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聖なる性の秘密 不倫と宗教

毎度毎度、恒例行事のように「芸能人の不倫叩き」が世間を賑わせている日本ですが、日本人って前からこんなに性道徳に厳しい国民性だったでしょうか?

少なくとも、不倫をした当事者のラブレターを本人の許可もなく世間に晒して赤っ恥をかかせるような「言論の暴力」は私が若い頃には見たことがありませんから、ここ数年の「マスメディアによる不倫バッシング」はかなりヒステリックな状況にあることは間違いないでしょう。

「不倫問題」については、以前の記事でも詳しく解説しましたが、今回は「性の倫理」に焦点を当てて宗教的・歴史的・運命学的な観点から論じて行きたいと思います。

さて、芸能人の不倫となれば、両方の家族だけでなく、所属事務所やスポンサーをも巻き込んだ社会的騒動になりやすいですから、一般人よりも強い自制心が求められることは確かです。

例えば、かつてタレントのベッキーが「ゲス不倫」と呼ばれる騒ぎを起こした時も、CMスポンサーから5億円にも及ぶ違約金を請求されたと言われていますので、「一時の気の迷い」では済まされないほどの実質的な被害が出る事例も発生しています。不倫発覚時の人気があればあるほどこの違約金の額は大きくなるため、著名人にとって不倫スキャンダルは、その後の人生を左右するほどの強烈なインパクトを持ってしまう危険があるのです。

ただ、この違約金請求の背景には一般人による「スポンサーへの苦情メール」が殺到したことが直接的要因となって契約解除が起きており、自分とは赤の他人の不倫行為に対して「絶対に許せない」「社会的制裁を加えたい」と考えている層が一定数いることを物語っています。

自分の人生には何の関係もないことなのに、なぜそうまで「他人の情事」が許せなくなるのでしょうか?

そこには「セックスそのものが道徳的に悪いことだ」と考える一部日本人の「認知の歪み」があるように思えてならないのです。

ドイツ人作家ヴァルター・シューバルトの説によると、このような「性への敵対視」は、女性原理に対する男性側の「根源的な恐怖心」に端を発していると述べられています。男性の性的快楽は射精によって終了してしまいますが、女性の快感はその後も長く続くことから、男性はエロスに関して「女性よりも肉体的に劣った存在である」と感じてしまいやすいのだそうです。

その劣等感から逃れるために男性たちは性的なもの全般を「穢れたもの」として扱い、男性の性的な煩悩を刺激する女性たちを宗教的な場面から排除し、差別的な対応をするようになったわけです。宗教界に蔓延する「女性蔑視」の価値観自体が、生物学的に優位な立場にある女性に対する「憧れとコンプレックス」が根っこにあるんですね。

「女性は貞淑な存在であるべきだ」と一方的に強制して自由を奪い、それに従わない女性は「天国の門をくぐれない」などと脅してその地位を貶めて来た歴史があることは誰もが知るところでしょう。

イエス・キリストから最も寵愛されていた「マグダラのマリア」という女性(聖母マリアとは違う人です)が、カトリック教会によって「元娼婦」という誤ったイメージを与えられているのも、イエスの一番弟子だったペテロ(初代ローマ教皇)との教団内での対立が原因になっていると言われています。

グノーシス派の説によると、キリスト教で最も重要な聖遺物として語られている「聖杯」とは、実は「マグダラのマリアの子宮」のことを指しており、本来であればイエス・キリストの栄光と権能を引き継ぐべき正当な権利を持っていたのは、「聖杯を持つ女性」であるマグダラのマリアだったのです。要するにキリスト教は「女性のほうが神に近い存在として尊敬される宗教」になるはずだったわけです。

これらの話は1945年にエジプトで発見された写本「フィリポの福音書」などに記述されており、歴史的事実であったことが確認されていますが、すべて「異端の説」「外典」として初期段階で聖書から削除されていた部分だったため、後世のキリスト教徒のほとんどはこの福音書の存在すらも知りませんでした(現在採用されている福音書はマルコ、マタイ、ルカ、ヨハネの4つのみです)。

ただ、史実としても聖書に出て来る娼婦(罪深き女)と、マグダラのマリアは同一人物ではありません。しかし、当時そういうマイナスイメージを意図的に流布することでマグダラのマリアの地位を貶め、ペテロが「教団の後継者争い」を有利に進めようとした形跡があるんですね。実際、ペテロの誹謗中傷により教団内での居場所を失ったマリアはその後行方不明となり、歴史の表舞台から姿を消しています。

そして第一使徒ペテロに率いられた「男性優位・女性蔑視のキリスト教団」はこの後、世界最大の巨大宗教へと拡大して行ったのです。

不倫事件が起きると、男性側よりも女性側に非難が集中するのはこのためですし、そのような宗教的価値観に知らず知らずのうちに影響を受けている女性たちが「同族」であるはずの不倫女性を過度に攻撃するという文化が生まれてしまったのです。

確かに西洋にはモルモン教(キリスト教系の新興宗教)のように「たとえ夫婦間であっても、子作り目的以外のセックスは全面禁止」という厳しいルールが定められている団体も数多くあります(モルモン教徒は大抵、子だくさんです)。
しかし、それが人間にとって不自然極まりない教義だからこそ、モルモン教会に所属する女優の斉藤由貴が「3度に及ぶ不倫事件」を繰り返す原因になったのではないでしょうか?

斉藤由貴の場合、父親がもともとモルモン教徒でしたから、斉藤由貴はいわゆる「宗教2世」に当たります。モルモン教ではセックスどころか、コーヒー、紅茶、酒、たばこのような嗜好品をすべて「罪深きモノ」として毛嫌いしますので、日常生活全般においてかなり欲求不満が溜まりそうな宗教なんですね(苦笑)。

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