9月利上げの可能性は十分あり!?田村審議委員の岡山での講演メモ

日銀の金融政策を決めるメンバーのひとりである田村直樹審議委員は岡山県の経済界に向けて講演し、この中で次のような発言をしました。

なかなか踏み込んだ発言が多く、いわゆるタカ派の見立てが強まるのではないでしょうか。総裁選~総選挙、アメリカ大統領選挙で年末に向けて政治的不透明さが高まるのならば、9月に利上げしておく、というのも合理的な気がしています。

●(日本の)個人消費全体としては底堅く推移
●統計からうかがわれるほど、個人消費の実態は悪くない可能性もあるのではないかと感じている。
●先行きは実質ベースの賃金の改善が下支えとなり、個人消費は緩やかに増加していくと見込んでいる。
●(経済情勢は)「物価安定の目標」の実現に向けてオントラックで進んでおり、目標が実現する確度は、引き続き高まってきていると判断。
●物価の先行きに関し、私としては上振れリスクが膨らんできているのではないかと懸念している。
●人手不足が供給制約となり、一部の業種では供給不足・需要超過の状態にあるという印象。
●こうした状況が想定以上に物価を上振れさせる可能性もある。
●去年よりも高い賃金上昇が見込まれる中で、人件費の価格転嫁が想定以上に進む可能性がある。
●円安が進んだことで、一度は落ち着いていた輸入物価が再度上昇基調にあること。
●輸入物価の上昇を企業が製品価格に転嫁する際のパススルー率(コスト上昇分が製品価格にどの程度転嫁されるかの比率)が近年高まっている。
●将来万が一再び、量的な金融緩和を検討せざるを得ない状況となった際には、(中略)その効果とコストのバランスを慎重に検討する必要がある。
●日本銀行の物価見通しが実現していく場合、2026年度までの見通し期間の後半には、政策金利である短期金利は経済・物価に対して中立的な水準、すなわち名目の中立金利まで上昇していることが必要と考えている。
●中立金利は、概念的には経済・物価に対して中立的な実質金利の水準である自然利子率に、予想物価上昇率を加えたもの。
★この中立金利について、私は、最低でも1%程度だろうとみており、したがって2026年度までの見通し期間の後半には少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げておくことが、物価上振れリスクを抑え、物価安定の目標を持続的・安定的に達成する上で、必要だと考えている・
★2026年度までの見通し期間の後半の1%の水準を念頭に置きつつも、「物価安定の目標」の実現する確度の高まりに応じて、段階的に短期金利を引き上げつつ、経済・物価の反応を確認し、適切な短期金利の水準を探っていく必要がある。
★今年4月以降、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、「金融緩和度合いを調整していくことになる」という考え方は一貫している。
★私としては、金融市場の動向にも十分い配意しつつ、経済・物価の反応を確認しながら、適時かつ段階的に利上げしていく可能性があると考えている。
●過去と比較すれば短期金利の引き上げの影響に対する耐性は高くなってきている。
●老後に備えて預貯金の完本取り崩しには抵抗感を覚える家計も、安定した受け取り利息が増加すればマインドの改善につながる可能性が高い。
●堅調な企業収益が支払利息の増加の影響を軽減させることも期待。
●金利が上昇し、金利の持つハードルレート機能が発揮されるようになれば、(中略)付加価値の高いビジネスに経営資源を集中させていく必要に迫られ、結果として、ビジネスの新陳代謝が促され、生産性が上昇するということも期待。
●金利上昇の影響は、政府においても生じる。一般論として申し上げれば、財政運営に対する市場の信認をしっかりと確保することが重要。


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