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サウスロンドンは21世紀のアシッド・ジャズと言ってもいいかも
昨年末に記事にしたとき、「今の自分の気分には合わなかった」と書いたサウスロンドンだけど、実はその後も継続して挑戦していたりする。
はじめはイマイチだと思ってたんだけど、色々と聴いていったら段々とくせになってきたんだよね。こういう風に最初は苦手と思ってた曲でも、いつの間にか聴けるようになったりすることがあるから面白い。
そういえばロバート・グラスパーだって最初はあんまり好みじゃなかったけれど、いつの間にか普通に聴けるようになったしさ。昔誰か有名DJの人も言ってた気がするけれど、こういうことって意外とよくあるんだよね。
ヌバイア・ガルシアとテンダーロニアス
今回このあたりの曲を聴けるようになったきっかけは自分のなかではっきりしてて、ヌバイア・ガルシアのカッコよさとテンダーロニアスの音楽性の広さに感銘を受けたから。
ヌバイア・ガルシアは1991年生まれの女性サキソフォニスト。肺活量の問題なのか女の人でサックス吹く人って聞いたことなかったけれど、この人はビジュアル含めかなりかっこいい。巷で女性版カマシ・ワシントンなんて言われるのも納得の、コルトレーン~ファロア・サンダーズ直系スタイル。
それでいてファッションはおそらくローリン・ヒルズやエリカ・バドゥに影響を受けたと思われるアフロな雰囲気。知らない人も↓のホームコンサート動画なんかを見たらカッコよさは伝わるはず。
ちなみにこの動画で言うとキーボードを弾いてるジョー・アーモン・ジョーンズも注目株で、自身で作品を出しつつ客演も多いんだけど、この人が絡むとどの曲もまず外れがない。レコジャケがレトロフューチャー感あってかっこいいのポイント高め。
もう一人、注目しているのが22aというレーベルのリーダーを務めるテンダーロニアス。この人はもともとフルート&サックス奏者なんだけど、同時にシンセサイザーおたくでトラック制作も行うという少し変わったミュージシャンみたいだ。
キーボーディストがシンセを弾くパターンはわりと普通だけど、管楽器奏者でクラブミュージックの素養もあってシンセを扱うっていうパターンは珍しい気がする。昔サックス奏者のネイサン・ヘインズがDJのフィル・アッシャーと組んで西ロンドン系ジャズのアルバムを出して話題になったことがあるけれど、言ってみればそのタッグを一人で完結してしまってるようなもの。
オーセンティックなジャズとクラブミュージックのどちらも作れるのが強みで、タビー・ヘイズの古典的名作Down In The Villageを、原曲にはないピッコロのソロパートを加えつつストレートアヘッドにカバーしたかと思えば、翌年には往年のリズムマシンTR-808をテーマにしたEPを発表してみたりと作るサウンドの幅が本当に広い。
そう言えば、テラス・マーティンもサックス奏者とキーボードやサンプラーを駆使するトラックメイカーの二つの顔を持っていたっけ。2010年以降の新世代ミュージシャンの多彩さぶりには本当に驚かされるばかりだ。
で、いつもの通りコンピを作ってみた
こうやってあるジャンルにハマるときって、いつも自分の通勤やリラックスタイムのBGM用に自作コンピを作るんだけど、今回もまた作ってみた。
1. Age of Ascent / Kokoroko (Brownswood / 2022)
2. Aged Eyes / Alfa Mist (Anti- / 2023)
3. Search for Peace / Ishmael Ensemble (Blue Note / 2020)
4. Future Echoes / Zara McFarlane (Brownswood / 2020)
5. Ragify feat. Big Sharer / Joe Armon-Jones (Brownswood / 2018)
6. Ukpong / Camilla George (Ever / 2022)
7. Bunny / Ashley Henry & The RE:ensemble (Silverstone / 2018)
8. Love In Outer Space feat. Nao / Ezra Collective (Partisan Records / 2022)
9. Wing Tai Drums / Yussef Kamaal (Brownswood / 2016)
10. Ghosts / Nubiyan Twist (Strut / 2019)
11. Life Forces feat. Zara McFarlane / Nicola Conte (Far Out / 2023)
12. Freqency of Feeling Expansion / The Comet Is Coming (Impulse! / 2022)
13. When We Are (K15 remix) / Nubya Garcia (Nyasha / 2018)
14. Buffalo Gurl / Tenderlonious (22a / 2019)
15. Nightwork feat. Joe Armon-Jones / Ben Hauke (YAM / 2020)
16. Where Are We Going? / Venna & Marco Bernardis (Blue Note / 2022)
トラックリストは↑みたいな感じ。我ながらいつも通りなかなかうまくまとまってるかなと。前半はネオソウルの雰囲気を漂わせつつゆったりと始まって、後半はダンサンブルなアップテンポの曲から次第に打ち込みビートへ。
全体的にアフロ・フューチャリズムを思わせる雰囲気があって宇宙っぽいけれど、片一方ではロバート・グラスパーらUS新世代ジャズ勢へのUKからの回答みたいなニュアンスも感じられるのが面白い。
90年代初頭にUSヒップホップへの回答として、ブラン・ニュー・ヘヴィーズやガリアーノあたりのアシッドジャズ勢が台頭したのと同じような匂いを感じることが出来る。そういう意味では、このあたりのサウスロンドンの音楽は21世紀版アシッドジャズといってもいいのかもしれない。
一曲だけニコラ・コンテが入ってたりもするけど、音楽的に近いし歌ってるのはザラ・マクファーレンなので、まぁご愛敬ということで。
さて、今日は少し前から書こうと思ってたサウスロンドンまわりについて書いてみた。最初にも書いたけど、当初苦手だと思ってた曲が突然聴けるようになると本当に面白いよね。
ちなみにコンピに入れた曲はたぶん全曲サブスク配信されてると思うから、Spotifyあたりでトラックリスト組めば再現できるはず。ただ、前に書いたように曲間とか音量調整はかなりこだわってるから、出来ればぜひ普通にリンクから聴いていただければと。
ついでに別のコンピも聴いてもらえるとなお良し。hearthisはmixcloudと違ってマイナーみたいだから、宣伝しないと全然再生数が伸びないので(笑)