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【小説】アルカナの守り人(24) 幕間
「──ったく、そんなことより、なんか揉めてるんじゃないのか?」
「えっ──。あ、そうね。まぁ、いつものことなんだけど〜。フウタなら、察しがついているでしょ〜。」
ミクスは、現状を思い出したが、焦る様子もなく、のんびりとフウタに問いかける。
「まぁな──。」
フウタは、ちらっと、子供たち、そして、カヂクの実の山を見ながら答える。
「──カヂクの実の収穫を手伝いながら、どっちがより多く獲れるかを競ってたってことだろ。それで、勝った方は…、相手のおやつを頂戴できるってわけだ。──だろ?」
「──そうだよ。勝負は俺たちの勝ちだった。そのはずだったのに──、最後の最後、集計って時になって、あいつらの実の数が増えたんだ。ユベールが何かやったに決まってるんだよっ。」
「──もう、ザイルったら、いい加減にしなさいよ〜。私も見てたけど、別に変なことはなかったわよ〜。ユベールだって、何もしてないって言ってるじゃないの〜」
「そんなことない──。俺は確かに──間違いない数を…。」
ザイルと呼ばれた緋色の髪の少年は、悔しそうに唇を噛み締めている。
(はは〜ん。なるほど──。なんか、読めてきたぞ。)
フウタは、ザイルの前にあるカヂクの実の山に近づくと、膝をつきながら、その一つを手に取った。そして、言う。
「──カヂクの実ってさぁ、紫紺の皮の中、生の時は、乳白色なのに、茹でると、きれいな黄金色になるよなぁ。知ってるか、ザイル。」
「知ってるよ──。ていうか、馴れ馴れしく、名前で呼ぶな。」
「別にいいじゃないかよ。一応、俺、お前の先輩だしさ──。」
「うっざ──。」
「まぁ、そんな顔するなって──。良いこと教えてやるからよ。──カヂクの実ってさ、収穫したばかりの時も、実は黄金色なんだよ。時間が経つと、少しずつ乳白色に変化していくんだ。それも知ってるよな? つまり、ここにある実は、収穫したばかりなんだから、まだまだ、黄金色だってわけだよ。試しに、これを半分に割って──」
そう言いながら、フウタは、手に持ったカヂクの実を近くの岩で叩き割ろうと、腕を振り上げた──。
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