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異動の時期に思い出す人
世は異動の季節だ
私の上司の支店長が異動した時を思い出す
50手前のバリバリ関西人のおっちゃんは遠く遠く、海の向こうに渡ることになった
ここ最近、彼は逃げるように定時に帰っていたがあれはこっそりECCに駅前留学していたんだということがわかった
彼の話す外国語はどこか関西弁らしい
関西弁の外国語ってどういうことやねんと思うが
アイデンティティが滲み出しているなんて素晴らしいし羨ましい限りだ
(私も関西出身だが今では話す相手につられて標準語になっているし、どこか抵抗したい自分もいてなんか混ざったよくわからない 発音を繰り出し、正直何弁かわからない。 そんなときは、冷静に自分を俯瞰するもうひとりの自分が「きっしょ」と 辛辣な言葉を浴びせてくる。 私はアイデンティティを喪失したことを自覚して途方に暮れる)(大袈裟)
そんな支店長と一緒に働いたのは、1年くらいだけれど、昔から知っていたし、同じ地元だからとよく声も掛けてもらっていた
だからやはり寂しさを感じた
彼はいい歳をして、ニヤニヤしながら大きな真っ黒のかりんとうを 丁寧に皆の机に置いていくような人だ
(下品で申し訳ないが、う○こに見えるやろぉと嬉しそうに話していた)
(私の机に置くとセクハラやと思われるからね、と言って遠慮してくれたが…もう遅い)
田原さんという人が、
巻爪になって大変だった時は
次の日から「巻だわら」と真顔で呼んでいた
私がノートPCの画面にバインダーの留め具を挟んでしまい 割ってしまった時は、ちゃんと説明したにもか関わらず、 私がノートPCをドアに挟んで割ったという、どういう状況かわからないことに脳内変換されていた
それで爆笑していた
関係が悪化している得意先を、なんとか本社の工場見学に接待することになったときは、出張で前日に前乗りしたのだが、 遅れてきた彼は久しぶりの出張が嬉しかったからと新幹線で ビール6本も空けてベロベロでやってきた
ただの呑気ハッピー野郎だと思った笑
コロナだから送別会もまともに開いてあげられなかった
せめてもの気持ちで皆で寄せ書きを作った
色紙は開けるタイプで、後ろのページには、全員の集合写真と見せかけて、全員が彼の顔に合成されている写真を貼り付けた
それを渡された時、周りは大爆笑していたけど、彼はぼそっと普通に皆のが良かったなぁとぼやいていた
(表紙には皆の顔写真を入れている)
プレゼントは大好きなお酒とカツラ
(彼の頭皮は…お世辞にも…その…良好とは言い難い状況で…
しかもかなり若い頃からその状態をキープされていたようで…)
彼は笑って、これで3個めです!と言っていた(←)
翌日、カツラを被って嬉しそうに晩酌する彼の写真が送られてきた
家族に大ウケし、お父さん株がほんの少し上昇したそうな
最後まで笑いをくれた支店長のことがとても愛おしいし、人間として素晴らしい魅力を持った人だから、 きっと言葉の通じない外国でも愛されるだろうなと思った
彼が今まで守ってきたこのチームで少しでも役に立てたら何か恩返しになるもんかね…とほんの少しだけ頑張ろうと思った
春