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休職二十八日目

二月二日。
あっという間に一ヶ月が経ってしまった。好転しているかというとそうでもなくむしろ悪化しているような気がする。
先週の水曜に大阪の実家から東京に帰ってきて明日で一週間。東京の友達に会ったりゆるゆると復職に向けて気持ちを整えたりの一週間のはずだったが、先日ついに駅前でパニック発作を起こしてしまった。

どんどん気持ちが沈んでいく、呼吸が浅くなる。脳みその天辺から冷たい膜が降りてきてそれが全身を包んでいくような感覚。視界が突然ぐにゃりと歪む。
周りの人たちの目線、煌々と輝くパチンコ屋の看板。駅に響くアナウンス。車が行き来する音や、信号機から流れるかごめかごめのメロディー。異常にそれらに敏感になる。
このままでは自分は死んでしまうのではないか。いや、死ぬはずはないのだが、付き合いで二杯ほどアルコールを摂取していたせいで薬はのめないし、駆けこめるような場所も思いつかない。この時間では病院も閉まっている。目の前に交番があったが、こんな状態の人間が急に飛び込んできたところでただ困惑させてしまうだけだろうし。

幸いその時は人といたので一緒に歩きながら気持ちを少しずつ落ち着けることに専念した。とにかく目につくものすべてについての意味のない感想をべらべらと勝手に話し、それに相槌を打ってもらった。
一時間ほど歩き、ようやくタクシーに乗れそうな気がしてきたので乗車。するもやっぱり落ち着かない。足先の感覚はなく、とめどなく汗が溢れ出す。全身にまとわりつく浮遊感と恐怖。すぐにでも車を止めてもらって外に飛び出したかったが、そんなことをしていてはいつまで経っても家には帰れない。
運転手も僕の異変に気付いたのか、ここが環七ですねーもう少しですよーと声をかけてくれたりしていた。
そんなこともあって、家に近づいているという実感が湧いたからなのか、徐々に気持ちが落ち着いてきた。やっと家に帰れる。そしたらベッドに寝転んであとは何も考えなくていい。アマゾンプライムで適当なアニメを流そう。先ほどまですごい速さだった脈拍も少しずつ安定してきた。

やっと帰宅することはできたが未だに恐怖感は消えず、胸が苦しい状態は続く。薬がのめたら違うのだろうか、そればかり考えてしまうが、アルコールとの相乗効果でもっと良くないことになったらと思うと試す気にはならなかった。
今夜も眠れそうにないけど、明日もやることはない。何も気にしなくていい。横になって朝日が昇るのを待とう。朝日が昇ればセロトニンも生成されるし。

というメモを昨日の朝方スマホに残していた。
この時はマジでどうなってしまうんだと思ったけど、二日経って今は安定している。一人で外に出る気にはならないが、そういうのもどうなんでしょうね。
結局、復職は病院で復職の診断書をもらわないとできないようなのでもう少し先になりそうだ。
相変わらず毎日親からわけのわからないLINEが飛んでくる。東京が全てをダメにした。まとめるとそういうことらしい。いやいや…勘弁してくれ。
アルバイトでも始めたいと思うこの頃です。

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