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Appraisal, coping, health status, and psychological symptoms


目的

ストレス・コーピングの初期モデル学習

Abstract

本研究では、150名の成人地域住民を対象に、性格特性 (習熟度Masteryと対人信頼)、一時評価 (ストレス状況での危機)、二次評価 (コーピングの選択肢)、問題及び感情に焦点を当てた対処の8つの形態、身体的健康及び心理学的な症状との関係を調査した。
評価とコーピングプロセスが身体的健康状態と心理学的症状に影響を及ぼすためには、ストレスの多い状況全般にわたり中程度の安定性が保たれる必要がある。これらのプロセスは、調査対象者が日常的に経験する5つの異なるストレス状況で評価された。
二次評価などの特定のプロセスは変動が大きかったが、他のプロセス (感情焦点化コーピング) は中程度に安定していた。
習熟度masteryと対人信頼、一次評価とコーピング変数を身体的健康状態と心理学的症状の回帰分析に投入した結果、身体的健康状態の変動を説明できなかったが、心理学的症状の変動を説明した。

(Lazarus, Folkmanの研究だが、ストレスモデルの検証にもかかわらず身体的健康を説明できないと記載がある
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Introduction

  • ストレスの多い出来事と身体的健康及び心理学的症状など適応指標の関係は、現在のところ、コーピングプロセスにより媒介されると考えられている

  • おそらく対処プロセスは様々なストレスの多い状況で少なくとも中程度に安定しているために長期的に適応に影響を及ぼすと考えられている

  • まず最初に性格特性が対処プロセスに影響するとして調査がなされたが、すっくなくとも宿命論や柔軟性のなさ (Wheaton, 1983)、頑固さ (Kobasa, 1979) はコーピングプロセスに影響しなかった (Cohen & Lazarus, 1973; Fleishman, 1984) 

  • 第二のアプローチは、個人が1つ以上のストレスの多い出来事に対処する方法を、一貫性があると仮定して評価するもので、Billings & Moos (1984) はある特定の対処方略がうつ病に関連していることを明らかにした

  • 第三のアプローチは、自己コントロールできないストレスフルな状況に対処する方法を調査するもので、統制できない経験の反復により無力感が高まり対処意欲が減少して抑うつを経験するというものであり、心理的脅威の性質により状況は特徴づけられる。例えば、評価への不安 (Krohne & Laux, 1982)及び孤独 (Schultz & Moore, 1984) によって、おそらくは一度の孤立状況ではなく反復する経験によって長期的な健康と幸福度に影響が及んでいると考えられている

  • 第四のアプローチは、Pearlin & Schooler (1978) のように、性格特性とコーピングが心理学的な幸福に及ぼす相対的な影響を考慮することであり、結婚・育児・家計・仕事の4つの役割領域における苦痛の緩和に対し、性格特性 (習熟mastery、自尊心、自己否定) 及び慢性的な役割ストレスへの対処法を評価した。その結果、ストレスの多い状況により、具体的には職場などコントロール機会が少ない場面では性格特性が影響し、結婚などの努力による違いが反映される領域ではコーピングの影響が強かった。

  • 本研究では、上記の4つのアプローチを組み合わせ、性格・コーピング・認知的評価が適応状態に寄与する程度を調べる

Stress and Coping Theory

  • Lazarus & Folkman (1984b) は、心理学的なストレスと対処の認知理論の中で、人と環境が同的で相互に作用する双方向の関係にあり、ストレスの多い環境と人の短期的及び長期的な適応結果野重要な媒介要因が、認知的評価とコーピングであるとされる

  • 認知的評価 cognitive appraisal とは、特定の環境刺激が自分のウェルビーイングに関係するか、関係する場合はどのように関係するかを評価するプロセスとされる

  • 認知的評価は、一次的評価 primary appraisal と二次的評価 secondary appraisalに分類される

  • 一次的評価は、自分が危険に遭遇しているか評価する。例えば、自尊心に害や利益をもたらすか、パートナーの健康やウェルビーイングが危険にさらされるかなどである。自分自身と世界についての価値観、コミットメント、目標、信念などの性格特性がストレスフルな特定の状況に置いて人が危険性の有無を判断するのに寄与する

  • 二次的評価は、害を克服・防止するために取るべき行動を評価する。例えば、状況を変える、状況を受け入れる、多くの情報を求める、衝動的行動を控えるなどの選択肢が評価される。

  • コーピングとは、個人の資源に負担をかけたりそれを超えると判断される環境と個人の相互作用において、内部及び外部の要求をマネージメント (例えば、軽減、最小化、習得あるいは許容) するための個人の認知的・行動的な努力を指す。コーピングには、問題焦点型コーピングと、情動焦点型コーピングがある (Folkman & Lazarus, 1980, 1985)

  • これまでの研究成果から、例えば問題に焦点を当てた対処には、状況を変えるための対人努力、問題解決のための努力が含まれている

  • 一方の感情に焦点をあてた対処には、距離を置くこと、自己制御、社会的援助の希求、逃避・回避、責任の需要、肯定的再評価が含まれている (Folkman et al., 1986) 

(Folkman et al., 1986) 
  • 認知的評価と対処は相互作用する。すなわち、環境や個人だけではなく、特定の状況における双方の相互作用・統合を指す

  • 脅威の評価は、特定の心理学的な特性を持つ、特定の個人が、特定の環境条件の関数による

  • コーピングは、特定の個人のウェルビーイング関する特定の環境からの要求をマネージメントするための思考と行動である

  • Folkman et al. (1986) は、ある一つのストレスフルな場面における認知的評価、コーピング、結果の関連を調べた。また、同一被験者が種々のストレスフルな場面に遭遇した際の認知的評価、コーピング対処方略のプロセスを比較した。その結果、コーピングは一時評価と二次評価の組み合わせで異なることが分かった。例えば、自尊心が危機に瀕していると感じた際は、Confrontation (対決)、Self-controlling (自制)、 Escape-Avoidance (逃避・回避)、Accepting responsibility (責任の受容) を行った。一方で、仕事の目標が危機に瀕している時は、Planful problem-solving (計画的な問題解決) を用いた。

  • Planful problem-solvingは、良い方向に変えられると評価した場面で使用され、変化に順応できない場面ではDistancing (距離をおく) ことが使用された

  • その結果、コーピングはストレスフルな場面への結果と関連したが、認知的評価はストレスフルな場面への結果と関連しなかった。そして、ConfrontationとDistancingは不満足に感じる結果を促進し、Planful problem-solving及びPositive cognitive reappraisalは満足に感じる結果を促進した

本研究

上記の結果を裏付けるには、一次的評価・二次的評価及び対処プロセスが種々のストレスフルな場面においてある程度一貫して安定する必要があるため、安定性の評価及び性格特性をコントロールした場合にコーピングプロセスが適応に及ぼす影響を評価する

方法

対象者

  • カリフォルニア州トラコスタ郡で、少なくとも1人の子供がいる85組の夫婦による

  • 対象者は、35-45歳の女性のみ、夫は26-54歳であったが夫の年齢は包含・除外基準に含めない

  • 白人

  • 主としてプロテスタント・カトリック

  • 少なくとも8年生の教育

  • 家族収入が最低水準以上

  • 寝たきりではない

  • 調査依頼を送付した手紙を送ったもののうち、参加に同意したカップルは46%、女性の平均年齢39.6歳、夫の平均年齢41.4歳

  • 平均教育年数15.5年、世帯収入中央値は45,000ドル、男性の84%が有給雇用 (調査拒否者とは平均教育年数14.3年だけ異なる)

  • 脱落は10組で11.8%

手続き

  • 6か月間、毎月一回自宅でインタビューを受ける

  • 夫婦は可能なら同じ時間に、別々にインタビューを受けた

測定法

  • 2-6回目のインタビューで対象者が前週に経験した最もストレスフルだった出来事を再現

  • ストレスインタビュー (研究用のプロトコル) を使用し、当該場面での認知的評価とマネージメントを試みた方法を尋ねた

  • 性格特性には、習熟Mastery、対人信頼、自尊心、価値観とコミットメント、宗教的信念などを含めた

①習熟 Mastery:
自分の人生の可能性が運命によるのではなく自分のコントロール下にあると感じる程度を測定する尺度。4件法のリッカート尺度 (Cronbach alpha = .75)。

Mastery Scale (Pearlin & Schooler, 1978)

(1) I have little control over the things that happen to me.
(2) There is really no way I can solve some of the problems I have.
(3) There is little I can do to change many of the important things in my life.
(4) I often feel helpless in dealing with the problems of life.
(5) Sometimes I feel that I'm being pushed around in my life.
(6) What happens to me in the future mostly depends on me.
(7) I can do just about anything I really set my mind to do.

②対人関係の信頼 (Interpersonal Trust)
対人関係を測定する尺度。5件法のリッカートスケール。同意するかどうかを回答 (Cronbach alpha = .70)。

Interpersonal trust scale (Rotter, 1980)

(1) In dealing with strangers one is better off to be cautious until they have provided evidence that they are trustworthy.
(2) Most people can be continued on to do what they say they will do.
(3) The judiciary is a place where we can all get unbiased treatment.
(4) It is safe to believe that in spite of what people say, most people are primarily interested in their own welfare.
(5) Most people would be horrified if they knew how much news that the public hears and sees is distorted.
(6) In these competitive times one has to be alert or someone is likely to take advantage of you.
(7) Most salesmen are honest in describing their products.
(8) Most repairmen will not overcharge even if they think you are ignorant of their specialty.
(9) Most elected public officials are really sincere in their campaign promises.

③その他の尺度
自己効力感、価値とコミットメント、宗教的信念 (割愛)

④一次的評価 (Primary appraisal)

  • 一次的評価 (危険の有無)は、面接2-6で実施されたストレス質問票の一部で評価 (Folkman et al., 1986) に関する13項目のうち、自尊心 (6項目、Cronbach alpha = .78) とウェルビーイングへの懸念 (3項、Cronbach alpha = .76)を使用

  • 自尊心:大切な人の愛情を失う、自尊心を失う、無能に見えるなど

  • 愛する人のウェルビーイングへの懸念:愛する人の健康・安全・身体的ウェルビーイングへの危害、愛する人が世の中でうまくやってゆけなくなる、愛する人の精神的ウェルビーイングへの危害

  • その他の会項目:仕事で重要な目標を達成できない、自分の健康・安全・身体的幸福への危害、経済資源への負担、他の人の尊敬の念を失う、については個別アイテムとした

⑤二次的評価 (Secondary Appraisal)

以下の4項目が該当する程度を5段階評定
二次的評価:変えられるあるいは対処できるもの、受け入れざるを得ないもの、行動を起こす前にもっと知る必要があるもの、やりたいことを我慢しなければならないもの

⑥コーピング (Coping)

  • 66項目の改訂版コーピングチェックリストにより評価

  • ストレスフルな場面で内部・外部の要求に対処するために使用する幅広い対処・行動戦略が含まれる (Folkman et al., 1986)

  • (a) Confrontive coping, (b) Distancing, (c) Self-control, (d) Seeking social support, (e) Accepting responsibility, (f) Escape-avoidance, (g) Planful problem solving, (h) Positive reappraisal

⑦適応状態 (adaptational status)

  • 心理学的症状は、Hopkins Symptom Checklist (HSCL; Derogatis et al., 1970) により評価

  • 身体的健康状態は、面接を通じて、障害、慢性的な疾患、症状有、健康の4段階で評価されたその他、CES-D、Bradburn Morale Scaleを使用した

結果

コーピングプロセスの安定性

(そもそも一次的評価がアラートのイエス・ノーではないことがイメージと異なっている気がする)

2変量相関

多変量回帰

  • 4カテゴリの独立変数 (性格、一次的評価、二次的評価、コーピング) を身体的健康に階層的重回帰させた結果、分散の16%を説明したが、調整済みR2は1%未満であった

  • 4カテゴリの独立変数 (性格、一時的評価、二次的評価、コーピング) を心理学的症状に階層的に重回帰させた結果、変数の投入順によらず二次的評価は心理学的症状に影響を及ぼさなかったため除外した。3カテゴリを投入した結果、心理学的症状の43%を説明し、adjusted R2も.36であった。特に、パーソナリティは18%、一次的評価は17%を説明した。一時的評価とコーピングの投入順を変えた場合にコーピングは20%を説明した。ストレスフルな状況に置かれた時の一次的評価とコーピングに強い関連がみられる先行研究を裏付ける (Fokman et al., 1986)

  • mastery、対人的信頼、愛する人の幸福への関心は心理症状を抑制し、対決、経済的安定への関心、自分自身の身体的幸福への関心は症状を促進した

Discussion

コーピング過程の安定性

  • 対立コーピング、援助希求、計画的な問題解決は自己相関係数が低く、問題焦点型のコーピングはストレス場面に応じて使用にばらつきがあるものと思われる

  • 一方で、positive reappraisalは自己相関係数が.47であり、ある程度一貫して使用が認められると思われる

  • 一次的評価、二次的評価は自己相関係数が低く、状況依存的であると考えられる

  • しかし、セルフエスティームに関する一次評価は自己相関が高いため、外的刺激に依存しない可能性がある

(そうじて
(セルフエスティームにかかる一次評価は安定していること
(二次評価は安定せず外的刺激に依存しうること
(問題解決型コーピングは外的刺激に依存しうるが、肯定的再評価は依存しにくいこと
(コーピングと健康状態の相関は乏しいが、心理学的な症状については予測しうること
(までが確定的にいえる
(学術的に面白いが大衆向けには使えない

Reference

  1. Billings, A. G., & Moos, R. H. (1984). Coping, stress, and social resources among adults with unipolar depression. Journal of personality and social psychology, 46(4), 877.

  2. Cohen, F., & Lazarus, R. S. (1973). Active coping processes, coping dispositions, and recovery from surgery. Psychosomatic medicine, 35(5), 375-389.

  3. Fleishman, J. A. (1984). Personality characteristics and coping patterns. Journal of health and social behavior, 229-244.

  4. Folkman, S., & Lazarus, R. S. (1980). An analysis of coping in a middle-aged community sample. Journal of health and social behavior, 219-239.

  5. Folkman, S., & Lazarus, R. S. (1985). If it changes it must be a process: study of emotion and coping during three stages of a college examination. Journal of personality and social psychology, 48(1), 150.

  6. Folkman, S., Lazarus, R. S., Dunkel-Schetter, C., DeLongis, A., & Gruen, R. J. (1986). Dynamics of a stressful encounter: cognitive appraisal, coping, and encounter outcomes. Journal of personality and social psychology, 50(5), 992.

  7. Folkman, S., Lazarus, R. S., Gruen, R. J., & DeLongis, A. (1986). Appraisal, coping, health status, and psychological symptoms. Journal of personality and social psychology, 50(3), 571.

  8. Krohne, H. W., & Laux, L. (1982). Achievement, stress, and anxiety. Washington, DC: Hemisphere.

  9. Lazarus, R. S., & Folkman, S. (1984). Stress, appraisal, and coping. Springer publishing company.

  10. Schultz Jr, N. R., & Moore, D. (1984). Loneliness: Correlates, attributions, and coping among older adults. Personality and Social Psychology Bulletin, 10(1), 67-77.





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