#164国立公文書館デジタルアーカイブを楽しむ(2)
前回に引き続き、国立公文書館デジタルアーカイブについて紹介します。
前回は「公家系図」が包括的に公家のことを調べることが出来る史料である旨を記しました。今回は「府県史料」について述べたいと思います。
「府県史料」は明治前期の各府県で作成された文書で、近世の各地域でどのように藩から府県に引き継がれたかなどを記した史料です。国立国会図書館憲政資料室の史料紹介によると、太政官正院歴史課の編纂で、一道三府四一県分の史料が政治部、制度部の二つに大別されて採録されています。
著者などは、明治初年のことを研究、執筆する場合にはまず当たる史料といえますが、インターネットで公開される以前は、マイクロフィルム版を活用していましたが、全てを収蔵している図書館が少なく、必要な部分を閲覧するのに大変苦労した記憶があります。現在は国立公文書館デジタルライブラリーで自由に閲覧できるため、非常に作業が簡便化されました。
特に今までで役に立ったところは、官員の履歴です。明治初年の官員は概ね旧藩の士族であるため、明治維新後にどのような役職となったのか、その前歴はどうであったか、などの確認が可能となります。「#012Important study achievements_009 ”One local bureaucratic portrait in the Meiji period"」で紹介している、大阪府下で最も長く郡長職を務めた深瀬和直という人物については、もともとは土佐藩士(正確には土佐藩陪臣)であったので、その家がどのような家であったかについてを府県史料のうちの「高知県史料」から父親の重次郎直形の名前を探し出し、旧藩時代には土佐藩陪臣であったのが、明治初年に土佐藩の直臣となり、そのまま高知県の吏員になるという流れが確認出来ました。
また、深瀬和直自身についても府県史料から郡長職の前の様子が明らかに出来ています。「大阪府史料」からは、深瀬和直は最初、大阪府の本庁勤めでをしており、兵事課や衛生課に勤めていたことが判り、のちに郡役所の郡長として直接地域行政に関わるようになっていったという過程が明らかに出来ました。あるいは、深瀬和直が土佐藩時代の若いころににどのような仕事をしていたのかについても、「高知県史料」に目を通すことから、洋式軍隊の調練を受けて、生兵教導試補、つまり未訓練兵の指導を担当する教官見習いとなり、のちに兵学得業生という一種の特待生となっており、宇和島藩へ兵学教導のために出張しているということが判っています。
「高知県史料」、「大阪府史料」から、このような動きを史料上から確認出来ることで、のちに大阪府で兵事課に勤めるのも、もともと兵事畑の人間だったために、その経験を生かした仕事をしていたのではないかと推察できる訳です。これらは官員の履歴についての史料がしっかり残されていることにより明らかたに出来たといえます。
府県史料は、明治前期の各府県を網羅的に取り扱っている史料であるため、自治体史などの地域誌に関わる仕事をする際にはぜひ確認する必要のある史料といえるでしょう。
なかなか地味な史料ではありますが、このように人の履歴も判ることがありますので、ひょっとしたら先祖探しなどにも役立つかもしれません。ご興味のある方は一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。