【小説】アルカナの守り人(33) マザー
「──ふーむ、なるほどねぇ。流行りの病に、まさか、アルカナの能力が絡んでいたとはね──。」
「はい…。──あ、あの…、何かご存知ではないでしょうか? ヨウを…、太陽のアルカナを持つ弟を助ける方法を…。例えば、この古本に書かれているメッセージはどうですか? 以前、聞いたことがあるといったことは──?」
そう言って、ヒカリは、持参した古本を広げて、例のメッセージが表れたページを開く。
スペス リベルタティス ラティティア
(自由と希望が喜びをもたらす──)
マザーは、しばし、そのページとメッセージを眺めていたが、残念そうに首を振った。
「──すまないねぇ。この言葉については、よく分からないね。これが、ヨウが奇病にかかってしまった原因や、そもそも、人類と太陽の結びつきが弱まってしまった問題を解決する糸口なのかもしれないがね…。」
「─そう…ですか。」
ヒカリは、一瞬、悲しげな表情を浮かべたが、すぐに、その顔を隠すように俯くと、静かに、古本のページを閉じる。
ヒカリは、このメッセージが、ヨウを救う手がかりだと信じていた。マザーが、同じアルカナの能力者だと知って、もっと詳しいことがわかる⁉︎ と期待してしまったとしても、仕方がない話だ。思っていた以上に、ショックを受けている自分にもびっくりしているのかもしれないな。顔を上げることもできず、そのまま、ぼんやりと古本の表紙を眺めている──。
「──まぁ、そんなにがっかりしなさんな。その言葉については、覚えがないからね。残念ながら、協力はできないよ…──。でも、ヨウを助けることなら──、話は別だよ。」
「────えっ…?」
「ヨウは、アルカナ…『太陽』の能力が弱まってしまったから、奇病になったんじゃないかって話だったね。なら、その弱まった力を強めてあげればいい。──いいかい? 私のアルカナ『女帝』の能力はね、簡単に言ってしまうと、『育む力』だ。『成長・拡大・発展』だよ。だからね、ヨウの中に少しでもアルカナの能力が残っているなら、それを高めて、広げることはできるってことさ。」
「──ただし、弱っている身体で、アルカナの能力だけ高めても負担が増すだけだ──。だから、ミクスにも協力してもらおう。あの子に、弱った身体を癒す薬を作ってもらって、その中に、私の力も込める。そうすれば──、うまくいくんじゃないかね?」
そう言いながら、マザーは、再び、ミクスと視線を交わす。
「そうね~。材料さえあれば、どんな薬でも作ってあげるわよ、ヒカリちゃん。」
マザーの言葉を受け、頷きながら答えるミクス。
「だ、そうだよ? ──どうするね、ヒカリ? やってみるかい──?」
「は、はい! ──マザー、ミクスさん、どうか、お願いします!」
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