みえない魚
透明な空気がある
みえない魚が泳いでいる
すいすい、すいすい
雨を避けながら、雨を浴びながら
美しいヒレをゆらゆら、ゆらしている
みえない世界に手をのばす
魚が指をつついている
どこにも行けない生活ごと、まるごとその背中にのせて
何万の生活、何万の命。
みえない魚は泳いでいく。
みえない暗闇のなか、見えない空間と時間の間
みえない魚が泳いでいく
もう飽きたと言うように、目の前から去っていく。
このまちから去っていく。
鱗を一枚だけ落として、
すいすい、すいすい。
2024.7.27