スマホアヘンモルモット

インターネットは自由を人々にもたらしたと思われている。

スマホを開くと、その人の指向性に合わせた娯楽やら政治思想がわらわらと目の前にあらわれる。大体、タダである。そして往々にして世の中では、タダほど高いものはない。見えないところでコストを支払っているのだ。

Xやらインスタグラムやら、tiktok。一瞬の情報の差で命を落とす可能性がある狩猟採集社会から人間の脳みそは変わらずに、人間は新しい情報に脳が喜びを感じる仕組みになっている為に、企業はそれをハックする.....できる限り長く張り付かせて広告収入を得るために。

せっせせっせとスマホをスクロールすると、脳はドーパミンを得る。やれトランプがあ~だとかハリスがあ~だとかスマホにポンと投稿すれば、あら不思議。まるで何かをしているような気になる。心地よい同じような人間の賛同も得られる。そして、見知らぬ誰かの懐にチャリンとお金が入る。大抵の人は何もそれには気にならない。そして、現実世界ではほとんど何も変化のないまま、時間だけが、ただただ貴重な時間だけが、溶けていく。私もコロナ時期1日中スマホの人狼ゲームをするという無意味な生活を一年やって、飽きて、ようやくそれに気づけたのである。

まるでスマホは現代のアヘンのようなものである。むしろアヘンの方がマシなのかもしれない。分かりやすく快楽の代償としてペナルティが身体にあらわれるから。スマホは違う。スマホはもっと狡猾に、私達の生活を支配下に収める。例えば、現代人がスマホをスクロールする時間、昔は人々は何をしていたのだろうか?

遠い私の記憶ではもっと本を読んでいたし、外に出歩いていたような気がする。脳は情報を欲しがるから、インスタグラムをひらく。そうするとキラキラしている友人や有名人が無限に出てくる。振り返ると、私はなんで今日ひたすら労働を1日中していたのだろう?あのパーティー行きたかったなぁ〜となる。脳は新しい情報を欲しがるから、スマホをスクロールする。しかし、他者のキラキラは自身の非キラキラをまざまざと見せつけられる。例えば、有名ミュージシャンの暮らしはキラキラしている部分しか切り取られてないから、常にキラキラしているように見えるが、そんなわけがない。普段の日常は1日中パソコンに張り付いて、曲を作っていたり、物販のデザインを考えたり、発注かけて、めんどくさいオーガナイザーと連絡を取ったりしているのが実態である。インスタグラムに流れるのは、その人の一番キラキラしている部分しか大凡流れない。だから、キラキラしている部分しか他者は知らない。ごく一部の身内のみが、有名人の日常の非キラキラを知っているのだ。

少し脱線をしたが、人々をインターネット中毒にさせて、広告を得ている人達は、子どもにはインターネットをさせたがらない。ビル・ゲイツが子供に通信機器の利用に制限を設けているのは有名な話である。つまり、インターネットで広告収入を得ている設計者は、それがどれだけ無意味で悪影響をおよぼし時間を奪い去るのかを知っているからだ。

誰も彼も同じ事しか言っていないので、飽きてしまったから私は興味が薄れたので今あまり見ていないが、最近まで自己啓発にハマっていた時があった。自己啓発で、いの一番で言われている事は、スマホを手放せ、だ。スマホを駆使して、成り上がろうとする自己啓発が好きそうな人々が、まず成り上がるのに一番必要な事はスマホを手放す事だと言い放っている。

世の中において、富める人も貧しい人も等しく所有しているのが時間だ。時間こそが、唯一平等に皆に分け与えられている。そして、その時間を何に使うのかが、人々の人生を大いに左右する。例えば、1日中スマホを眺め、ああだこうだ言って、たまにギターを弾く人間よりも。スマホをイジらずに、1日中ギターを弾いている人間の方がどう考えても上手くなるのは後者である。それを365日続けていると、結果は自ずと見えてくる。どちらも、プロミュージシャンになりたいと強く思っていたとしても、なれるのは後者である。

欧米のITなどを生業としているテック企業に務める人間が、子どもに通信機器の制限をかけるのは、スマホが如何にして無為に時間を奪うのかを知っているからだ。何故なら、自分達が如何にしてスマホで時間を溶かすように仕組んでいるのを知っているからだ。その時間を、勉強に向けたり、友達と遊んだりしている方が有意義であるのだ。インスタグラムでキラキラしている人を眺めるのは、新しい情報を欲しがる脳の喜びを得るのと同時に、キラキラしたい欲求不満を抱えることに他ならない。

現代のアヘンはとても優しい。企業努力の結晶のアルゴリズムで、不愉快な物は目に入らないようになっているし、あなたの好きな主義主張と同じ人に囲まれるようにできている。憧れの芸能人の情報はすぐゲットできる。猫動画で無限に、癒されるのも思いのまま。しかも全部無料である。なんて便利なんだろうか!?

そう無料!代償として、あなたの今後の人生のキラキラを企業の広告収入として差し出すという以外は。

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