#095March winds and April showers bring forth May flowers.(三月の風と四月の雨で五月の花が咲く)
昨年は自治体史の編纂で宗教史の部分を担当し、少ない紙数ながら関係個所を現地調査して、それなりに新しい知見を加えたものを執筆出来たのではないかと、我ながら思っております。また発刊されましたら、ここでも紹介出来ればと思っております。
そもそもは、大学時代は幕末・維新史について学びたくて大学院まで進みましたが、以前にもNoteで紹介している下記のURLの論文を作成した際に、東京まで史料閲覧に行くための旅費や史料の撮影費用などを含めると法外な経費が掛かったこともあり、これでは東京にある史料を使っての論文を書いていても気軽に東京の史料を閲覧できる関東の研究者に時間的にも費用的にも太刀打ち出来ないと思って、明治維新に関わる中央の政治史についての研究を諦めました。
その後、仕事で自治体史の調査、編集を行うことを生業としたこともあり、地域に所在する史料を数多く見る機会を得ることになり、関西の近世、近代の地域史を研究することになります。そのような仕事の関係などから様々な所蔵者との縁が出来、三〇代のころには個人的にも史料調査をさせてもらえるようになり、さる神社の史料調査を何年かかけてプライベートで行いました。この経験から、大きな神社はほぼ役場のような運営の仕組みになっていることを知り、また同じように大きな寺院も同様の仕組みで運営されているということを知ることになりました。
とはいえ、来るもの拒まずで仕事を引き受けて来てましたので、特段宗教史に興味があるわけでも、神社、仏閣の研究をしたいと思っていたわけではないのですが、数多くの史料を見ていくうちに、下手の横好きといいましょうか、幸いにして気になるテーマが史料から見つかり、そこを突破口に史料群そのものへの興味へと発展させ、それぞれの史料の面白みというものを感じるようになって、数年かけて史料調査を完了させることが出来ました。
このことが、結果として自治体史での宗教史担当としての執筆という新たな仕事に結びつくことになります。また、更に今回新たな神社の調査が舞い込んでくることになり、ちょうど一つ執筆の仕事を終えたところでしたので、お引き受けすることになりました。
あるいは、このように個人的な活動をすることによって、史料の所蔵者の信頼を勝ち得ることが出来、調査の機会や気軽に使用しても良いというの機会などにも恵まれることになります。先に紹介した神社からは、神社を人の集う場所にしたいということで、古文書講座を開催する機会をいただいたり、あるいは参加者の中にいた地方名望家層の子孫の方から家の史料調査をして欲しいという依頼を受けたりすることになります。
歴史学の研究はある種、映画「レイダース」的な、最初に墓暴きをして発見した者がもっともその研究成果を得るという面があります。そのため未発見、未調査の史料群に当たれる幸運を得ることが出来るのは、いささか遠回りしたとしても、新たなフロンティアを開拓する至福の時間が得ることが出来るといえるでしょう。
今回は非常に個人的な話になってしまいましたが、人間、何が肥やしになるかは判らない、という少々説教臭いお話になりました。これから新たな地域、新たな史料群に数年がかりで取り組むことになるので、いろいろと面白い事実が明らかになると思いますので、また機会があればご紹介していきたいと思います。