運命からの招待状 サイレントコーリング
「今年の運気を教えてください!」
これは毎年正月頃になると山のように押し寄せて来るポピュラーな依頼なんですが、私は「西洋占星術は神社のおみくじとは違いますので、そういう漠然としたご質問にはお答えできません」とお断りするようにしています。
もちろん、やろうと思えばできるんですよ(笑)。比較的公転速度の遅いトランジットの木星・土星・天王星・海王星・冥王星の動きを調べればその年の「年運」を読むことはそれほど難しいことではありません。
特にこれらのトランジット5天体が、出生図内の太陽・月・金星・火星と角度を組むタイミングには、本人の人生を揺さぶるような「何か」が起きやすいのですから、これを「今年の運気」と見なして依頼者にお伝えすることもできるわけです。占星術ライターの石井ゆかりさんが雑誌でやってるのは主にこれですね。
でも、彼らが聞きたがっている「今年の運気」とは「何も努力しなくても勝手に向こうから転がり込んで来るような棚からボタモチ式の幸運が私に訪れるのはいつですか?」というニュアンスがあるので「運命って、そういう都合のいいものではないんですよ」と理解していただく意味で敢えてお断りしているんですね。
そもそもの話ですが、目の前に突然転がり込んで来たビッグチャンスを迷わず掴むためには「勇気」が必要ですし、その勇気を振り絞るためには「健全な自己肯定感」を日常的に持っていることが絶対条件です。自己肯定感とは「自分は素晴らしいものを受け取るに値する人間だ」と素直に信じられる自尊心のことですね。
普段から「どうせ私なんて・・・」と思っている自己肯定感の低い人や、「面倒なことにはなるべく関わりたくない」と考えている怠惰な人の元に、突然「運命からの素敵なお誘い」があったとしても、それをパッと掴み取ることはできないはずです。恐らくは、あれやこれやと「やらない理由」を並べ立てて今まで通りの人生を継続してしまうのがオチではないでしょうか?
その前提条件を無視して、ただ単純に「私に幸運がやって来るのはいつですか?」と聞いたところで何の意味もないことなんですね。
例えば、結婚適齢期の女性の前に、ある日突然素敵な独身男性が現れたとしても、その女性が健全な自己肯定感と勇気を持っていなければ声をかけることはできないはずですよね?「今この瞬間、彼の連絡先を聞かなければ二度と会えないかもしれない」というような切迫した状況であったとしても、自分自身を信じる心がなければその重要な「一歩目」が踏み出すことはとても難しいのです。
トランジット木星が「恋愛の金星」と重なっているタイミングであれば「今、勇気を出して声をかけさえすれば成功する確率が高い」ということは事前に読み取れるんですが、実際にその場であなたが勇気を振り絞れるかどうかまでを木星が保証してくれるわけではないのです。
西洋占星術における「最大の幸運天体」は木星であり、このトランジット木星が金星と角度を持っている時期中は「恋愛運と金運」が上昇しますし、太陽と組めば「出世のチャンス」が与えられます。しかし、実際にその場面において具体的行動を起こすかどうかの決断は本人に任されているので、自己肯定感が低い人にとって幸運なんてのは「最初から存在しないのと同じ」なんですね。
中世の哲学者トマス・アクィナスは、この状態を「星は誘えど、強制せず」と表現しました。
トランジット木星はあくまでも「意図的」に使わなければいけない「幸運の種」に過ぎないのです。
シンデレラだって勇気を出してお城の舞踏会に参加したからこそ王子様に見初められたのであって、家に閉じこもって「あぁ、なんかいいことないかなぁ」とか「あの意地悪な継母死ねばいい!」と悪態ついているだけであれば、ずっと惨めな生活のままだったはずです。
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