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【小説】アルカナの守り人(9) ヒカリ

 ヒカリの一族はウィータの守護者、もしくは、守り人と呼ばれていた。
 アルカナと呼ばれる特殊な能力を用いて、命を守る者、魂を守る者だ。アルカナの能力は世にいくつか存在するらしいが、ヒカリの一族はそのうち二つを有する、さらに特殊な一族だった。ヒカリの父親の家系は、『太陽』のアルカナ能力を、そして、母方の家系は、『星』のアルカナ能力を代々、継承してきた。ヒカリは母方の『星』のアルカナ能力の継承者であり、人類を癒し、導くことが使命であった。
 
 一方、『太陽』のアルカナ能力を引き継いだのは、ヒカリの弟、ヨウだった。
 
 能力を引き継いだ場合、身体のどこかしらに能力者の証となる特殊なあざが現れる。ヨウが九歳を迎えた、三ヶ月前のある日、腰の辺りにくっきりとそのあざが現れた。

 NO.XlX。太陽の能力者の証である。

 人類と太陽を繋ぐ。それが与えられた使命だ。
 過去、人類は自然に太陽のエネルギーを感受できた。それは、生きる力であり、生きる喜びであり、慈しむ愛であり、命のエネルギーだった。人類は太陽から様々な恩恵を受けてはいたが、あまりにも当たり前のものであり過ぎたため、誰しもがそこに無関心だった。そして、時は過ぎ、人類は山中に住み、人工的な光源を浴びているだけに過ぎなかったが、太陽の恩恵を受け続けられていた。一族が陰ながら動いていたからである。
 人類が太陽をイメージする限り、太陽を憶えている限り、人類と太陽の絆は結ばれ、恩恵を受けることはできる。集合的無意識を通して太陽のイメージは伝わり、エネルギーは送られ続ける。それを可能にしていたのが、『太陽』のアルカナ能力だったのだ。
 では、もし、太陽との絆が切れたら…? 当然、太陽の恩恵は受けられなくなる。生きる力は弱まり、喜びや愛を感じられず、体温も下がり始め…。

そう、これが、最近、流行りの奇病の正体である。




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