【小説】アルカナの守り人(30) マザー
「なんだい、ミクス! いきなり、話の腰を折るんじゃないよ!」
「──だって、私も、フウタに同じことされたのよ~。私だって、そんな『お話』するの、とっても楽しみにしていたのに! マザーばっかり楽しむなんて、そんなのずるいわ。──もう、本当に、フウタは意地悪。やっと女の子を連れて来たんだから、ちょっとは、楽しませて──って。あ~、こほん──。」
フウタのジト目に気づいたミクスが、慌てて、口をつぐむ。
「まったく─。おまえがそう、揶揄う気満々だから、フウタもここに連れてきたいと思わないんじゃないか──。」
マザーは呆れた口調でそう言ったが、自分のことは棚に上げるんだな──と、フウタはため息を吐く。
まぁ、ヒカリを連れてきた時点で、こうなることは、粗方想像がついていたわけだが、そろそろ、本題に入りたいところだな───。
「マザーもミク姉も…、ちょっといいか。──今日は、ちょっと真面目な用っていうか、聞きたいことがあって来たんだよ。だから──、」
「──ああ、分かっているよ。フウタが来てくれて嬉しかったとはいえ、ちょっとばかり『おふざけ』が過ぎたかもしれないね。すまなかったね、お嬢さん──。」
マザーはそう言うと、ミクスと視線を交わす。そして、二人で揃って、ヒカリに頭を下げた。
「いえ、そんな──。私こそ、突然、お伺いしまして…。」
ヒカリも慌てて、頭を下げる。
「ふふふ。そんな堅苦しいのは、なしだよ。こっちは、ゲストだって、いつでも大歓迎さ。それより──、今日は一体、どうしたんだい? なんだか、真面目そうな用件なのは、薄々気づいてはいたけど…──?」
「ああ、うん──。もちろん、説明するけどさ。まぁ、その前に、ちゃんと紹介しないとな。こちらは、ヒカリ。──俺の依頼人だよ。」
「ふふ。初めまして、ヒカリ。」「よろしくね~、ヒカリちゃん。」
「はい、よろしくお願いします。」
「それでその、ヒカリなんだけどさ──、」
フウタは、そう話を切り出したものの、さて、どこから、どう説明したらいいもんか──と、思い悩む。
いや、俺よりもヒカリが説明した方が早いか──?とヒカリの様子を窺うも、懇願するようにこちらを見つめていることに気づく。どうやら、困っているのはお互い様らしい。
とりあえず、ヒカリが、事務所に来たところから、順を追って説明していくしかないか──。フウタは、顎先に添えた指で頬を掻きつつ、意を決して口を開いた──のだが。
「──ふーむ。ヒカリは、やっぱり…──、『守り人』かい?」
そんなマザーの一言で、状況が一変する──。
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