森の奥/夏の虫など
眠りにつくよ、森の奥
目覚めては死を迎え、夢の中
木漏れ日に揺られ、そよ風に撫でられる
真夏の熱気は真夜中に沈み、月の雫と消えていく
体はとっくに腐り落ち、喰われて溶けて無くなった
悪臭も穢れも流れに消えゆき、残ったのは沈黙だけ
眠りにつくよ、森の奥
優しい日々の夢を見た
夏の虫
夏の虫が鳴いたら、夏の始まり
歌う季節の手を取って、一緒に踊ろう
晴れた朝、まばゆい光を浴びたなら
入道雲が真上を通り、激しい雨を降らせたならば
西日の差し込む川の側、とんぼが目を赤くしたなら
一緒に歌おう、夏の歌を
短い人生の一時、ほんのすこしの同伴者、いつか別れる僕たちの道を歩きながら
夏の歌を歌おう
セミの声を聴きながら明るい光のなかで踊ろう
草の匂い、雨の匂い、すぐ隣にある生と、死の、匂い
通りすがりの風に任せて、夏と踊ろう
歌う虫の声、夏がはじまる
2023.7.10
雷鼓
雨降る時間が過ぎていく
ピカピカ光るみはしらを
祝おう
美しき調和の一端が
私たちの側を通るのを
祝おう
よってつどって太鼓をならし
祀ろう
雨の降る今、雨の降るここ
7.12
天使の羽
天使の羽が舞い降りる
幸あれと願う天使のはね
銀色に光る不思議なふわふわ
揺らめきながらしずかにおちる
人間が産み出した人間のための祈り
エゴにまみれた素敵な願い
7.12