#創作日誌2
4月24日
律儀に毎日書くわけでもない。のつもりだったけれど。なんとなく書こうと思う。この日のことはあんまり覚えていない。なぜなら今は5月9日だから。スケジュール帳ひっぱりだしてこの日は何してたっけなあと思案しているのだが白紙なのでわからない。「あすけん」という食事管理アプリでその日の食事を記録しているのだがこの日は朝から晩までまるごとオニオングラタンスープしか食べてないようだ。酒は飲んでない。映画でも観ていたのだろう。
4月25日
午前中、wordファイルをまっさらにして1000字近く書く。割と集中して書いていたので観劇の予定があることをすっかり忘れていた。12時頃妻に「間に合わなくなるけど大丈夫?」と言われて慌てて支度をする。下北沢本多劇場でナイロン100℃「百年の秘密」。初演は2012年だったそうだけど今回の再演が初見。ケラさんは「その夜と友達」を岸田賞の選考会(選考会には参加してないらしいけど書面で)で推してくれていたらしい。ということを人づてに聞いた。この「百年の秘密」を観劇していて何故ケラさんが「その夜」を推そうとしてくれていたのかがわかったような気がした。「百年の秘密」は巧みな時間芸術だった。俳優たちのスキルもとても高い。「その夜」も劇的時間についてそこに注力した作品だった。俳優のスキルも高かったわけだし(身内褒めってわけじゃなく、冷静に考えてみた結果)。
観劇後妻と感想などを語り合っていて「そういえば選評出てたね」と言われて最初なんのことかわからなかった。岸田賞の選評のことだった。電車の中でざっと読む。敢えて書いてくれたり、敢えて書かないでいてくれたり、そんな敢えてもなくただ単にスルーしてくれたり、率直にありがたいと思った。でもたぶん僕はこれを読み返すことはしばらくないだろう。岡田さんが書いてくれたことになぞらえて言えば、僕は僕の書く「自由」を死守する。そのためには時に情報の遮断が必要なのだと確信した。帰宅して晩御飯を食べて読書。執筆。寝る。
4月26日
朝執筆。今書いていることがもしかして「レディプレイヤー1」の放物線上にあったらどうしようと急遽怖くなって昼間の上映を観に行く。杞憂だった。映画はスピルバーグの王道のテンプレートを用いながら遊んだりあえて外したり。でも最終的にはやっぱりザ・スピルバーグだな、という印象を持った。帰宅して執筆。ここへきて思うのが、4月20日の「2時間で4000字近く書いた」という記載、あれは本当だろうか、ということ。何かが定まっていない時の執筆の速度は確かに速いけれども、それにしても2時間で4000字は無心に書きなぐったのでなければ達成できないのではと今となっては思った。本当はもっと時間がかかっていたのじゃないかな。せめて4時間ぐらい。わからないけど。
4月27日
一心不乱に書きまくった。こんなにも没頭したのは久しぶりだった。寝かそう。
4月28日
この日もメモが残っていないので何をしたかわからない。スケジュール帳には観劇の予定が入っていたのでそのことは思い出せる。三鷹星のホールでCHAiroiPLIN+三鷹市芸術文化センターpresents 太宰治作品をモチーフにした演劇公演 第14回 『ERROR〜踊る小説4〜』という作品だった。率直に面白かった。メンバーの埜本幸良に終演後感想を伝える。演出のスズキさんに初対面のご挨拶。僕が気になってたのはラストなんだけど、時間もなかったし初対面だったしそのことは伝えられなかった。つまりラスト手前の人体模型のところで潔く終わってしまってもいいのではないかと思っていたからだ。あれは素晴らしかった。遊び心と発想と知恵と原作の入念な読み込みと。敬服するところがたくさんあった。なんかこういうこと書くと偉そうにって思われそうでいやだな。古今東西すべての入念つくられた芸術に僕は頭上がりません。
4月29日
今作のためのオーディション最終選考。朝から夕方くらいまで。
4月30日
昨日と同じでこの日も最終選考。でもこれで終わり。結局一ヶ月近くかかってしまったがとても有意義なオーディションだった。素敵な人がいっぱいいる。日本の演劇界明るい可能性ある。皮肉でもなんでもなく、本心からそのように思った。今回残念ながら機会がなかった方々ともまたどこかでお会いできたら嬉しい限り。オーディションは自分も受けてたこともあったから気持ちは察することができるけど、やっぱりタイミングでしかないと思います。侮らず自惚れず帯を締めてお互い演劇修行していきましょう。
5月1日
スケジュール帳白紙につき思い出せない。どうせ映画観たにきまってる。
5月2日
「あすけん」によると朝納豆ご飯を食べしじみスープ。昼はキーマカレーになんとビールを飲んでいた!
夜はカニクリームコロッケとビールとハイボールを飲んでいた! つまり昼から飲んでいたこれすなわちOFFですねこの日は。それでも映画は観ていたはず。僕が酒を飲んで映画を観るときはたいてい一度もうすでに観た映画か、多少雑に観てもクリエイターに怒られなそうなやつですね。どれとは言えませんが。
5月3日
義父の少し早い還暦祝いを我が家で。昼から酒飲んだりKFC食べたり寝たり。さてゴールデンウィークだ。
5月4日
実家山梨へ帰省。かいじはまったく混んでなかった。帰りは混むだろうな。電車内で読書。帰宅して父と酒飲む。自室で映画観る。
5月5日
今日は父の誕生日でかつ姪っ子の誕生日。そういえばこの日は昨年範宙遊泳を脱退してしまった大橋一輝の誕生日でもあった。大橋おめでとう。元気してるか?
5月6日
朝から家族で近所の公園へ。この公園には古墳があるのだが高台に立つまでもなく甲府盆地を一望できて壮観な場所なのだ。学生時代よく原付で急な坂スタジオよりもっと急勾配のあの坂を最大時速10キロくらいしか頑張っても出せないあの坂を、よく登って古墳に寝そべったもんだ。でもこれって墓だよね?なんてことを思いながらも。親族の墓参りをして上京。上京と書いたけれども、山梨に帰るのが帰郷なのか、東京に帰るのが帰郷なのか、もうわからなくなってきている。
5月7日
執筆と資料検索と寝ることに費やした日だった。
5月8日
朝から資料検索。のちに執筆。進んだ。ところで僕は戯曲を書くたびその内容に合ったフォーマットに変更する。たとえばダイアローグが多い場合は縦書きで書いたり、モノローグが多い場合は横書きで書いたり、なんの気なくメモ帳に手書きで書いてみたり。フォントを変えたり。役名をすべて1、2、3などの簡潔な番号で表記したり。その理由についてはいずれ詳しく書くとして、これだけ言えるのは、フォーマットが戯曲の内容を要請し、内容がフォーマットを要請するということなのだ。こういったことに関心がない作家を僕は尊敬する。つまり、フォーマットなんて関係ないのさ。というようなタイプの作家を。