「20, November」「Wanna Party?」が好きならModel Manを聴け:『eFootball 2023』へのKONAMI的バタフライエフェクト幻視
こんにちは、ゲーム音楽DJのすいそです。
突然ですがピアノハウス、好きですよね。先日、コナミの『eFootball 2023』収録曲のプレイリストを聴いていて衝撃を受けた曲があったので紹介します。
Clarity / Model Man
とりあえず1:04付近から始まる展開まで聴いてもらいたいのですが、アンビエントなディープハウスの様相から、目の覚めるようなピアノのバッキング、こんなのどうあがいても好きじゃないですか。
付点8分のリズムです。小節線始まりかそうでないかの違いはあるものの、「20, November」や「Wanna Party?」のピアノと同じリズムです。
20,november (single mix) / dj nagureo / beatmania
Wanna Party? / RAM / beatmania IIDX 15 DJ TROOPERS
Model Manについて、まだあまり日本での記事が見つからなかったので紹介していきます。彼の本名はMark Brandon、イギリスの音楽プロデューサーです。
ピアノ教師(クラシック)の母とレコードコレクター(ディスコミュージック)の父の元で育ったそうで、まず出生の時点であまりにもピアノハウスの申し子すぎるんですよね。神に感謝せざるを得ません。音楽の原体験としては、ほかにも宗教(教会音楽)と90年前後のレイヴカルチャーの影響があることもインタビューで語られています。相反する音楽性ではありますが、どちらもイギリスの音楽文化としては重要な、ある意味土着的とも言える要素です。
あと、イギリスといえばビートルズ。「Clarity」は、あのアビー・ロード・スタジオで演奏された映像もYouTubeにアップされています。コーラスはやっぱりソウルというかゴスペルのムードがありますね。"Soon it will be a brighter day"(やがて明るい一日が来る)とリフレインする歌詞からも福音的なイメージを受けます。そして内向的なのに高揚感があって踊れる音楽性からは彼のルーツを深く感じます。
ダンスミュージックとして最初聴いていたので、まさかこの曲が普通に演奏されているとは思っていませんでした。そこにまず度肝を抜かれたんですが、一方で人の手で演奏できるほどシンプルな編成であったことにも気が付いて二度驚きました。音の詰まりまくった現代EDMとは正反対の方向性です。
老人音ゲーマーなので昔の話ばっかりしますが、「20, November」のピアノパートを譜面で初めて見たときの衝撃と、初めて綺麗に叩けたときの喜びを忘れられない人種は、ピアノのリズムが前面に出たハウスが大好物なんです。特に、4つ打ちのビートと付点8分がポリリズムのように重なる体験には音楽的にもゲーム的にもすさまじい魅力がありました。「Wanna Party?」がずっと愛されているのもそういった原始的な部分に理由があるんじゃないかと思っています。
もちろん、数多のジャズやポップスで多用されるリズムですし、それぞれの楽曲に作曲者本人すらも明示化できないようなルーツもたくさんあるとは思います。なのでこれは予想とか考察とかテキストクリティークとかそういったものではありません。ただ、音ゲーを通ってきた人間だったら、Model Manの「Clarity」好きじゃん、という話です。
そして『イーフト』の楽曲コーディネートにどんな人物のどんな思惑があったかなんて知る由もないので、本当にただの妄想ですが、数あるアーティストの中からModel Manが、Model Manの中から「Clarity」が選ばれた理由の中に、もし「20, November」や「Wanna Party?」に起因するKONAMI的バタフライエフェクトがあったら素敵だなと思ったのでした。