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【小説】アルカナの守り人(25) 幕間
「──っ! やめろよっ── 実が…、実が勿体無いだろっ。」
──慌てたように、ザイルが止める。
「え── ? ああ、でも、この実を割ったら、きれいな黄金色が──」
「そんなの見なくていいよっ。──なんだよ、お前。余計なことをしやがって──。」
「──うん? 余計なことって?」
「な、なんでもないよ。──とにかく、実を割るのはダメだからなっ。」
ザイルの必死な抵抗に、フウタは、「やっぱりなぁ。」と予感を確信に変えていく。思わず、口元が緩みそうになるが、ここは、心底困ったような素振りを見せつつ、問う。
「──うーん。…じゃ、今日の勝負は、引き分けってことでいいか? お前が納得するなら、俺もこれで終いにするぞ。」
「──っ、わかったよ。──ユベール、今日の勝負は引き分けな! 」
ザイルは、一方的にそう告げると、周りの取り巻きの少年たちに、
──行こうぜ! と一声かけ、畑を離れていった。
「えっと…──?」
残されたユベールは、呆気に取られたようだ。さっきまで、あんなに詰め寄られてたのは、何だったの?という顔をしている。
「あー、ユベール。今日は、お前たちの勝ちだったのに、引き分けにしちゃって悪かったな。」
フウタは、そう、すまなそうに言うと、ユベールの頭を優しくポンポンと叩いた。
「──ううん。もう、いいんだ。」
ユベールは、服の袖でゴシゴシと目元を乱暴に拭くと、はにかみながら言う。
「──あのままだったら、僕はザイルの勢いに押されて、負けていたかもしれないから。そしたら、おやつも食べられなかったかもしれないでしょ。だから──、」
──助けてくれてありがとう、おにいちゃん。
ユベールはニコッと微笑むと、子供たちの輪の中に戻っていった。
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