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大事にすべきものほど大事にできない

大切なものを大切に扱う。
そんな当たり前のことができない。

たった一人、心を許したあの人に私は幾度となく当たり散らかす。
他の人に言われても気にならないような些細な言葉も、
あの人の口から出たものだと途端に私の感情を揺さぶる。
あの人の前だと感情が爆発する。声を出して泣いて、
いつもと違う口調で彼を責める。

そうしていつも後悔する。
ごめんねと謝る。だけどまた同じことを繰り返してしまう。

私はあまり人に弱っているところを見せない。
愚痴もあまりこぼさないようにしている。
あの人だけが本当の私を知っている。
弱くて荒んだ私を知っている。
だからこそ甘えて、感情をむき出しにしてしまう。
そうするといつも彼は小さい子どものような表情を浮かべる。
私が怒ったときは顔を伏せてしょんぼりして反省してるし、
私が泣いたときはぐしゃぐしゃの顔になって、彼も泣きそうになっている。
でも、私が不安で押しつぶされそうなときは、優しく抱きしめてくれる。

かけがえのない人だということはわかっている。
これからはもっと大事にしようと何度思ったことか。
彼が傷ついた顔をするたび、私自身も傷ついた。
大事な人をまた大事にできなかった、と。

私がごめんねと言うたびに、
「なんで謝るの」「なにも悪くないよ」と彼は言う。
「僕が気を遣えなくて、ごめんね」と言う。
その言葉に安心してしまう自分もいる。
私はこうして彼に甘やかされていくんだろうなあと思う。
それがなんだか情けなくて、でも嬉しくもある。

彼は私にとって好き以上に大事な存在だ。
でも、大事なものを大事にできない私はいつか彼に見限られてしまうのだろうか。

そのときはそのときか、と諦めを覚えるくらいに
私は彼を傷つけてしまっている。

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