#089面白い展示ってどんなの?―博物館施設の展示を考えてみる(一)
今回は、昨年見た展示などを例に年次について考えてみたいと思います。
筆者は長年「面白い展示というのはどういうものなのか?」ということを気にしてきました。というのも、イギリスのロンドンにあるロンドン博物館での経験まで、面白い展示ということがあまり判らず、自分の興味のあるテーマ、史料が展示されているものが良い展示だと思い込んでいました。これは多くの研究者の中でも同様だと思われ、「〇〇が展示されてて面白い展示だった」ということを発言している研究者にこれまで何人も出会ってきた経験からも言えることだと思います。筆者はロンドン博物館で、学齢に満たない女の子を連れた20代くらいのイギリス人のお母さんが、展示キャプションを見ながら、自ら子どもに解説して館内を回っている様子を見て、展示の見方が変わりました。一つは日本の博物館ではこのような光景にはまず出くわさず、博物館施設は高齢者が利用する施設という印象があったこと。二つ目は、イギリス人の若いお母さんが子どものためにキャプションを読んでかみ砕いて説明してあげることが出来るほどにキャプションが判りやすいこと。これは中学生英語程度しか出来ない異邦人の筆者が読んで内容を理解出来たことからも判りやすいキャプションだったと言えるでしょう。三つ目は、面白い展示とは、新発見、新知見があるものだけでなく、より判りやすく、より理解しやすくかみ砕いて説明が出来ている展示も含まれること。これらの観点で筆者は「面白い展示」というのが成り立っているのではないかと思いました。今回はそのような視点で展示について見ていきたいと思います。
まず最初に紹介するのは京都市中京区烏丸通二条上ル東側にある「薫習館」です。こちらはお香の老舗・松栄堂の運営する展示施設で、お香について学び、体験できます。
ここで面白かったのはキャプションです。下の写真は、実際に麝香の香りを体験出来る仕組みになった展示です。写真中央のポールにキャプションが設置されていますが、見る角度を変えると…
上の写真と下の写真は同じ物を違う角度で見たものですが、日本語で解説を書かれているものが見える角度と、英語で解説が書かれているものが見える角度になっています。これはレンチキュラーシート(見る角度を変えると見える絵などが変わる紙)を使用しています。展示に対して複数の言語でキャプション表示する際には、キャプションだらけになるところを省スペース化することが出来るので、筆者にはこれまでこのような発想が無かったため、目からうろこでした。
次に紹介するのは、大阪府高槻市にある安満遺跡公園(高槻市八丁畷町)です。こちらは、史跡公園で、一角に展示施設があり、その「展示館」では発掘現場を再現したギャラリーや映像で学べるシアターなどがあります。
この施設で面白かったのは、「展示館」において、出土遺物のレプリカを触って、カメラを通して、その用途を学べるようになっているブースがあることです。このブースでは、自分が今持っているものが何かを、カメラを通して答えが知れるようになっているので、小さい子供にはなかなか面白い体験になります。また、安満遺跡公園は、遺跡そのものを使った公園であるため、園内を歩き進むとさまざまな遺構を楽しめ、その場で解説を読むことが出来ます。
こちらの施設は広い史跡公園でもあり、またいくつも飲食店が入っているので、子ども連れで遊びに行くのにもうってつけの施設です。
今回は展示の仕方が興味深かったものを紹介しましたが、次回は展示史料が良かったものを紹介出来ればと思います。