ガジェットシンセでデトロイトテクノ
というわけで今回は前回紹介した自作曲を、どういう環境で僕が作ったのかの解説編。どんな機材をどうやって接続しているか、あまりこうした機材に明るくない人でも分かるように、ちょっと説明してみよう。今回は長文記事なので目次付き。アマゾンのリンクはイメージの参考に載せてるだけで、別にアフィではないので悪しからず。
各接続機器の構成図
どんな機器を利用しているか個別に解説する前に、全体のセット接続構成を把握した方が話が分かりやすくなるので、まずは構成図から。普段ネットワーク業界で働いてて、この手の構成図作りは日常的にしてるので、さらさらっとパワポで書いてみた。
大きく言うとミキサーがメインとサブの二つ。本当は12~14chのミキサーがあれば全部1台に集約できるんだけど、物理的に机に置くことが出来なかったので、6chと5chの小型のミキサー二つに分けて繋ぐことにしてみた。これでも足りない分のチャンネルは一旦別シンセの外部入力へ。最終的にキーボード扱いのRD-88がモノラルでしか接続出来なかったけど、なんとか必要チャネルを確保することが出来た。
MIDI関連については、TR-8をクロックマスターにした各ガジェットの接続と、RD-88を音源としても使いつつJU-06AのMIDIマスターキーボードとしても使う接続の2系統。
昔のキーボードマガジンとかデジタルミュージックマガジン見ると、わりとよくこの手の接続図が書いてあるけど、ハードウェアの接続については、やっぱりこういう絵があった方が全体感が伝わりやすいと思う。
各機器の役割紹介
TR-8(Roland) 役割: リズムマシン
テクノ・ハウス関連のセットではすべての基本となるのがリズムマシン。なかでもこのTR-8は、往年の名器TR-808とTR-909の音をRolandのACB(Analog Circuit Behavior)技術で再現した優れもの。TR-909のサウンドはテクノ・ハウスの定番中の定番と呼べる音色なので、初心者は何も考えずこの音を使っておくのが無難。
さらに僕のTR-8は追加パックの7X7-TR8も導入しているので、TR-606、TR-707、TR-727の音も出すことが可能。606や707はともかくパーカッション専門リズムマシンの727を使えるのがミソ。デリック・メイなんかがよく使ってたパーカッション系サウンドを入れたいのであれば、7X7-TR8の導入が必須でしょう。
ちなみに今はこのTR-8の後継機のTR-8S及びその廉価版のTR-6Sが出てるけど、TR-8Sは高いしTR-6Sだとちょっとチャンネルが足りないので、個人的には総合的に見て中古のTR-8を買うのがいい気がする。
TD-3(Behringer) 役割:ベースラインシンセサイザー
いわゆるクローンシンセと言われるもので、Rolandの往年の名器TB-303を再現したもの。TB-303自体は発売当時ベースマシンとして作られてたけど、今これで作った音をベースラインで使う人はおらず、曲中ではピュンピュンっとしたアシッド・サウンドを担当。
オリジナルのTB-303は打ち込みの仕方がとても特徴的で、このTD-3も同じ方式で打ち込みを行う。よく言われるように自分の思ってるパターンを再現するのはなかなか難しいんだけど、例えば同じ音をオクターブ変えて適当に打ち込んでツマミをいじるだけでも良い感じの音になる。
分かりやすいのは、カットオフ・レゾナンス・エンベローブを右いっぱい、ディケイを左いっぱいに回すことかな。これにミキサーでリバーブかけると一瞬でアシッドサウンドの完成。
本家RolandからもTB-3やTB-03というTB-303クローンが出てるけど、ただアシッドを再現したいだけなら、このBehringer製品で充分。なにせ1万円程度と安いしね。
JU-06A(Roland) 役割:アナログポリシンセ
Roland往年のポリシンセ、JUNO-60とJUNO-106をこれまたACB技術で現代に再現したもの。JUNOシリーズ自体が当時のRolandのフラッグシップ機であったJUPITERシリーズより安かったこともあり、オリジナルのデトロイトテクノでも、アナログシンセはこっちが使われていることが多いそう。
特徴的なJUNOのコーラス機能も再現されていて音は申し分ないんだけど、シーケンサー機能が微妙で単音(もしくはステップ通して同じコードパターン)16ステップしか打ち込めず、異なるステップパターンのチェイン再生機能もついてない。DAWで組んだシーケンスを流す人には関係ないけど、これ単独のシーケンサーでシーケンス組むのは少し厳しい気がする。やるとすれば8ステップか16ステップ分をタイで打ち込んで、コードモードにしてアルペジエーターかけるくらいかな。
僕の場合はシーケンスは諦め、手弾きすることにした。まぁ本家にもシーケンサーはないので、これが本来の使い方って話もあるけど。いちおう見た目的なこと気にして別売りキーボードのK-25Mを付けてるものの、実際はMIDIで繋いだステージピアノ側から音を鳴らしてる。
J-6(Roland) 役割:アナログポリシンセ
こちらもJUNOサウンドを再現したRolandのガジェットシンセ。メーカーはコードシンセサイザーとうたっていて、あらかじめ内蔵された音色とコードパターンで簡単にステップシーケンスを組めるのが特徴。
もともとJU-06Aをシンセパッド用途で買ったんだけど、前項の通りシーケンサーが微妙なので、僕のセットではこっちがシンセパッド担当。
それにしてもJUNOの音はやっぱり良い。どう音を作ってもシンセの音しか出ないのが逆に魅力って誰かが言ってたけど、本当にその通りだと思う。
Volca FM2(Korg) 役割:FMポリシンセ
FMシンセサイザーとして世界的に有名なYAMAHA DX7と互換性を持つKorgのガジェットシンセ。ポップスの世界ではDXエレピと言われる音が有名だけど、僕のセットではベースとして利用。
当時のデトロイトでは同じくYAMAHAのDXシリーズ廉価版であるDX100のプリセット、Solid Bassの音色がよく使われてるんだけど、実はこの音はDX7でも再現出来るのでVolca FMでも鳴らすことが可能。↓の動画を参考に、DX7を再現したフリーソフトのDEXEDで音を作ることができれば、Volca FM2側にMIDI経由で流し込める。
シーケンサーがステップ入力に対応してなくて若干めんどくさいけど、ベースラインを打ち込む程度であれば許容範囲かな。
LoFi-12(Sonicware) 役割:サンプラー
その名の通り、元々は12bitの低レートでサンプリングをすることで古いサンプラー特有のローファイサウンドを再現することを目的に作られたマシン。
メーカー推奨の本来の用途はローファイ・ヒップホップ作りなんだろうけど、インストとして各種楽器のサンプル音もプリセットされてるので、僕のセットではその音を利用。
当時のデトロイトではENSONIQのMirageというサンプラーシンセが使われてて、あのStrings Of The Lifeのピアノ音色なんかはこのMirageが出してるんだけど、どうにかこれを今のガジェットで再現出来ないかと思い見つけたのがコレ。
僕の今回の曲ではピアノのメインリフと中盤のストリングスはこれの音。4トラック各64ステップまで組めるシーケンサーもとても優秀でお気に入り。
RD-88(Roland) 役割:マスターキーボード兼ローズピアノ
これはこないだも書いたローランドのステージピアノ。ローズのプリセットにミキサーでエフェクトかけた音を手弾きで利用してる。
JU-06Aのところでも書いた通りマスターキーボードにもなってるので、ローズとシンセのユニゾン手弾きなんかもこれでやってる。
MG06X(Yamaha) 役割:メインミキサー
マシンライブ定番のリバーブ&ディレイ付き小型ミキサー。取り敢えず迷ったら最初はコレ。置き場所あれば多チャンネルの上位機種がオススメ。僕のデスクは他ガジェットでいっぱいなので、これで我慢してる。
Mix5(Mackie) 役割:サブミキサー
こちらも定番の小型ミキサー。単純に置き場所の問題で、今回のセットではサンプラーシンセとアナログシンセ系の音をこっちで一旦まとめて、メインミキサーに出力してる。
電源スイッチがなく、コード繋がってると常に電源ONなのが常設向きではないので、1個口の電源スイッチ付きコンセントを噛ませて使用中。
MIDI THRU 役割:MIDI出力のまとめ役
製品としては、アマゾンで適当に買ったものを使用。最初はMIDIの知識がなく、こういう機械があることも知らなかったけど、4台以上くらいの複数マシンを同一クロックで動かすためには、これがあった方が絶対いい。パソコンで言うところのUSBハブみたいなものなので安物で全然大丈夫。
実際の録音方法について
基本的には全部を構成図の通り接続して、TR-8のシーケンススイッチを押して各マシンを同期させながら動かしてるだけ。実はTR-8の配下にいるマシンのうちVolca FM2だけは手動でスタートさせてて、このベースラインのコンマわずかのズレが良い感じのグルーヴの正体。ミキサーで音を0まで絞っておけば各マシンの音は全く出ないので、曲の流れに合わせて音を足したくなったときに、その音が接続されたミキサーのチャンネルのボリュームを上げれば音が出るという単純な仕組み。
TR-8については各打楽器(インストと呼ぶ)ごとに縦フェーダーがついているから、ステップシーケンス自体を入力し、ミキサーでボリュームを上げた状態でも出す音と出さない音を選ぶことが出来る。インスト的にはTR-909のキック、スネア、ハイハットとハンドクラップ、TR-727のロー・コンガ、ロー・ボンゴ、ハイ・ボンゴ、それから1回だけスター・チャイムを使用。
後半シンセとローズの手弾きのところは、あらかじめボリューム調整しておいて、必要なポイントで直接手弾きするだけ。JU-06Aの方の音は録音前にマニュアルで適当にいじって作った音。
こんな感じで音を足し引きすることで出来たのが前回の記事の曲。DXの音作り以外にPCまったく使ってないので、よくは分からないけど、なんとなくオリジナルの録音の仕方に結構近いんじゃないかなと思ってる。
まとめ
マシンライブで作る音って即興性が高いミニマルなサウンドが多くて、きちんとした曲作りはDAWでやるのが普通なんだろうけど、DAWやったことないし、あえてマシンライブのセットで曲っぽい曲を作ってみた感じ。
まぁ機材多過ぎて、実際のクラブなんかに環境持ち出すのは現実的でないので、そういう意味でもベッドルームのマシンライブと呼べそう。自分的には満足度そこそこ高め。
さて、そんなわけで今回は僕のセットの紹介について。
この辺りの機材触り始めてまだ半年で全然素人だから、ホントはもっと良い接続とかあるのかもしれないけど、とりあえず自分なりに色々考えて組んだ環境なので、これから始めるって人の参考になれば良いかなって思ってる。
と言うかホント、自分が始める前にこういう記事欲しかった・・・。どれだけニーズあるか分からないけど、同じ悩み持ってる人に届けば嬉しいかな。
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