【小説】アルカナの守り人(26) 幕間
「うふふ。とりあえず、一件落着で良かったわ〜。──それじゃぁ、みんな〜、いつものように、食堂までカヂクの実を運んでね。 悪いけど、ザイルたちの分もお願い〜」
ミクスは、残った子供たちに指示を出すと、カヂクの実の山の前にしゃがみこむ。慣れた手つきで、小さなカゴの中にその実を振り分けていく。
子供たちも一人ずつカゴを受け取ると、列をなして、仲良く建物の方へと歩いていった。ここにはいつもの日常があった。
この景色は、あの頃と変わらないんだな──とフウタは思う。
「──それで〜? 結局、どういうことだったの〜?」
ミクスは子供たちを見送ると、ゆっくりと立ち上がり、腰に巻いたエプロンをパンっと叩きながら、フウタに尋ねた。
「私も、聞きたいわ──」
ヒカリも待ってましたと言わんばかりの勢いで続く。
「いや、だからさ──。この勝負は、最後に多くの実を持ってる方が勝ちなんだよ。ザイルはさ、終了間際、相手の数を確認して、負けそうな時は、隠し持っていたカヂクの実を持ってきてたわけ。きっと、余裕がある時に、溜め込んでたんだろうなぁ。一方で、ユベールたちも不思議に思ってたんだろう。──最後の最後でいっつも逆転されるってさ。それで、今回は、わざと少ない数を置いて、最後の最後で残りを一気に持っていくって作戦に出たんだと思う。ザイルにしてみれば、わざわざ隠していたカヂクの実を持ってくるっていう、ズルまでして負けたわけだから。納得いかなかったんだろうよ。」
──自分がズルしていると、相手もしているに違いないって、疑心暗鬼になるもんだからな。。
しつこくユベールを問い詰めてしまったせいで、逆にズルしてることをアピールするような格好になってしまったわけだ。
「──そういえば、カヂクの実って、収穫直後は、黄金色だったんですね! 私、知らなかったです。」
ヒカリは、カゴからこぼれ落ちたカヂクの実を拾いながら、嬉しそうに、ミクスに話しかけた。
「………。」
ミクスは困ったように、首を傾げながら、微笑んでいる。
フウタはというと──、
「───。」
なんだか、在らぬ方を向いて、素知らぬ顔をしている。
「───?」
えっと、もしかして…?
ヒカリがフウタを問い詰めようとしたその時、ミクスが口を開いた。
「──あ〜、そういえば、フウタ。あなた、やけに、ザイルの手口に詳しかったわね〜。もしかして〜、あのやり方、あなたも──。」
「ああああっと。忘れてたわ。俺たち、マザーに会いにきたんだった。マザーいるよな? いつもの部屋だろ? 余計な時間取っちゃったからな、さっさと行かないと!」
フウタは、無駄に大きな独り言をいうと、建物に向かって歩き始める。
──逃げたな。
ヒカリとミクスはお互いに見つめ合いながら、頷いた。ミクスは、やれやれと、大袈裟なジェスチャーをすると、ヒカリに、(ほら、行きなさい〜)と手をヒラヒラさせながら合図する。
ヒカリは、ペコリと頭を下げると、フウタを追いかけるために、走り出した。
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