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【小説】アルカナの守り人(3) フウタ
「やぁどうも。いらっしゃいませ。もちろん、依頼はお引き受けできますよ。早速、お話でも…。」
そこまで言って、彼女が若干、引き気味であることに気づいた。。
あれ、俺のこの軽快な笑みが通じない? もしかして、軽すぎたか。。
フウタは、気を引き締めて真顔を作る。
「…失礼しました。どのようなご依頼でも、真摯に対応させていただきますよ。」
「どんな依頼でも…?」
「…ええ。もちろんです。」
フウタは、反射的に笑顔で返したが、そう即答したことをすでに後悔していた。
しまったな…。こういうパターンでの依頼は大抵ろくでもないんだ。俺は、勘だけはすこぶる鋭い。とはいえ、すでに答えてしまったからな。とりあえず、話だけでも聞くしかない。
彼女はヒカリと名乗った。
「実は…」
ヒカリは、そう言いながら、両手で抱えていた包みを丁寧に開いた。中から出てきたのは、とても価値がありそうな、年季が入った古本だった。ご丁寧に鍵付き。表紙の文字は薄っすら読めそうだが、見たことのない文字だ。
「この本は、私の家に代々伝わっているものなのです。もちろん、本と一緒に鍵も受け継いでいるのですが…。」
そこでヒカリは一旦、言葉を切った。そして、軽く垂れた髪を、右の耳にかける仕草をする。その時、フウタは、ヒカリの首筋に奇妙な模様のあざを見た。刺青ではない…あざだ。。でも、あざにしてはまるで文字のような…そう、ローマ数字のように見える奇妙なあざだった。
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