手紙を書きたいのに相手がいない。
私は手書きで文章を書くのが好きだ。自分の書く字は好きではない。むしろちょっと嫌いだ。けれどきっちりと並んだ罫線の上に自分の思ったことをガリガリ書いて、白紙を埋めていくことは好きだ。
だから手紙を書くことも好きなのだけれど、問題は手紙を書く相手がいないことだ。今ではLINEとかの交流手段があるから遠くにいる友達にも気軽に連絡が取れる。わざわざ手紙を書くという手間をかける必要がない。
私が中学生だったころはメモ用紙を使った手紙の交換が流行っていたけれど、大学生になった今ではそんなことをしている人は誰もいない。中学生のころ、メモ用紙を毎回7枚くらい使って、クラスの子と文通のようなものをしていたことがあった。内容は好きな歌手の話とか今日見た夢の話とか、とりとめのないものだった。結構な期間そのやりとりは続いていたと思う。高校生のころは似たようなことをLINEでしていた。どちらも同じクラスの子としていたので、毎日クラスで顔を合わせるのに手紙やLINEで文通しているという、今思うと不思議な状況だった。けれど楽しかった。どっちも楽しかったけれど、もらったときのわくわく感とかは手書きのほうが強かった。
今友達に手紙を出したら、どんな反応をするだろう。LINEで返信が来そうだなとか、いきなり手紙なんてなんかあった? とか聞かれそうだなと考える。特になにも言わずに手紙を受け取って、返事を手紙で書いてくれる人はいるか考えてみるけれど、悲しいことにぱっと思いつかない。だから私は友達の誕生日とかに、待ってましたと言わんばかりに手紙をプレゼントと一緒に渡す。プレゼントついでの手紙だと、それほど違和感もない。でも誕生日に書くことなんてもう定型文が出来ているようなものだし、私の手紙欲はそれほど満たされない。
LINEは気軽に連絡がとれるし、返信も速い。手紙が好きだといいながら私もLINEばかり使っている。けれどやっぱり手紙には手紙だけが持つ味がある。
手紙は書くだけじゃなくて、送るときも届くときも楽しい。郵便受けに自分宛の郵便物が入っていると胸が高鳴る。書いた手紙に封をして切手を貼って、ポストに投函する一連の流れも楽しい。この思いを誰かと共有したい。手紙欲を満たしたい。
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一生に一度は丸ポストから手紙を出してみたい。