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【小説】アルカナの守り人(21) 幕間


一方、少し時間を遡ったフウタ──。
 
 さっきから、ヒカリに見つめられている気がする。それも、随分と難しい顔で見られているような…。

 なんだか、居心地が悪い。
 気のせいかもしれないけど、ヒカリから過剰な期待をかけられている気がする。

 確かに、森では迷わない。実際、目印がなくても、感覚で道は分かるからだ。でも、それは、ちょっと人より鋭いってだけで、大した理由でもない。タイミング良く、煙突の煙を見つけたから、それっぽい理由を言ったんだけど。
 
 明らかに、怪しんでたなぁ、あれ。

 挙句、ずっと、俺の様子を注視していたヒカリは、足元が完全にお留守になっており、案の定、盛大に蹴躓いた。
 俺はというと、ヒカリからの視線をずっと感じていたわけで、「前をちゃんと見ろ」と横から念を送りがてら、様子を窺っていたのだ。そのお陰で、ヒカリの異変にも素早く対応できたにすぎない。

 でも、ヒカリは、なんか、確信めいた顔をしているんだよなぁ。俺にすごい能力がある!とか勘違いしてる顔だよ、これは。変に期待を持たせちゃったなら、申し訳ない。

 フウタは、ヒカリにこれ以上期待を持たせないように、今のうちに誤解を解いておこうと思い立った。

「あ、あのさ、ヒカリ──、」
 
「フウタさん! あの建物なの? 孤児院って──。 …って、ごめんなさい、何か言った ?」
 
 なんとも絶妙なタイミングで、ヒカリが孤児院の建物を指差しながら口を開いた。

「あ、いや──。…そう、あれが、俺が育った孤児院、『アルボス アミークス』だよ。やっと、到着だな!」

 フウタは、一瞬の間の後に、何事もなかったように笑顔で応える。

 まぁ、後でちゃんと説明すればいっか──と思いながら。




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