スイスのブドウ品種② HEIDA:ハイダ
スイスのワイン生産者の中で、新星として大注目をされているHEIDA。
結論から述べると、HEIDAは以下3点において特徴的なようです。
柑橘類やエキゾチックな果実、青いナッツやはちみつの香り
ワインの骨格がしっかりしており、20年の熟成も可能
古代品種であるその珍しさと希少性
子世代ブドウが有名なため、親世代を味わう楽しみ
諸注意
まず、自身のメモ用に覚えるべきはよく使われるシノニム(別名)です。
TRAMINERはピノ系(ピノノワールやシャルドネ)と近縁ですから、
世界で最も深遠なアロマを持つワインのいくつかは、このぶどう品種から作られます。
SAVAGNIN BLANCはフランスJURA地方のVIN JAUNE(ヴァンジョーヌ:黄色いワイン)の原料でもあります。
霜にも強いので、オーストリア、ドイツ南東部(シレジアSchlesienとザーレ Saale)などでも栽培されています。
さて、この品種は遺伝子がかなり不安定で突然変異を起こしやすいです。
従ってHEIDAもブドウが移動する際に葉の形やゲラニオール(植物精油中のバラ様香気成分)の含有量が、スイス独自に進化したと考えられています。
そのため、同じ品種とされていても、スイスのHEIDAには、HEIDAにしかない魅力があります。
今後は、スイスワイン品種ということで、HEIDAで統一いたします。
原産地
起源は諸説あります。例えば、
原産地はイラン北西部で、5000年前から栽培されている。
フランスのJURA地方が起源である。
HEIDAの突然変異であるGewürztraminerが、紀元前550年にはアルプス地方、そしてライン渓谷に広がっていた記録が残っているので、それよりも以前のものである
古代ローマ(紀元前7世紀以降)の人々が最も重要且つ最高の品種とされた白ブドウ品種”Vitis Aminae”の亜品種の子孫である。
など…
兎に角一つ言えるのは
HEIDAは非常に古いブドウ品種である、ということです。
スイスでは1586年にヴァレー上流のVisp地区で開催された会議の議事録でHEIDAが初めて登場しました。Visp地区はVisperterminen村から目鼻の先にあります。
Visperterminenについてはこちら
現在、HEIDAはスイスのヴァレーの<自称>ヨーロッパで一番標高が高いVisperterminen村のワイン畑を中心に、ローヌ渓谷を下ったエリアでも生産されます。
総面積は220ha程度です。
標高が高いため、収穫は12月になることもあるとのことです。
名前の由来
また、フランス語ではPaïenと言われ、これは『異教徒』の意味です。
つまり名前からも、HEIDAがキリスト教化(10世紀まで)に確実に存在していたことがわかります。
DNA分析結果
HEIDAは古いブドウなので、親を知るよりも子孫を辿る旅になります。
子世代が有名ですので、是非親のお顔もご覧になってください。
『直系の子孫』
Silvaner (シルヴァーナー)
Österreichisch Weißとの交配種。柑橘系のニュートラルでフルーティなワインになる。熟成させるとグーズベリーの風味が。Chenin blanc (シュナンブラン)
片親は不明。しっかりとした酸味に、フレッシュさとフルーティさ。Sauvignon blanc(ソーヴィニヨン・ブラン)
片親は不明。ハーブ系の香りとフレッシュな酸味。機構によってはパッションフルーツなど華やかな香りに。Grüner Veltliner(グリューナー・ヴェルトリーナー)
片親は不明。オーストリアで最も重要なブドウ品種。軽やかで酸が中心のワインから、熟度の高いプレディカーツワインまですべての品質レベルをカバー。
HEIDAから作られたワインの特徴
ワインは黄色系で、アルコール度数が少し高いため、見たときに色味が熱を帯びて黄金に見えることがあります。
私個人の印象では、余韻に甘みが来るように思います。
HEIDAは、古代ローマに思いを馳せる、贅沢な気持ちになるワインです。
『フレーバーの特徴』
柑橘類やエキゾチックな果実、青いナッツやはちみつ、ライムギパン
軽くスモーキーなニュアンスを持つことも
程よい余韻とバランスの取れた構成
生き生きとしてさわやかな味わいと骨格