生きていること(断片)
『銀河』
銀の砂粒
銀の砂時計
落ちる落ちる暗闇に
ひとり
渦巻く銀河の端っこから、こぼれ落ちたひと粒の砂
9.18
『生きていること』
夢中になれることがなくても、生きていける。
穏やかすぎて波風がなくても、しあわせということ。
愛するものが遠いほうが安らかと感じてもいい。
遠くの星を愛でるように、
淡く薄い大気の揺らぎで光がまたたくような
かすかな揺らめきに命を感じて。
人と人が縁を結こと、深く関わりを持つこと、臆病で触れられなくても、生きていける。
飽きることなく一日中、雑踏を眺めていられるから、それだけでもう十分。
不幸なことと幸せなこと愛や憎しみ、人間の悲喜こもごもが世界に溢れてこぼれだす。
海の中を漂うクラゲみたいに、力を抜いて生きていてもいい。
死ぬ時を待つようにただ息をしていても構わない。
妥協と堕落で暗闇に落ちていっても、どこまでも深く寒くても、温い命がそこにあるだけ。
なにもしなくても、そこにあるだけ。
『安らかな』
雨音の白い朝
つらつらとふり続く銀の雨
宇宙に落ちていくような
ふわふわの足元
虫の声の草むらがかろうじて地面をとどめている
歩くごとに舞い上がる土の匂い
2023.9月