リスボンの美しさを感じる、ひとり旅のススメ|あの街のGoogleマップ Vol.2
なくなってほしくない街並みを紹介する「あの街のGoogleマップ」という連載をはじめました。L&G GLOBAL BUSINESSで働くスタッフやいつも応援してくださる皆様と一緒に、独自の視点でキュレーションした推しスポットを紹介します。
20歳の終わり頃に半ば思いつきで、初めてひとり旅に行った。普段の私は、何かちゃんとした理由がないとなかなか行動に移せないような人間で、出発前は「とりあえず行ってみたいから」なんて理由で旅行をすることに対して、うまく言い表せないが一種の背徳感さえ感じていた。
行き先は日本から遠く離れたポルトガルの首都リスボン。SNSでたまたま流れてきたリスボンの写真を見て「綺麗だな」と思い、行き先に決めた。日本からの直行便はなく、乗り換えを含めて最短でも17時間はかかるらしい。ラッキーなことに当時留学中でイギリスにいた私は、ロンドンはスタンステッド空港から往復1万円以下のLCCに乗り込み、3時間弱でその街に到着した。
ただ道に迷いたかった
リスボンのホステルを予約すると、宿泊案内のメールが届いた。宿の基本事項に加えてオススメの場所や街の周り方が記載されており、そのなかのひとつに「Getting lost in Alfama: アルファマで道に迷う」というものがあった。「なんて詩的な観光案内!」と感動したのを覚えている。リスボンの中心地は主に4つの地区から成り立っており、それぞれに違った特徴がある。アルファマ地区は約250年前に発生したリスボン大震災の被害が一番小さく、今もかつてのイスラム支配の面影が色濃く残っている(らしい)。
適当に歩いていると、すぐに自分がどこにいるのかわからなくなった。道に迷うことが目的なんて、おかしいかもしれない。でもリスボンではそれが全て肯定されてしまう。それくらい目に入るもの全てが美しい、私が今まで行ったことのある世界中のどこの街にも敵わないくらい。
リスボンの街はアズレージョというタイルで覆われている。繊細な模様が施されているものもあるし、複数枚でひとつの絵をなしているものもある。いつしか目的は、道に迷うことから可愛いタイルを見つけることにシフトしており、その日は日が暮れるまでフラフラ歩き続けた。
ユーラシア大陸の最西端へ
とりあえず予定も特に立てずにふらっと来たポルトガルであったが、一箇所だけどうしても行きたい場所があった。リスボンから電車で40分、終点のシントラ駅で降りて、そこからバスでまた40分。着いたのは、ユーラシア大陸の最西端「ロカ岬」。
断崖絶壁の上に立つ石碑には「ここに地終わり海始まる」と記されている。海を見ながら(大西洋を見たのはそれが初めてだった)、大陸の東の方にある小さい島からはるばるやってきたんだなあと思うと、感慨深くさえあった。
ポルトガルと日本
ポルトガルにいると、節々で日本を感じることができる。大航海時代に栄華を極めたこの国は、世界史の授業で大活躍のヴァスコ・ダ・ガマやマゼランの出身地であり、かの有名なフランシスコ・ザビエルは当時のポルトガル王より命をうけ、日本に来たらしい。教科書でしかみることのなかった偉人たちと、記念撮影だってできてしまうのだ。
また、「ありがとう」の語源はポルトガル語の「オブリガート」とも言われている。それに気づいた後レストランでご飯を食べたときに、ちょっと外国人っぽい発音&早口で「アリガト〜ゥ」と言ったのだが、普通に伝わったのでちょっと嬉しくなってしまった。
ペソアの愛した悲劇の街
そんなこんなで他にも、海鮮嫌いだったのにふらっと入ったレストランにて人生で一番美味しいタコに出会ったり、1日に3回エッグタルトを食べたり、ホステルで出会った人々と夜遊びにでかけたり、誰かと一緒の旅行だったらあまりやらなそうなことを色々やってみた(嘘です、エッグタルトは食べるかも)。
それでもやっぱり、一番記憶に残っているのは白い壁とオレンジの屋根、カラフルなタイルに囲まれた街並みだった。初めてきた場所なのに「サウダージ」という言葉のニュアンスがなんとなく理解できてしまうのだが、それには美しさの裏に隠れた悲劇が関係しているのかもしれない。1755年におきたリスボン大震災とそれに関連する津波により、街は全壊し大勢の人々が亡くなった。今でも街の中央に立つサンタジュスタのエレベーターに乗れば、地震により崩壊したカルモ修道院の廃墟をみることができる。
住むにも旅をするにも、歴史と現在が混ざった街はいつだって魅力的だし、外から入ってくる色々なものを受け入れながら、独自の文化を形成している街は美しい。そしてそれらを、ちゃんと感じることができる街が好きだ。リスボンはその全てに当てはまると思う。ポルトガル出身の詩人、フェルナンド・ペソアが残したこんな詩がある。
After all, the best way to travel is to feel.
To feel everything in every way.
To feel everything excessively,
For all things are in truth excessive.
And all reality is an excess, a violence
旅をする最良の方法は、つまるところ、感じる、ということにつきる。あらゆるものを、あらゆる方法で、感じること。あらゆるものに、びっくりするくらいに。なぜなら、本来、どんなものも驚きなのだから。
安全な世界でまた旅が出来るようになったときには、ペソアの愛したこの街に、きっとまたひとりで訪れようと思っている。
【リスボンおすすめMAP】
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https://goo.gl/maps/gR3w6aS39qyGaQg9A
文・写真:鎌上真帆(L&G GLOBAL BUSINESS)
【過去の連載一覧】
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