥じない出来だなと思っています。
また、FF13がそうであったように、敵の行動パターンが解析され、縛りプレイ等のやりこみが流行すれば更にひとつ上の評価ができる可能性は十分に期待できます。
なお、ここでは良ゲーだということはしっかり強調しておこうと思います。
と、いうのもこのゲーム全体的に及第点は超えているのですが、このゲームならではの個性というのがやや乏しく(無個性ではない)、細部の評価では不満のほうが目立つ(故に指摘しやすい)ようになっていると感じており、同様に記事の内容もそれが目立つのではないかと思うからです。
今回はこのあと「アート編(シナリオ/キャラクター/演出/グラフィック/音楽)」「システム編(戦闘/カスタマイズ/コンテンツ)」に分けてそれぞれ感想を述べていきますが、ここで述べた項目はいずれも前述の通り及第点を超えており、特に戦闘システムに於いては従来のアクション要素のあるFF(零式・FF15)とは一線を画す出来になっています。
15については公式からもARPGじゃなかったことにされつつありますが…
昨今はVチューバー等の配信者の影響もあり、ゲームのプレイ/実況動画をお手軽かつ大量に見ることができます。
そこで、実際にやってもないのにやったつもりになってゲームを評価・批判する人もいます。
そういった類の人は、えてしてこういう感想記事を読んだだけで自分が遊んだ気になって、やれシナリオがヌルいとか、キャラが地味とか、吉田が悪いとか言ってゲームを評価するかもしれません。
それを回避する意味でも、このゲームが良ゲーであり、ここに書かれていることの全ては私の個人の感想であるということを改めて強調しておきます。
アート編
物語の大筋
まずはシナリオの感想ですが、簡単に主人公の紹介と物語の流れを説明しておきます。
主人公:クライヴ・ロズフィールド
我らが主人公にしてロザリア皇国の第一皇子。火の召喚獣「イフリート」に顕現(変身のようなもの)できるドミナント(召喚獣の力を持つ人間のこと。国によるが人権がない)。
物語序盤は死んだ(と思っている)弟の仇討ちに燃える復讐鬼だが、「ラムウ」のドミナント「シド」に諭されて以降は彼の事業に加わり、そして受け継ぐこととなる。
他人と話すときと同じ音量で独り言を言う。
ものがたり:主人公クライヴのいる大陸ヴァリスゼアではクリスタルがインフラとして機能しており、人々はそのクリスタルを仲介することで魔法を使い、火を起こしたり水を出したり洗濯物を乾かしたりしています。
クリスタルは大地の「エーテル」をエネルギーとして魔法を発生させていますが、「エーテル」は有限であり、使いすぎると大地は枯れ、ぺんぺん草も生えない「黒の一帯」となってしまいます。
クライヴたちは、クリスタルの大元である5つの「マザークリスタル」が「黒の一帯」を拡大させている元凶であることを知り、世界を守るために「マザークリスタル」の破壊を目論むのでした。
以上が物語の芯となる部分ですが、ここに「復讐劇」「主人公の特殊な能力の秘密」「世界の創生」といった(ファンタジーRPGではド定番の)エッセンスが加わって肉付けされています。
中でも「ベアラー(クリスタルを用いずに魔法が使える人間。人権がない。)の人権獲得」は物語のもう一つの大筋となっており、「人が人として生きられる世界」という言葉はストーリーを通してクライヴの信念として語られています。
シナリオ★★★☆☆
さてシナリオの感想ですが、分岐もなく非常にシンプルに仕上がっています。RPGとしては普通すぎて、褒めるところがあまりありません。
裏を返せば、「世界を救う」だとか「主人公が特別な存在であり、秘密がある」だとか、あとはまあヒロインとの恋愛とかそういった「普通」たりえる定番要素は押さえてあるので教科書通りといったところだと思います。
主人公一味の活動について
ひとつ問題を挙げるとすれば、クライヴたちのやっていること、即ち「マザークリスタル」の破壊がどっからどう見てもテロ行為だというところでしょうか。
クリスタルは前述したようにこの世界のインフラであり、「マザークリスタル」はその大元です。
私たちの世界に置き換えれば、「石油を燃やしたら地球に良くないなぁ。せや!油田ぶっ壊したらもうそれ以上石油使えんくなるから地球も良くなるやろ!うおおおやるぞ~」という感じですので、かなりヤバいです。
でもってクライブたちもそれは自覚しており、ノリノリで「大悪党」を自称しています。ヤバい。
(なお、テロ活動を行っていても、それと並行して「ベアラーの保護」活動で信用を稼ぎまくるため支援者がどんどん集まってきます。麻薬カルテルが孤児院に寄付してるみたいな感じで味がありますね。)
暴力的な解決方法を選択した理由についても(発案者はシド)、「話してもわかってもらえないから」というイジけた女子高生みたいな感じなのでわりとドン引きします。
さりとてこれはARPG。ゲームの都合上、暴力はどんどん発生させなければなりません。
クリスタルの害を調査して論文にまとめ、政治家をたてて民衆の支持を獲得し、各国に働きかける…なんて回りくどくて理性的な解決方法では面白くないでしょう。
ここは登場人物の狂気に乗っかって暴力による赤き革命を起こすのが正解です。ヤバすぎる。
登場人物の行き当たりばったり行動
ところで演出とも被る要素なのですが、上記を読んでもらえばわかる通り基本的にこのゲームの登場人物は支度だの準備だの言う割にはかなり直情的に行動しています。
例えば、あるクエストでは「ベアラー(クリスタルを用いずに魔法が使える人間。人権がない。)」をきちんとした村から別の廃村に移住させるのですが、すっかり移住させてから「水は…」「食料は…」という問題が発生してしまいます。
それだけならまだしも、ラスボスですら「めっちゃ疲れたから寝てたらその間に自我を持っちゃいけない人間たちが自我持ち始めてた。起きてから気づいた(意訳)」といった調子です(これを堂々と恥ずかしげもなくクライヴたちに話します。愚痴聞いてほしかったんか?)。
まあそんなテロ行為や思い付き行動もゲームのシステム上戦闘が必要だからそうしていると思い込む昇華できれば問題ないでしょう。
個人的には、よくできた「普通」のシナリオということで5段階評価の3ということにしておきます。
シナリオ評価:★★★☆☆
キャラクター★★☆☆☆
キャラクターデザインは全体的によく言えばシブく、悪く言えばモブいです。
過去作で近いところを挙げればFF2でしょうか。
FF9のような魑魅魍魎パーティーにしろとまでは言いませんが、仮に「奇抜なデザインにしない」という目標があったとしても、FFTがあの世界観と人数でも主要人物を個性的に描き分けられていたことを考えるともうちょっとなんとかならなかったのかなと思います。
登場人物の性格も、世界観が北斗の拳状態なので大半の人物が仕上がってしまっており、ヒロインですら復讐殺人に燃えています(しかもちゃんとやり遂げる)。
ムードメーカー的な明るい人物は極端に少なく、下手したら主人公の連れている犬(狼)のトルガルがいちばんの癒しになっているかもしれません。
ただし、無個性というわけではなく、主人公をとりまくサブキャラクターの面々にもしっかりとバックボーンが用意されていて、サイドクエストでキャラクター毎のエピソードを楽しむことができます。
過去作と比較するとどうしても弱い部分がありますが、スルメ的な感じで楽しめるのかなと思います。
私は主人公の叔父さんが好きですね。FF5のガラフのような元気なおじいちゃんです。今作の真のヒロイン候補かもしれません。
あとはまあ、「北斗の拳イチゴ味」のターバンのガキくらいの頻度で主要人物とエンカウントする薬売りの少女とかコアな人物も好きなんですが皆さんにそんなことを言っても仕方がないのでプレイの機会があったら気にしてみてください。
評価としては、ゲームの登場人物としての印象付けをもっとやってほしかったということで5段階評価の2とします。
キャラクター評価:★★☆☆☆
演出★★★★☆
続いて演出です。これは明確に登場人物の思い付き行動がマイナス評価となります。
また、例えば海戦シーンで「敵国の旗艦(だけ)が出撃」みたいな妙な演出があるのも評価に影をさしますが、こういうのはまあ制作サイドも何も考えてなさそうなので文句を言うのもバカらしいです。
ある意味FF定番の厨二シーン
とりわけ最高に寒いのが、クライヴの厨二病発症シーンですね。
今どき中学生の自作小説でもやらないようなお手本通りの「うっ…頭が…!」をやってくれます。
大ピンチに突然現れる謎の頭痛!「ぐっ…こんなときに…!」自分でも抑えられない力が覚醒する!いったいおれはどうなってしまったんだ!いや今はそんなことはどうでもいい!まずは目の前の敵を倒さなければ!
これを複数回やります。勘弁してくれ。
そのほか厨二シーンとしては主人公の弟が会議の場で独り言をブツブツ言ってると思ったら「そういうことか…!」と一人で納得したりとか、イベントシーンで魔法をその名前を発しながら撃つ(技名を叫ぶみたいなもん)ところとかでしょうか。
後者については、「ファイジャ」とか「ハイパ」「バハムル」といった懐かしい名前の魔法があるのでファンサの面もあるのでしょう。だとしても意味不明ですが。
歴代最高クラスの迫力 召喚獣合戦
一方で最高評価を与えられるのが「召喚獣合戦」のシーンです。
クライヴたち「ドミナント」はそれぞれの召喚獣に顕現(変身のようなもの)することができ、プレイヤーはクライヴの召喚獣「イフリート」を操って「タイタン」や「バハムート」等と戦うことになります。
この戦闘シーンは本当に金を湯水のように使っているとしか思えないような、高品質の美麗かつ迫力ある演出の連続で大変見ごたえがあります。
過去のナンバリング作品をプレイしたことのある方の中には、PS期の召喚獣について、「ナイツオブラウンド」や「エデン」のような長い演出の召喚獣に魅力を感じた方もいると思いますが、今作の召喚獣合戦は正に「自分で動かせるムービー」といったレベルの出来であり、また、カットシーンの演出も特撮怪獣モノに劣らない激しさになっています。
そのほか、巷ではカットシーンが多いという不満評価がありますが、私個人としてはFF7~13で長いムービーがあると心が躍ったタイプですのでこれは好意的にとらえています。コーヒー飲む暇もできるし。
寒いストーリー演出と、問答無用で歴代最高クオリティの召喚獣合戦、長いカットシーンを総合して演出の評価とすると、後者2つの魅力が前者のマイナス評価を補って余りあるのでここでは5段階評価の4とします。
演出評価:★★★★☆
グラフィック★★★★☆
概ね普通です。
PS2までのFFといえば、ハードの性能をフルに活かした美麗グラフィックがウリとなっていました。
特にFF10の情報を雑誌で読んだときは、カットシーンで毛穴までしっかり表現されていることや、水の表現、フラタニティの造形に驚いたものです。
現代はどのメーカーもそれなりにグラフィックにはこだわっており、20年前のようなメーカー毎に明確な差が出ることは少なくなったと思います。
そういった背景もあり、今作は他社と比較しても可もなく不可もなくといった出来で、強いて言えば近年の「三国無双」シリーズに見られるような彩度が低くややのっぺりした感じに寄っているのが気になりました。
キャラクターデザインが地味であったり、世界観的に煌びやかなものが非常に少ないのでそうなっているのかもしれません。
但しグラフィックに関しても「召喚獣合戦」は別格です。というかグラフィックに関するリソース(資金)も殆ど召喚獣合戦に持っていかれているんじゃないでしょうか…
普通ではありますが及第点はクリアしており、「召喚獣合戦」というウリもあるということで、ここでは5段階評価の4としておきます。
グラフィック評価:★★★★☆
音楽★★☆☆☆
BGMとしては◎ 但し心に残らない
BGMとしての役割は充分に果たしていますが、印象に残る曲が少ないと感じます。
これについても昨今のゲーム事情というか背景が絡んでいると思うのですが、ハードの性能が高くなるにつれて、ゲームひとつに多くの楽曲を用いたり、長さが3~4分あるような曲を用いたりするようなことが多くなりました。
サウンドトラックとして生活の中で聴くぶんにはいいのですが、ゲームにおいては場面や行動に応じて目まぐるしくBGMが変わるのが普通です。
つまり、ループの間隔が短い曲と長い曲では圧倒的に印象の残り方が違います。
FFで多くの楽曲を担当した植松伸夫氏の曲は「ループ間隔を短くしたり、リフレインを多用して短時間のうちに同じメロディーを何度も聴かせる」ようにできていたと思います(ハードの性能の問題もかなり影響していると思いますが)。
FF13や「チョコボの不思議なダンジョン」、「サガフロンティア2」等の楽曲を手掛けた浜渦正志氏は、「ゲームごとに主題となるメロディーを決め、BGMの多くははそのメロディーを用いたアレンジにして多用する」といった工夫をしています。
(つまるところ植松氏は「ひとつの曲でメロディーをしつこく聴かせる」、浜渦氏は「複数の曲で同じメロディーを使う」といった違いがあると考えます。もちろんこの限りではないです。)
そういった、過去のスクエニ(スクウェア)作品の楽曲と比較しても、今作では主題を多用しているとは言い難く、全編通しても印象に残ったのは何度も聴くことになる戦闘曲とスタッフロールでも使われたやたらメロディックなフルートの曲(曲名不明)くらいでした。
ただフォローしておくと、個々の楽曲の質は大変良く、また前述の通り「BGMとしての役割は充分果たしている」と感じるので、印象に残らないというのはワガママな望みです。
戦闘の曲はいずれもとてもカッコよくできている(FF5のボス戦のメロディーを使ったり、FFおなじみのイントロをベースラインに使用したりしているのはいいファンサだと思いました)し、主題も使えているので、主題のアレンジを戦闘以外の場面にもしっかり散りばめていけばよくまとまったのになーという心持です。
一方でちょっとこれは…と思った曲が2つあります。
1つはFF1のフィールド曲のマイナーアレンジで、メロディーとコードがバチバチに喧嘩してて非常に気持ち悪いです。なんぞこれ。
ただ演出側はなんか気に入ってるっぽくてストーリーの重要な場面でかかったりします。これはセンスの違いでしょうか。
もうひとつは、これは曲というより演出の問題かもしれませんがEDの米津玄師です。
このゲーム、発売前からリップシンクが全くできていなくて気持ち悪いという声が多数あり、その回答としては「洋画の吹き替えをみていると思ってほしい(意訳)」といったものだったのですが、EDで突然米津玄師がガチの日本語で歌い始めるのでとんでもない違和感が襲い掛かってきます。
皆さん、洋画の吹き替えのEDで日本人の日本語の曲がかかったらどう思いますか?まあこれもセンスの問題かもしれませんが、私には合いませんでしたし、演出としても合ってないと思います。(米津玄師さんの批判をしているわけではありませんので注意)
なお、そのあとでなんか知らん曲も流れるのですがこちらは英語です。雰囲気もバッチリ合っています。これだけで良かったのでは…
トータルで考えると、やっぱり印象に残る曲が非常に少ないのと、演出面でも一部に違和感があるということでここでは5段階評価の2としておきます。
ちなみにですが、私の学生時代は吹奏楽部でした。
音楽評価:★★☆☆☆
アート編まとめ
何と言っても「召喚獣合戦」が見どころです。
アート面でいえば、教科書通りというか普通かそれに近い様子のゲームですが、召喚獣合戦のグラフィック・演出がズバ抜けているため、(良い意味で)尖った部分があるとも評価できます。
ここに関しては手放しで素晴らしいので、「普通ではあるが、無個性ではない」とも言えるでしょう。
総合的には5項目5段階評価で25点中の15点ということで、真ん中よりはやや上、全体を褒めることはできないが、良作の範囲であるといった感じに落ち着きました。
次回は「システム編」ということで、戦闘、カスタマイズ、コンテンツの感想を書いていきます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。