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戻ってきたHOTEL SHE, KYOTOで、ソーシャルなおもてなしを|偏愛、わたしのホテル #2

「いまアルバイト探してるですけどいいところないですかね」
「おれイケてるベンチャーのホテルのフロントしてんねんけど紹介したろか?」

ぼくと「HOTEL SHE, KYOTO」の出会いは、京都・木屋町にある居酒屋での高校ラグビー部の先輩との会話がきっかけでした。

2017年12月、大学2年の冬。海外に住んでいた自分にとって英語が活かせる現場だったことが魅力的で、すぐに面接をセットしてもらい、HOTEL SHE, KYOTOのフロントアルバイトとして働くことになりました。

ホテルの印象は良い方向に裏切られた

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当時のHOTEL SHE, KYOTOは、L&G代表の龍崎やゼネラルマネジャー、HOTEL SHE, OSAKAの支配人、北海道にあるpetit-hotel # MELONの支配人、人事マネジャー、デザインマネジャー兼シェフといった今思えば錚々たる面々が、フロント業務を切り盛りして接客をしていました。

特に龍崎との最初の出会いは今でも鮮明に覚えています。ある日出勤すると、フロントに若い女性の方が入っていたので挨拶。ライトな自己紹介で返してくれました。

「龍崎翔子です〜入ってくれてありがとう〜よろしくね〜」

その時はベテランのアルバイトの人だと思いました。ベテランでないと「入ってくれてありがとう」なんて言わないであろうと。

「笠井くんはいま何歳?」
「19です!」
「うちいま20やから一個下か!家どこなん?」
「高槻(大阪)です!」
「そうなんや!結構近いね〜大学で何勉強してるん?」

すると、横から現ゼネラルマネジャーが出てきて
「あ、挨拶したかな?こちらうちの代表の翔子さんです」
と。心の中で、まじかよと思いました。言葉が出ず、へこへこしたのを覚えています。

今となってはホテル好きなぼくですが、アルバイト当時は全く知識がなく、ホテルのフロントは「スーツを着用して髪がバシっとなっている人」というイメージでした(映画「マスカレード・ホテル」のキムタクようなイメージですね)。けれど実際に働いてみると、「シャツなど清潔感のある服装」であれば基本私服でもOK。予想を良い方向に裏切られたことを覚えています。

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(仲良くなったお客様と記念撮影をすることもよくありました)

ゲストとの交流で、自分なりの「距離感」を体得した

いまはブティックホテルに数えられることの増えたHOTEL SHE, KYOTOですが、ぼくのアルバイト時代は、自分たちで「ソーシャルホテル」と謳っていました。ソーシャルホテルとは、人と人、人と町、人と文化の3点で新しい価値観を提供できるホテルです。ゲスト同士がコミュニケーションが取れるよう、あえてロビーに共用キッチンがあったり、京都市の地図が壁一面にあったり、フロント前の壁にプロジェクションマッピングを投影したりと、会話のきっかけをつくる仕掛けの多い空間づくりが特徴のひとつです。そして、スタッフもまたその一部であり、あえて私服勤務を許容することで、ゲストとフランクに話せる空間づくりをしていたんだと思います。実際に働くスタッフはみんなフレンドリーで優しく、温かみのあるメンバーばかり。

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(リニューアル前のHOTEL SHE, KYOTO)

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(リニューアル後のHOTEL SHE, KYOTO)

社員はもちろん、ぼくたちアルバイトもゲストと積極的にコミュニケーションをとるようにと言われていました。すてきなおもてなしをするためにどんなことをすればいいか、ゼロから考えることは当時の自分にはできなかったので、周りの社員の方々を参考に自分のできる範囲で、自分の接客を通じて少しでも良い思い出をつくってもらうことに注力していました。当時は海外のゲストが大変多く、自分なりに頑張って対応した方々から感謝のメッセージをいただいたときはとても嬉しかったです。

なかでも、毎週金曜日に開催していた「Friday Night Party」というフリーバータイムは、ぼくもとても好きな時間で、多くのゲストが交流する場所ができ、人と人との間で出会いのある空間が体現できたと感じています。

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もちろん毎度毎度ゲストのニーズを満たせていたわけではありませんでしたが、ソーシャルホテルだったからこその距離感で自分のホスピタリティが発揮でき、喜ばせることができたと実感したことが、ぼくがホテルを好きになった原点なのだと思います。

途中からは、コンサルティング事業の案件にも関わらせていただいたり、少しだけ翔子さんの秘書のような仕事をさせていただいたりして、多くの失敗もしましたが、アルバイトとしても学ぶことがとても多く、さらに前のめりに仕事に打ち込むようになりました。

異業種への就活で視野広げた後、L&Gに新卒入社

きっと多くの大学生に共感していただけると思うのですが、就活中のぼくは、心からやりたい仕事がなかなか思いつきませんでした。L&G以外の就職先に目を向けて、L&Gの人事マネージャーと相談しながら大手企業を受ける日々。大阪ー東京間を往復しながら面接を受け、大手生活用品メーカーや大手食品メーカーから内定をいただいたのですが、大手企業に就職するという決断に納得ができず、今後の人生でなにが大事かをずっと考えていました

結果として大手ではなく、アルバイト先でベンチャー企業でもあるL&Gに新卒入社することに。動機は3つありました。

1点目は、「素敵な人に囲まれて仕事がしたい」と思ったからです。L&Gは本当に(お世辞抜きで)人として素敵なスタッフばかり。全員が仕事で感情的に怒る人はいないし、全員が自分のやりたいことを持っている人たちです。ぼくも、そんな集団のひとりでありたいと感じました。

2点目は、一般的にライフワークバランスが重視される風潮の中で、ぼくは仕事とプライベートをしっかりわけたくなかったというか、(もちろん分けることの大事さはわかるのですが)仕事とプライベートの垣根なく社会人生活を楽しみたいと思ったからです。

3点目は、L&Gはホテルのフロントに立ちゲストと接する機会を得ながら、会社全体の仕事にも関われる環境にあったからです。

2019年4月、L&G初の5人同時に新卒社員として勤務を開始。新人社員研修を終えた後は、北海道の富良野にある「petit-hotel # MELON」(4月下旬〜6月中旬)、同じく北海道の層雲峡にある「HOTEL KUMOI」(6月中旬~11月下旬)、大阪にある「HOTEL SHE, OSAKA」(11月下旬~12月下旬)の順番で各館を経験。その後に再び京都へ移るわけですが、社内で唯一、全館での勤務を経験した人間でもあります。

支配人総選挙に立候補、北海道から原点の京都へ

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L&Gは、2019年より支配人が選挙制となりだれでも立候補できるようになりました。その支配人総選挙のアナウンスが「HOTEL KUMOI」に居た頃にあり、せっかくのチャンスということで、アルバイト時代を過ごしたぼくにとっての原点である「HOTEL SHE, KYOTO」で立候補することに。きっかけはホテルのホスピタリティをもっと追求したいことにありました。短期間でL&G各施設で働いてみてすごく思ったことは、同じ接客をしても店舗によってお客様に喜んでもらえるポイントが全く違うということ。自分自身が支配人になることで、権限と責任をセットで負い、HOTEL SHE, KYOTOに還元したいと考えたのです。

HOTEL SHE, KYOTOの新しい支配人として、京都に戻ってきたのは2020年1月。業務に取り組み始めた矢先、新型ウイルス流行の影響で館は休業してしまいました(※5月30日より通常営業を再開します!)。そんな状況の中で感じているのは、ぼくは本当にいいメンバーに囲まれているということ。実は店舗には支配人総選挙でライバルになったスタッフがいて、正直最初は少し気まずかったのですが、最年少のぼくを一切見下したりせず心からお祝いしてくれて、作りたいホテルを目指し一丸となって次なる打ち手を模索してくれている姿に、チームの一員として心から誇りに思っています。

ソーシャルなHOTEL SHE, KYOTOでまたお会いしましょう

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HOTEL SHE, KYOTOは、「また来るね」と全国各地からいらしたお客様との出会いや、「また一緒に面白いことしましょう」と言ってくださる九条の地域界隈の方々、そしてすてきなスタッフたちがいる、ぼくが守りたいホテルです。ぼくたちのHOTEL SHE, KYOTOには、フロント業務のみを生業にするプロフェッショナルはいません。各自がフロントに入りながら、セールス、コンサルティング、デザイン、人事、経理など他の業務も担当しています。そんなぼくらだからこそ、多角的な視点を持って、ホテルにいらっしゃるお客様を第一に考えたおもてなしを今後も提供していきたいと考えています。そして、「最果ての旅のオアシス」というホテルのコンセプトのもと、九条エリア、ひいては京都市南区全体のオアシスにになれるよう、フレンドリーな地元の方々や、さまざまな目的で訪れてくれる旅人、魅力的なスタッフをはじめとする、「地域」「ゲスト」「スタッフ」それぞれに出会いのあるソーシャルなホテルを再発させたいと思っています

コロナが収束し、気持ち新たに皆さまともう一度お会いできることを、個人としてもHOTEL SHE, KYOTOのスタッフとしても、心から楽しみにしています。

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文:笠井明(HOTEL SHE, KYOTO 支配人 / L&G GLOBAL BUSINESS)


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